第3話 三女は優秀
この物語はフィクションです。
登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。
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第3話 三女は優秀
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魔法の練習をする次女ラルーを、長椅子に座って見ている。
ただ、長椅子に座って見ているだけじゃなく、魔力操作で俺自身も訓練中だ。
「風よ吹け!」
風属性と氷属性を授かったラルーだが、すぐに使えるわけではない。
魔法を使うには、訓練をしないといけないのだ。
「なかなか上手くいかないわ」
ラルーが俺の横に座り汗を拭く。
「おねえちゃん なにが うまく いかないの?」
俺はたどたどしく言葉を並べる。
まだ4歳だからこんなものだ。
「魔法が上手く使えないのよ。エフィスも13歳になったら分かるわ」
「ふーん かぜまほう だよね?」
「そうよ。私は風属性と氷属性を授かったから、まず風属性を練習しているの」
「かぜ まほう って どうしたら ふくの?」
「え? それは……」
言いよどむラルー。
この世界は魔法が使えるおかげで、科学は大して発達していない。
おかげで、風が吹くメカニズムは知られていない。
それは他の魔法も同じで、どうしたら燃えるのか、どうしたら凍るのか、なぜ雷は起こるのか、誰も知らない。
そういったメカニズムを知らなくても、魔法が使えるからだ。
そこで俺は試してみることにした。
「かぜ くうき と くうき の さ ぶつかるよ」
「え、何? 何をいっているの?」
地面に絵を描く。
空気が上昇。
その穴を埋めるように、空気が移動。
それが風になる。
例を挙げると、太陽で温められた陸地の空気は上昇する。これによって気圧は低下する。
そして、海側の冷たい空気が陸へと流れると、風が吹く。この海側の気圧は高い。
気圧が高いほうから、気圧の低いほうに空気は流れる。これが風になるのだ。
分かりやすくいうと、低気圧と高気圧。
低気圧と高気圧があると、高気圧側から低気圧側に風が流れていくのだ。
ちょっとした理科や気象の知識だが、俺は教師ではないので上手く教えられない。
「うーん、よく分からないけど、この穴を埋めるようにすればいいのね」
ラルーは感覚的に理解したようだ。優秀な生徒さんだ。
「風よ、吹け!」
そわ~。
「あっ!?」
マジかー。
そよ風だけど、吹いたよ。
そよ風でも風は風だ。
あんな拙い説明と、感覚的な理解でよくできたな。
「エフィス。あんた天才ね!」
「おねえちゃん てんさい」
「あら、嬉しいこと言ってくれるわね」
ラルーが頬をすりすりしてくる。
俺の柔らかな体毛が気持ちいいらしく、すぐにこうやって頬擦りするのだ。
それから数日でラルーの風魔法はかなり上達した。
そして次は氷魔法を練習するようになった。
「氷よ、出ろ!」
簡単には出ない。
そんなラルーの目は、俺に向いている。
え、何よ? まさか俺に教えろって? 4歳児に何を求めているのですか?
「「………」」
お互いに見つめ合う。
根負けしました。
ラルーはにらめっこで負けない人のようだ。
俺は地面に絵を描く。
人が何人も歩いている絵と、まったく動かない人の絵。
動くほうは水。
動かないほうは氷。
そんな感じで教えた。
「氷よ、出ろ!」
出ちゃったよ。
マジで、この子天才。
なんであの説明でできちゃうかなー。
せっかくなので《魔力操作》と《身体強化》を教えておいた。
何をするにしても、この2つのスキルを覚えていて損はない。
「う”ぅぅぅ……気持ち悪い……」
《魔力操作》を教えたら、ラルーが倒れた。
気持ち悪くても、魔法と同じようにしっかり練習するようにと言っておく。
◆◇◇◇◆◇◇◇◆
時は流れ、俺は7歳になった。
ラルーは13歳の後半から、幼馴染3人と冒険者を始めた。
15歳になるまでは、見習冒険者らしい。
だから、登録してもランクはウッド(未成年者用)からアイアン(ビギナー)に上がるだけ。
それ以上のカッパーには、どんなに活躍しても15歳にならないと上がれない。
カッパーからは討伐系の依頼が多くなるから、未成年を保護するというのが名目だ。
ちなみに、冒険者のランクは下から、ウッド、アイアン、カッパー、ブロンズ、シルバー、ゴールド、ミスリル、エメラルド、ルビー、ダイヤモンドの10ランクある。
15歳以上が登録する時はアイアンから始まるが、未成年が登録する時はウッドから始まる。
俺が7歳ということは、次男のタンカは13歳。
タンカは授けの儀を受けた。
「タンカの属性は火。魔力は170です。励みなさい」
「……はい」
魔力170は所謂雑魚。
だからタンカは落ち込んだ。
だけど、魔法が使いたいらしく、毎日魔法の練習をしている。
「なあ、エフィス。俺にも魔法を教えてくれよ」
弟に何を頼んでいるのか?
ラルー姉さんに説明した俺が言うのもおかしな話だが、そもそもあんな説明で魔法が使えるほうがおかしいのだ。
だが、悲壮感溢れる目で見つめられると嫌とは言えない。
しょうがないので、絵で熱、燃えるもの、酸素の3つの秘密を教えた。
まあ、秘密というほどのことではないのだがね。
燃えるものに、熱を加えると発火する。
火は酸素がないと燃え続けないので、それも丁寧に教える。
「よく分からんけど、分かった!」
それは分かってないのでは?
だが、俺の兄姉は天才のようで、タンカはそれで火の魔法を成功させた。
「やったぜ!」
ラルーと同じように《魔力操作》と《身体強化》を教えておく。
ランカも気持ち悪いと寝込んだが、1カ月もするとそれはなくなったようだ。
◆◇◇◇◆◇◇◇◆
俺は10歳になった。
次男タンカは13歳の時に鍛冶師に弟子入りした。
鍛冶師なら火魔法が役に立つだろうと、俺がボソッと言ってしまったらその気になってしまったのだ。
我が兄ながら単純な人だ。
そして三女プライの授けの儀では……。
「プライの属性は回復と雷。魔力は700!?」
神父の声が上ずる。
魔力700は宮廷魔法使いになれるレベル。
しかも、上位属性の回復と雷を持っているのだから、周囲の目の色が変わった。
その翌日には、領主の使いというのがやってきて、プライ姉さんが15歳になったら王国の魔法師団に推薦する。それまでは、領主家でたまに魔法を教えると言ってきた。
大事になったと両親はあたふたしたが、俺は鼻をほじりながらふーんといった感じだ。
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