↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
27/40

第27話 爆破

 ケイとガルドゥルは、同時に音のしたほうを振り向いた。


 森の木々の上に、巨大な影が突き出していた。


 竜だった。


 黒い鱗に金の角で、木よりずっと高い。


 遠く離れたここからでも、その大きさがわかる。


 森の鳥が、一斉に飛び立った。



「!?」


「……正体を現したか。忌々しい邪竜め」



 ガルドゥルが、吐き捨てるように言った。


 いつものへらへらした顔は、どこにもなかった。


 ケイは、ユージーンを担いだまま目を見開いている。


 背中のユージーンが小さくうめいたが、起きる気配はない。


 ケイの空いた手が、知らず大剣の柄を探っていた。


 ケイは、しばらく声が出なかった。



「あれは……グレンゴルドですか? あれほど大きな竜だったとは」


「だろうな」


「にしても、なぜ爆発音が?」


「俺の仕掛けが、今発動したんだろう」


「仕掛け、ですか?」


「あぁ。どっちかは仕留められているといいんだが……まぁ、望み薄だな」



 竜の影は、しばらく森の上に留まっていた。


 やがて、木々の向こうへゆっくりと沈んでいく。


 ガルドゥルは、竜の消えたほうを見たまま、腰に下げたエミリアの剣の鞘に手を置いた。



「ただ、奴にとってタークィンは、正体を明かしてまで守りたい相手だった。それがわかっただけでも十分か」


「そうですね。ちなみに、どういう仕掛けを?」


「特定の魔力の波長を持つやつとの距離が、一定より近くなると爆発する。そういうやつだ」


「波長、ですか」


「俺は、会った人間の魔力の波長をある程度覚えていてな。タークィンとやらの波長に反応するようにしておいた」


「……私のも、ですか」


「あぁ。覚えてるだけだ」



 ケイは、少し考えてから首をかしげた。



「タークィンだけに、ですか?」


「そこまで条件をつけると、込められる魔力が限られる。だから、グレンゴルドにはたいしたダメージは入ってなさそうだがな」


「いつの間に、そんな仕掛けを……あぁ、もしかして、小鳥を爆発させたときですか?」


「おぉ、よく気づいたな」



 ガルドゥルが、少しだけ感心した顔をした。



「あの魔法は、もともと込める魔力の量が多いから、細工しても気づかれにくいんだよ」


「なるほど」


「ケイも、魔法使い相手のときはマジで気を抜くなよ。あのグレンゴルドだって、油断さえしなけりゃ五体満足で帰れたはずだからな」


「はい。まぁ、我々三番隊が魔法使いを相手取ることは、あまりなさそうですが」


「ま、気をつけろってことだ」


「……はい」



 ケイが、背中のユージーンを背負い直す。


 そんな話をしたあとは、二人ともあまりしゃべらなかった。


 ケイの背中で、ユージーンはずっと眠ったままだった。


 歩くこと二時間ほどで、トルタヤに着いた。


 日が、だいぶ傾いていた。


 門の前で衛兵に呼び止められたが、ガルドゥルが証を見せると、すぐに通された。


 門をくぐると、衛兵が慌ただしく走り回っていた。


 町全体が、妙に騒がしい。


 あの竜の姿は、ここからも見えたらしい。


 どこかで誰かが、竜だ、と叫んでいた。





 ◇





 遡ること、二時間と少し前。


 このグレンゴルド様が、腕一本持っていかれるとはなァ。痛ェ。


 俺ももっと鍛えなきゃ、騎士団の壊滅なんざ夢のまた夢か。


 サシなら勝ててた。それは間違いない。


 とはいえ、さすがに油断しすぎだ。


 こんなザマじゃ、タークィンに笑われちまう。


 ……いや、あいつは笑わねぇか。心配するほうだな、あいつは。


 森に降りて人の姿に戻り、そこからは歩く。


 傷口が、歩くたびに痛む。


 タークィンとは、いつもの場所で落ち合うことになっている。


 さァて、このへんが合流地点のはずだが。


 お、いたいた。


 木の根元に、黒い鎧が座り込んでいる。



「おーい! タークィン! ちィとやられてしもた」


「え!? どうしたんですか、その左腕!?」



 タークィンが、脇腹を押さえながら駆け寄ってくる。


 あいつもあいつで、坊主にやられた傷が痛むだろうに。


 エミリアは仕留めたんだが、と言い訳しようとした、そのときだった。


 急に、魔力の反応を感じた。


 タークィンの体からだ。


 しかも、俺との距離が近すぎる。


 この反応は、あいつ自身の魔力じゃない。


 危ない、と考えるより先に、体が動いていた。


 リスクも何も考えず、本来の姿に戻る。


 周りの木が、まとめてなぎ倒された。


 爆発は、たいしたことなかった。


 元の体がでかいぶん、ほとんど効いていない。


 あのガルドゥルとかいう魔導士の仕業か。食えない野郎だ。


 人の姿に戻る。


 目の前で、タークィンがへたり込んでいた。


 俺を見る目が、怯えている。


 爆発なんかより、そっちのほうがよっぽど痛かった。


 少しだけ、間を置いた。



「初めて見せる姿だッたな。今なら、まだ引き返せるぞ? どうする?」



 タークィンは、しばらく黙っていた。


 それから、ゆっくりと立ち上がる。


 タークィンは、俺の欠けた左腕に目をやった。



「ボス……侮るのも、いい加減にしてくださいよ」


「……」


「惚れた男が人間じゃないからって、反旗を翻すようなことはしないですよ。ただ、まぁ……少し、いや、かなりびっくりはしましたがね」



 そう言って、タークィンは笑った。


 顔は青いし、膝はまだ震えている。



「やッぱ最高だな、お前ェ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。