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れいせいにしてくれっ。




【イフ視点】






俺は早くユキを楽にしてやりたくてリーフから渡された薬湯をなるべく優しくユキの小さな口に入れてやったつもりだった。


・・・が、ユキは咳き込みながら飛び起きた。




更にユキは涙をポロポロと流しながら、俺の持っていた薬湯の入ったグラスをその小さな手で押しのけたのだ。





アルフ・・・。


とんでもない物を作ってくれたものだ。覚えていろ。




リーフ・・・。


グラスを俺に押し付けたお前も同罪だ。





ユキに拒否される言葉を言われた上、更にいやだと押しのけられ、否、拒否されたのは俺ではなく薬湯の入ったグラスなのだが・・・。




悶々と考え込んでいた俺に気づかず、ユキは俺の手に重ねていた小さな手を勢いよく離すと、自身の手のひらを見つめて大きな瞳を更に見開いていた。

そうかと思うと突然ソファーの上から転がり落ちそうになっている。




思わず抱きとめたのだがその俺の腕さえ拒んだユキはおぼつかない足取りで歩いているのか走っているのか分からない速度で俺たちから距離を置いた。



否、置くはずだった・・・のか?



ユキはそのまま前のめりに倒れ可愛らしい鳴き声・・・今は違うか、泣き声をあげた。




リーフやジンが心配して駆け寄ろうとしていたが、怖いのか部屋の隅まで後ずさりすると、そのままカーテンにくるまってしまう。





・・・・・ふぁさふぁさ。





・・・・・・・・ゆらゆら。





「・・・・・・・・・くっっ。」





隠れきれていないユキのふわふわとしたしっぽがとんでもない可愛い動きをしていた。


思わず悶えそうになるのを耐えたが、もう少し見ていたいと思っていた。





だがまたもやアルフのやつがいらないことを言ったせいで、ユキは慌てて出ていたしっぽもカーテンの中に隠してしまう。



どうするべきか・・・。



そう考え込んでいたらジンにユキが不安がっているだろうと言われてしまった。



ハッとして言葉を捜したが、気の利いたことは言えなかったか・・・。





自分の言葉足らずな部分を恨めしいと思う日がこようとは思いもしなかった。


そう頭の中で自分に舌打ちしながらも、不安そうにカーテンの隙間から俺を窺がっていたユキを早く安心させてやりたいと思い、ユキに近づくと抱き上げる。




窓際は寒かったのか震えて耳もしっぽも垂れてしまっているユキは俺の目を真っ直ぐ見つめているが、どうしたらいいのだ・・・。



俺の服を握っているユキの手がまだ熱いことに気づいた俺は、ソファーに足を向けるとさっきまでユキを包んでいたタオルケットを引っつかんでユキをぐるぐる巻きにした。





「みゃ・・・。」


「まだ熱があるんだ。暑くても被ってろ。」





息苦しいのか小刻みに息を小さく吐き出すユキを見ていると心が痛い。



アルフが持っている薬湯の入ったグラスに目を向けるが・・・まだあんなに残っているのか・・・。




薬湯を嫌がっているのは分かっている。


だが、どうしても俺自身を拒まれているような気になってしまうのだ。


しかし、先程ユキの口に入れた程度の量で果たして効果は得られるのだろうか。




色々と悩んだ結果、言葉足らずと言われようがユキ自身が納得してから飲んでもらうようにするべきだろうな。




ジンとリーフはユキを抱いたままソファーに腰を下ろした俺がアルフの手元に視線を向けていることに気づいたようで、『え?やっちゃうの?』といったような表情でソファーの側まで歩いてきた。


アルフはいつものように笑顔のままで何を考えているのか分からないが、俺の意図は感じ取ったらしく徐々に距離を詰めてきている気がする。




俺はゆっくりと深呼吸すると、腕の中でタオルケットから顔だけを出して戸惑っているユキに声をかけてみることにした。





「ユキ。先程口にした薬湯を嫌がっているのは分かっている・・・。だが飲まないことには熱も下がってくれないだろう?」


「・・・・やにゃ。」





・・・・くっ。





『やにゃ』とはなんだっっっ。


可愛いではないかっっ。


・・・誰か俺を冷静にしてくれっ!





「こほん・・・。イフ様。ユキを説得なさるのでしたら間をあけず冷静に説明くださいませ。」


「・・・あ、ああ。」





確かに俺は心の中で俺を冷静にしてくれと思ったが、リーフはいつもより口調と表情が冷ややかだった。





「俺もお前が苦しんでいる姿は見ていたくないんだが・・・。」


「・・・にゅ。」






ああああああああ・・・・・っっっっっっ!!


だからその『にゅ』とか『にゃ』とかなんなんだっっ!!


ああ、もう飲まなくていいと抱きしめてやれたらどんなにいいだろうか。


だがここで飲ませなければ、あと数日の間ユキは熱に苦しんでしまう。


どう・・・説得するべきか・・・。





「にょみゅ・・・。」


「・・・うん?」





ユキの言葉はよく聞き取れず俺は聞き返してしまったが、ユキは鈴のような可愛い声で小さく呟いた。





「おくしゅり・・・にょみゅ・・・。」





・・・ああ、薬を飲むと言ったのか・・・?


一刻ほど前まで動物の姿だったせいか、その人の姿で言葉を発したことがなかったのか、ユキの言葉はなかなか聞き取りにくいものだった。





熱が下がってここの生活に慣れたら言葉の勉強もさせてやらなければならないな。


身の回りの物も揃えてやらねばならない、今留まっている星の開けた国の街で買い揃えてやらねば・・・。





俺たちは長時間聖域を離れるわけにはいかない。



だが身の回りの物を調達するという名目でなら多少なら問題あるまい・・・。


その時にはユキも連れて行ってやろうなどと考えながらも、俺はアルフから薬湯のグラスを受け取ることにした。






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