おいちい♪でもぽろり。
エイルさんお怒りの後、イフさんたちはいそいそと席について朝ごはんを食べてるんだけど、私はエイルさんのお膝の上でおいちいごはん中。
猫の口と人間の口は大分違うみたいで、上手に食べられないことが判明しちゃって、エイルさんがかいがいしくお世話をしてくれている。
「はい。ユキちゃん。あーん。」
「あーぅ。」
お茶用の小さいティースプーンでエイルさんはいろんな食べ物を私の口に運んでくれていた。
もきゅもきゅ・・・ぽろり。
零れ落ちたごはんは問答無用でエイルさんのお膝の上にこぼれていくけど、エイルさんは気にした様子はなく、その度に指先で拾い上げて空いたお皿にぽいっと置いている。
なんだかごめんなさい・・・。
申し訳なさそうにもじもじしていたら、ジンさんが右前の席で『やばい~っっかわいいっ』とテーブルをガンガン叩いてて、アクラムさんに『落ち着け』と言われてた。
エイルさんはいろんな物をひと口ずつ私の小さな口に合わせて入れてくれてて、その中にはひとつも同じものはなかったんだ。
ひと口食べさせてくれるごとに、私の顔を見て好き嫌いを確認してるみたい。
時々すごぉくおいちいのがあったりすると、ほにゃりと崩れる私の顔を見て、にこにことはちみつ色の瞳で蕩けるような笑顔を見せてくれてた。
そんなこんなで・・・。
くふん・・・もうおなかぽんぽこりん。
「ごちしょおしゃま、なにょ。」
「もうごちそうさまですか?動物の姿の時と同じくらいしか食べてないと思うんですけど・・・。本当に?もういっぱいですか?」
エイルさんはあーんが気に入ったみたいで、なんだか残念そうに眉を下げてるけど、もうはいらないよ。
ごちそうさまして間もなく、カチャリとお部屋の扉が開いたと思ったら、入ってきた人を確認してびっくりした。
思わずお膝だっこしてくれていたエイルさんのシャツをきゅっと握ってしまった。
イフさんたちも気づいたみたいだけど、ぽかんという顔でその人を見つめてた。
その顔、初めて見たよ・・・?
エイルさんは私がびくりとしたのが分かったみたいで、ぽんぽんと私の背中を優しく撫でてくれた後、入ってきた人物に声をかけた。
「リュウキ様?どうしたのですか?何か緊急の用ですか?」
エイルさんが声をかけた相手はリュウキさんです。
でもリュウキさんは扉に手をかけたまま、私の方をみてフリーズしてる。
ぜったいこっち見てるよねっ?!
私とリュウキさんの視線がかちりと合った瞬間、リュウキさんはハッとした様子で口を開いたんだけど、その言葉に今度は私がフリーズすることになった。
「・・・おはよう。し・・・いや、ユキの迎えに出向いたんやけど、まだ食事中やったやろうか?」
・・・なんで京言葉なにょおおおおおおっっっっ!??
リュウキさんはぜったいぜったいイフさんたちとおんなじ言葉づかいだって思ってたのに、なんだか元の世界の、京都の言葉に似てたっ。
どうして京都を知ってるかって。
1番最初のご主人様が小さな私を拾ってくれたのは京都だったから。
だけどご主人様は江戸というところから来たって言ってて、イフさんやリーフさんたちみたいな綺麗な言葉を話してた。
その時住んでたお屋敷の周りの人たちがその京言葉を使ってたのはしっかり覚えてるんだ。
あんぐりと口を開けてリュウキさんを見ていた私の耳元で、エイルさんは私のそんなまぬけな顔を見て、長い指をぷにゅっと私の唇に当てた。
「可愛いお口が開いてますよ?まあ、リュウキ様の言葉遣いと雰囲気のギャップは最初はびっくりしちゃうよね。」
苦笑いしたエイルさんの隣りで、イフさんは椅子から立ち上がってリュウキさんに声をかけた。
「リュウキ殿。ユキを迎えに・・・とは、どういうことだ?」
「リーフから聞いてはらへんの?今朝早くにリーフが王と俺の元へ報告にきたんやけど。」
イフさんは眉間に皺を一本増やして、リーフさんと会った時のことを思い出そうとしてたみたいだけど、確かにリーフさん、イフさんにはなぁんにも言ってなかったよね。
「ユキの身の回りの物をユキをつれて調達に行って、無事連れ帰るぅいうんが王から俺への命や。」
「何・・・?そんなことリーフは一言も・・・。」
イフさんは私へと視線を向けたと思ったら、エイルさんの膝だっこされていたところから抱き上げられた。
そして、なんだか怖い顔で聞かれたの。
「ユキ。リュウキ殿が言っていることは本当か?」
「にゅ?りぃふ、いってたにょ。おきゃいもにょ、いきゅって。りゅう、き、しゃま。ちゅれてってくえるって、いってたにょ。」
頑張ってお話したけど、伝わったかな?
イフさんの顔とリュウキさんの顔を交互に見ると、イフさんはなんとか聞き取れた私の言葉に少し表情を曇らせていて、リュウキさんは私の声をひとつも聞き漏らさないような雰囲気で、その真っ黒な瞳の奥は優しげに、不安げに、ゆらゆらと揺れていた。
イフさん、ごめんなさい。
イフさんの曇った表情を見て、リュウキさんとお出かけするということが、とっても悪いことしている気分になっちゃう。
リュウキさんも、どうして?
どうしてそんなに泣きそうなお顔で笑うの?




