聞き取り
アールヴが寝てる間、関係者に話しを聞く作業が行われた。
机と椅子の置かれた殺風景な部屋にイムレが入って来ると、先にいた一人に挨拶をすると席に座る。
先にいたのは、侯爵の屋敷に行った時アールヴとグリメルダが話していた時に一緒にいた人だ。
「遅れてしまった」
「お疲れ様です」
「殿下は部屋で寝ておられる」
「やっと寝てくれた、と言うことはさくら様がお目覚めになられたんですね」
「あぁ」
「よかったですね」
雑談をしていると、ドアがノックされ部屋にさくらの誘拐の実行に関わった女性が両手を縛られ、監視役が腰に巻かれた縄を持ち逃げ無いようにしながら部屋に入って来る。
部屋の中央、二人が座る目の前に来ると男性と女性は深く頭を下げる。
「座れ」
イムレが言うと二人は簡素な椅子に座る。監視役は持っていた縄を椅子の背と腰を巻きつけ解けないように縛り、用意された椅子に座る。
「なぜこのような所に連れて来られたのかわかるか?」
「はい」
イムレが厳しい口調で言うと、顔を俯いたまま返事をする。
イムレの両隣りの人は書記官の様な役割でペンを持ちここでの内容を紙に書き止め始めた。
「では、今からさくら様誘拐について聞く」
「はい」
「では、自分のしたことを全て話してもらおう」
「はい。お嬢様に言われ王太子妃様の部屋へ行き、王妃様がお呼びと嘘をつき教会に連れ出しました」
「王妃様の名を使ったのか!?」
「はい」
部屋にいた全員が驚き、顔を見合わせると、イムレが確認のため聞き返した。
”さくら様が知らない侍女の方が多い王宮で、しかも王妃様の名前を出せばさくら様は疑うことなく付いて行くのは当然か”
「お嬢様とは誰の事だ?」
「侯爵令嬢グリメルダ様です」
「王太子妃様の事はまだ正式にその地位におられないため名前で言うように」
「はい」
「続きを」
「そこで、グリメルダ様と侯爵家に努めております夫と合流し、さくら様を縛りまして屋敷にお連れしました」
”二人は夫婦か”
「二人が侯爵家で働くようになったきっかけは?」
「両親が働いておりまして、その関係で働かせていただいております」
「そうか」
「はい。侯爵邸では手足を縛られ、口も塞がれたまま床に寝かせました。それから、迷霧の森に置き去りにしました」
「迷霧の森に置き去りにするということは、この国の人間ならどういうことかわかるな?」
「はい」
「どういう事とだと思う?」
「・・・二度と戻って来ることが出来ません」
小さな声がさらに小さな声になる。
「王太子妃候補の方と知りながらそんな事をしてどうなるか考えなかったのか?」
「申し訳ありません」
「・・・グリメルダ嬢はなぜこんなことをした?」
「グリメルダ様は、ずっと王太子妃になる事を夢見ておられました。ですが、選ばれなかったのでさくら様がいなくなればご自分が王太子妃になれると思っておられました」
「もし、そうなったとしてまた他の者が選ばれたらどうしたと思う?」
「ご自分が皇太子妃になれるとしか考えてなかったと思いますが、もし、他の方が選ばれたら、同じ事をしたかもしれません」
「なぜ、こんな事に協力したのか?なぜ、自分達が選ばれたのか?」
「子供が・・・」
「人質か?」
「・・・」
黙ったまま頷く。
”一番簡単で言う事を聞かせやすいが、一番危うい方法だな”
「今、子供は?」
「わかりません」
”人質はすぐには返さない、か。当然と言えば当然だな”
「他に話しておきたい事があれば」
「本当に申し訳ありませんでした。あの、さくら様は?」
「お前達が置き去りにした場所にはいなかったので移動されたのだろうとの判断から、王太子殿下が森に探しに入られた」
「えっ!?」
イムレの言葉を聞いた瞬間、下を向いていた顔が上がり目に涙を溜めた顔がイムレの方を向いたが、イムレの方は表情一つ変えず相手をきつく見る。
「また、話しを聞くことがあるかも知れないが今回は以上。連れて行け」
メイドの女性は、部屋を出て行った。
「はぁ」
「イムレ殿は意地悪ですね」
「何が?」
「見つかったこと、教えなかったじゃないですか」
「見つかったか?事実は言った。ただ、見つかったか、とは聞かれなかったから答えなかっただけだ」
「そうですけど・・・」




