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033

 目の前に居るゼルダの口からそれを聞いて、ヴォルトは部屋を飛び出し、一目散にアランのラボラトリーへと走っていった。

 階段を滑るように降り、ラボのある階へ急いで駆け込む。

 勢いのあまり扉に衝突したが、すぐに扉が開いたため、ヴォルトは部屋へ倒れこんだ。

 室内には、ゼルダが破壊したコンピューターや、大掛かりな器械の破片が、消火液まみれになってまだちらばっている。

 立ち上がろうとするが、足に力が入らず、ゴツン、と音がして、ヴォルトの頭が床に叩きつけられた。

「くそっ……! アイツ、あのオヤジ、やりやがった! 完全にアランを消した!!」

 ヴォルトは床に膝をつき、頭を抱えた。

「最悪だ……! 俺のせいだ! 俺があいつを巻き込んだから……」

 シンと静まり返った室内に、後悔の言葉が響く。しかしその時、左上のほうから、パチパチと何かが動く音がした。

 その小さな音に、ヴォルトすぐに反応した。素早く顔を上げ、体を起こす。

「誰だ?」

 暗闇に向かって、ヴォルトは顔を顰めた。――気配はない。人間は居ない。

 ヴォルトはじっと目を凝らし、辺りを見回した。視界が赤くなり、体に埋め込まれたコンピューターが、勝手に破壊された部屋の分析を始める。

 部屋を見回して一回転した時、左にある大きな画面に、パッと緑色の文字が映し出された。

『ヴォルト!』

 その文字を見て、ヴォルトはぎょっとした。

 なんだ? ウィルスか……?

 緑色の文字が、画面からパッと消えた。

 かと思ったら、文字がまたひとつひとつタイピングされる。

『ヴォルト! ぼく、アランだよ!!』

「ア……アラン!?」

 ヴォルトは引きつった声をあげ、慌てて画面に駆け寄った。

 大きな画面の下にあるキーボードが、ひとりでにパチパチと動いている。さっきのは、この音か。

 またパッと文字が消え、またタイピングされる。

『ぼくはここにいる! ヴォルト! 君だろう?』

「アラン!? おまえ、そこに居るのか!」

 ヴォルトは顔を輝かせ、思わず大声で叫んだ。

 カチカチと勝手にキーが動き、文字の下に新しい文がタイピングされていく。

『そうだよ! ぼく、まだここに居る! あいつはゼルダだ!』

「ああ、そう言っていた! まさか、お前!」

『ゼルダにぼくを乗っ取られた! お父様がその手助けをした! シオンもだ!』

 あのアランにしては、相当怒っているような文章だ。

「なんだって!?」

 緑色の光る文字を見つめて、ヴォルトは思わずキーボードを叩いた。

 アランの文字のあとに、わけのわからない文字が表示される。

『壊さないでよ』

 そう文字を打って、ヴォルトが打った文字が消える。

 今度はキーボードの横にこぶしを打ちつけて、ヴォルトは悪態をついた。

「ちくしょう! あのオヤジ、俺たちを娘とか息子とか言っているくせに、もの同然で扱っていやがる!」

 いまやヴォルトの形相は、まるで修羅のようだ。

『怖いよ、ヴォルト』

 アランの文字が、小さくタイピングされる。

 ヴォルトはそれを見て、もう一度歯をむいてみせたが、ゆっくりと深くため息をつき、表情を緩めた。

「これが……お前の本体か」

 ヴォルトは囁くように、キーボードが置いてある大きな機械に向かって言う。

『うん』

 その正面の大画面に、文字が小さくタイピングされた。

「俺よりでかい。いいな」

 ヴォルトは苦笑いし、アランを見上げた。

「考えることが、たくさんできるわけだ。余計なことも、たくさん」

『まあね』

 アランのにやり笑いが見えてくるような、そんな打ち方だ。

 文字が少し点滅した後、パッと消えた。そして、

『ぼく、どうしたらいいんだろう……』

 と、打たれる。

 その文字を見て、ヴォルトは肩をすくめた。

「わからない」

 きっぱりとそう言って、首を横に振る。

 正直なヴォルトに、アランの本体が残念そうに唸り声をあげた。

「お前、よく消えずにすんだな」

『うん』

 アランが返事をする。文字が消えた。

『お父様にあの体から追い出される寸前に、首の接続コードからこっちへ逃げたんだ。最低限のデータを持ってきたつもりだけど、急いで選抜したから、少し向こうに置き忘れた』

 すぐに文字が消え、また打たれる。

『地下三階の人たち、どうしてる?』

「ああ、大丈夫だ。食事は俺が運んだ。お前のより、美味くないと言っていたけどな」

『そんなこと言うの、マルシェさんだろう?』

「あたり」

 ヴォルトはにやりと笑った。

『ありがとう。相変らず、元気なんだね』

 アランはほっとしたように、連続して文字を打つ。

 またすぐに文字が消え、暗闇でキーボードが鳴る。

『ヴォルト、ぼく、もう体に戻れないのかな』

「そうだな……」

 その文字を見て、ヴォルトは少し考えるような仕草を見せた。

 何か提案でもあるのだろうか。暗闇に向かって目を細め、ヴォルトは小さく唸る。

『ヴォルト?』

 キーボードが鳴る。

 ヴォルトはキッと顔を上げると、暗闇を睨みつけて、にやりとした。

「お前の体を、もうひとつ作ってやるよ」


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