表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
35/131

034

「もうひとつ、体を作ってやるよ」

 その言葉の後、ヴォルトはすぐに作業に取り掛かった。

 ぼくのラボのドアをきつく閉め、いろいろな物をドアの前に敷き詰めた。誰も入ってこないように、精一杯のバリケードだそうだ。

 確かに、GXがGXを造っている所なんて見つかったら、もちろん厳罰を受けるだろうし、ぼくらを造った公司の面目は丸つぶれだ。

 何より、ヴォルトが集中している時に、横から邪魔されるのを嫌っていることが、一番の理由だろうけれど。

 事実、ぼくがキーボードをカチカチ鳴らすと、「うるせぇ」と物を投げられるので、ぼくは黙ってヴォルトの行動を見下ろしていた。

 ヴォルトはまず、ぼくのラボを片っ端から探り、ずいぶん前に“ぼく”を造ったときの残り物をかき集めていた。

 幸い、いくつか代えのパーツがあったから、部品もひとつひとつ一から造り直すなんて、途方もない作業は免れた。

 ヴォルトはうんうん唸りながら、まるでジグソーパズルのように、ぼくの残り物をくっつけている。

 時々、自分の体をじっと見つめる。自分の体の中を透視しているんじゃないかと、ぼくは思った。

 ヴォルトに“ぼく”を造ることなんて、できるのかな……。一番心配なのは、ヴォルトが自分の体を見ているために、ぼくがヴォルトのサイズになってしまうことだ。いや、この際それはどうでもいいや。

 もし、ヴォルトと同じく炎しか使えなくなったらどうしよう。ぼく、火だけは苦手なのに。

 いっそ、害のない普通のロボットにしてくれないかな……。

『ヴォルト、ねぇ』

 ぼくは出来かけの腕を投げつけられるのを覚悟して、キーを打った。

「なんだよ」

 ヴォルトは振り返らないで、唸るように言う。

『ねぇ、ぼく、何か出来ることないかな』

 ぼくは物が飛んでこないことを確認して、素早く打った。

 すると、ヴォルトは振り返らないで、答えた。

「うるせぇ。忙しいんだ」

 きっぱりと断られた。

『わかった。黙っているよ』

 ぼくはそう打って、すぐに消した。

 ヴォルトは時々雄叫びをあげてひっくり返ったり、「こいつを造った公司なんて、捻り殺してやる!」なんて恐ろしい言葉を叫びながらも、着々とぼくを造り上げていく。

 体の大部分ができた頃、ぼくの中にあったぼくの設計図面と、ヴォルトが造っているぼくを比較してみたら、ぴったりとサイズが合ったので、ぼくはほっとした。

 ただ、ちょっとヴォルトのぼくのほうが、指が長い。残ったパーツの関係だろうけど、まぁ、いいや。

 あぁ、そうだ。この設計図、まとめてヴォルトに渡せばよかった……。

 でもいまさら渡したら、絶対ぼく、本体まで叩き壊されるな。

 うん……やめておこう。


 それから三日間、ヴォルトはぼくを作り続けた。

 機動しっぱなしのぼくの本体が、そろそろ限界の唸りをあげてきた頃、やっとヴォルトが歓喜の叫びをあげた。

 ぼくはそれに驚いて、プツン、と画面のスイッチを入れる。

『できたの?』

 素早く表示したぼくの言葉に、ヴォルトは輝く笑顔を見せた。

 ずっと真っ赤だったヴォルトの瞳は、ようやく元の茶色に戻っている。

「できたぜ! 上出来だ!」

 ヴォルトは腕に一体化するように巻きついたコードの束を素早くほどき、ぼくに駆け寄った。

「感謝しろよ。完璧だぜ」

 そして、いつも通りにやりと笑う。

 ピリピリした感じがなくなってよかった。

『うん。ありがとう』

 ぼくはそう打った後に、すぐにまた文字を打った。

『ぼくの体、見せてよ』

「なんだよ。もう少し、感謝しろよな」

 ヴォルトは不機嫌そうにそう言いながらも、満足そうな表情をできたての“ぼく”に向けた。

 ヴォルトはふらふらと作業台へ向かい、ごちゃごちゃしているぼくの体の周りのものを退かす。

 作業道具や残りものの残りものが、ガチャガチャと音をたてて床へ落ちていく。

 そして、出来上がったばかりの“ぼく”を見て、ぼくは思わず、わけのわからない文字を画面いっぱいに表示した。

 その後すぐに、倍角の文字でヴォルトに精一杯の感謝を表す。巨大な緑の文字のせいで、一瞬部屋が明るくなった。

『すごいや! ヴォルト!』

 作業台の上には、サイズや体重、性能までバッチリの、できたてのぼくの体が置いてあった。

 やっぱり少し、指は長いけれど。

 ヴォルトが、自信満々にぼくを見上げている。

「やれば出来るもんだろ。知ってたか? お前たち全員の設計図は、俺の中に入っているんだぜ」

 ヴォルトはにやりとして、ぼくの腕を持ち上げた。

『そうなの? ぼく、ぼくのことはぼくにしかわからないと思ってた』

 ぼくは驚いてそう打つ。内心、ほっとしたけれど。

 だって、後で正直に「ごめん、本当は設計図があったんだ」なんて言ったら、ぼくは確実に粗大ゴミ行きだ。

「GX全員の設計データは、俺が管理しているんだ」

 ヴォルトはそう言いながら、ぼくの腕をさらに持ち上げ、関節を折り曲げて見せた。

「接続部も完璧だ。関節もちゃんと曲がる。回線もバッチリだ。皮膚も、どこから見ても人間のものにしか見えない。こればっかりは、開発した奴に賞賛を送るよ。ちょっと、前のほうの回線がグチャグチャしていたから、回線を短くしたところもあるが、まぁそこはいい。ちゃんとつながっているからな。それに、苦労したのは頭の中だぜ。部品がまったく足りなかった。このラボの中では足りなかったから、わざわざバリケードを崩して造りかけのティーマの部品を盗みに行った。気づいたか、お前? 頭はメンテナンスでも取り替えることはないからな。まぁ、ばれないだろう。誰かがなくしたんだと思うさ。ただちょっと、ティーマのように能天気になるかもな」

 ヴォルトはすらすらと今までの功績をぼくに告げ、自慢げにまたぼくの画面を見上げる。

「どうだ。お前から見ても、なかなかなもんだろ?」

 その問いかけに、ぼくは、『ううん』と答えた。

 ぼくの答えに、ヴォルトは顔を顰める。

 ボルトやナットが飛んでくる前に、ぼくはすぐに文字を打った。

『前なんかより、ずっとスムーズに動けそうだよ!』


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ