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地球

さくらは、真っ暗の部屋に立っていた。

見覚えのあるドア、壁、窓・・・元々住んでいた部屋。


「本当に帰ってきた・・・」


やばっ。


体全体の倦怠感、立ちくらみがし、その場に座り込む。


たぶん、世界を移動するって体力の負担がすごいんだ。


「そんな事より、この部屋・・・何もない!!!!!」


部屋の中は、もぬけの殻と言う言葉が似合うほどに何もない空き部屋になっていた。


「携帯も財布もない!お金もない!!どうやって家に連絡すればいいの!?どうしよう」


どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう・・・・・・・・・・。


「あっ!そうだ!!」


立ち上がると、部屋の外へ。

外に出ると、雲一つない夜空に満月の光。ただ、こちらの世界は人間が作り出した光があり、少し違和感をさくらは感じた。


アパートをでると、目の前にある一軒家に行きインターホンを鳴らす。


「はーい」

「夜分にすみません。大家さん、アパートを借りていた森さくらです」

「えっ!?」


インターホン越しに話し、森さくらだと名乗ると、相手は驚き慌てて玄関のドアを開け、さくらの姿を見るとさらに驚いた。


「さくらちゃん!?」

「突然すみません」

「そんな事より、本物よね?ちゃんと足はある??」

「本物です。足もあります」


足って、ちゃんと生きてますから・・・。


七十代くらいの女性があたふたとしながらさくらを見回す。


「さくらちゃん!?」

「こんばんは、大家さん」


玄関で騒いでいる声で、女性のご主人(アパートの大家)が見に来ると、消えてしまったさくらがいたのを見て腰が抜けるかと思うほど驚く。


取りあえず家の中に入れてもらい落ち着く三人。


「今までどこに行ってたの?」

「すみません。あの、今のわたしの状況ってどうなってますか?」


さくらは、こちらの世界で自分がどういう扱いになっているのかが気になり大家夫妻に訪ねる事にしたのだ。


「さくらちゃんを最後に見た日から・・・・・」


さくらを最後に見た日とは、異世界に呼ばれた日の朝挨拶をした日、それから五日後に実家が送った荷物の受け取りがされなかったことから、さくらの母親は携帯にかけたがつながらず、大家の家に電話をし訪ねてもらった。

部屋は鍵がかかっており、誰もいない様子だったが窓を見ると電気が付いたまま、その時大家は消し忘れと思ったが次の日も付いたままだったので、さくらの実家に電話。母親了承の元合鍵を使い部屋をあけた。

部屋には案の定誰もおらず、携帯、財布などは置かれたまま、食べかけの食事もそのままで匂っていた。

状況を聞いた両親は、すぐにアパートに駆け付け唖然とし、部屋中を何度もさくらの名前を呼びながら探すが当然の事だが見つからない。

そして、警察に連絡。

その後、部屋は解約され荷物は実家に。


「警察にまで!?」

「それはそうよ」

「あの、公開捜査とかで全国に顔出されたりとかは?」

「それは、まだじゃないかしら」


よかった。


ホッと胸をなでおろすさくら。


「ご迷惑をおかけしてすみませんでした」

「無事だったんだから気にしないで」

「そうそう」


頭を下げて謝るさくらに対し笑顔でそう言ってもらい少しだけ罪悪感から解放された気持ちになるさくら。


「あの、図々しいんですけど家に電話したいので電話をお借りできませんか?」

「そうね、早く知らせてあげた方がいいわよ」

「ありがとうございます」


さくら実家に電話。


「はい、森です」

「お母さん、さくらだけど」

「・・・!?」

「今、大家さんに電話借りてて」

「ちょっと、あの、本当にさくらなの?」

「うん」

「大家さんと変わってちょうだい」

「わかった」


「すみません、母が変わってほしいと」


さくらから受話器を受けとると、話しをし始め終わったのかさくらに受話器をまた渡す。


「もしもし」

「もう、本当にどこ行ってたの!どんなに心配したかwかってるの!!」

「ごめんなさい」

「いい、今日は大家さんの家に泊めてもらいなさい。お願いしたらいいっておっしゃってくれたから。明日、朝市で行くからどこにも行くんじゃないわよ!」

「はい。迷惑かけてごめんなさい」

「本当によ。詳しくは、家に帰ってから聞くから、今日はゆっくりとお休みなさい」

「おやすみなさい」


母親の心配と怒っている話し方に終始謝るばかりのさくらだったが、心配してくれていた事が嬉しかった。


そして、次の日。

父親と母親がやって来ると、大家夫妻にお礼とお詫びをし、その足で警察署に出向きさくらが無事に見つかった事を伝え捜索願いの取り消しをし、さくらは家出をしていただけと言うことになった。

家出、と言う事に関してはさくら自身納得はできなかったが、これ以上ややこしくしないため何も言わず受け入れる事にした。




実家。

家に帰り着くと、敷地内同居の祖父母、近くに住む兄夫婦、その子供が集まっており、早めの夕食が準備されていた。


「お帰り」

「お帰なさい」

「おかえり」

「ただいま。心配かけてごめんなさい」

「まぁ、初めにご飯が先じゃ」


謝るさくらに祖父が食事に席に着くよう促し、皆で食事。

なんとなく気まずいのか誰も話しをせず終わる。


そして、いよいよ本題。


「それで、どこにいたの?」


どうしよう・・・異世界にいました。なんていっても信じてもらえないだろうし、下手に嘘をついてもすぐにばれそうだし・・・。


「えっと・・・知らない場所」

「監禁されてたの!?」

「大丈夫だったか?」


さくらの言葉に皆が驚き身を乗り出して心配する。


「大丈夫、と言うか、監禁じゃないから」

「じゃあ、何?」

「言いたくない事か?」

「言いたくないなら、今度でもいいぞ」

「いや・・・」


どうしよう。


さくらは、本気で心配してくれている家族にどうしたものか、と困るが本当の事を話す事に決め、話し始める。


「・・・と言う事です」

「・・・?」

「・・・?」


皆が訳わからない、と言う顔をしているのを見て、なぜかその表情がしっくりして、さくら自身も、そうだよね、と思う。


「つまり、異世界に行って、王子様に結婚を申し込まれて、それを断り、送り返された。そういう事?」

「そういう事」

「んー」

「異世界ねぇ」

「さくらが王子様に求婚」

「あり得ない」


そこで、一人を除き大爆笑。


「嘘でももう少し真実味のある嘘をつくだろう!」

「そうそう」

さくらの兄が言うと、父親が同意し、他の皆も頷く。


「すごい!さくらちゃん!!」


笑わなかった一人、姪の楓、五歳だけは瞳をキラキラさせてさくらの方を見つめる。


「本当だもん」

「それじゃぁ、証拠か何かあるのか?」

「証拠?」

「その、異世界の物とか」

「異世界の物・・・あっ!このイヤリング」

「イヤリングって、ピアスじゃないの?」

「あっちの世界はピアスがないみたいなの」


父親が証拠といい、思い出したのが耳に付けていたイヤリング。


「これ、月の光にかざすと色が変わるの」

「アレキサンドライトみたいな感じ?」

「これは、ダイヤみたいに透明になるの」


そうして、皆が庭に出るとさくらがイヤリングを月にかざす。


「・・・あれっ?」


変わらない・・・なんで?


もう片方のイヤリングもかざしてみるが同じく変わらない。


「うそ・・・」

「変わらないわね」

「そうだな」


そうして、なぜかその場で解散となった。


なんでかわらないのーーー!?



次の日。

さくらは病院に連れていかれ、脳の検査、体の検査をされ異常なし。

と言う結果の元、これ以上は何も聞かない代わりに家に住むか、病院に通うかを選ばされ家に住む事にした。


いない間の携帯を見ると、友達から何度も心配の電話、メールなどが来ており、皆に連絡をし、心配させてしまった事を謝った。

就職に関しては、二次面接や内定通知が来ていたが、どれも期限が過ぎていたため今年の就職は諦め、家から通える場所のアルバイトを探した。

お読みいただきありがとうございます。

次回投稿が本編最終投稿になり、予定では明日投稿させていただきたいと思っております。


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