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第21話 闖入者

「一度見ただろうが、馬鹿が。油断しやがッて」


「す、すいません、ボス」


「もういい、下がッてろ」



 黒いコートの男が、タークィンを押しのけて前に出てきた。


 盗賊団のボス。ジジィの口ぶりからして、こいつがグレンゴルドで間違いない。



「坊主。二連戦になるが、文句はねぇよなァ?」


「しょうがないですね。ほんとは遠慮したいんですが」


「まァ、そう言うなよ。つれねぇなァ」


「仕方ないでしょう。片や十歳の子ども、片や盗賊団のボスなんですから」


「まァ、それもそうか」



 グレンゴルドが、腰から剣を抜いた。


 黒い刃の真ん中に、金が一本。


 さっきはかっこいいとか思ってた剣が、今はただただ怖い。


 もうちょっと粘りたかったけど、しょうがない。


 俺も剣を抜いて、正面に構える。


 すると、グレンゴルドが不意に空を見上げた。


 つられて、俺も見上げる。


 何かが、ものすごい勢いで落ちてきていた。



「なんだァ、ありャ」



 ズガァァァァァン!!


 地面が揺れた。


 土煙がもうもうと上がる。


 は!?


 ゴーレムか? これ。


 なんか、ゴーレムっぽい人型の無機物が、空から降ってきたんだけど。


 わけわかんねぇ。グレンゴルドも口を開けてるし。



「おい、タークィン。これ、うちの玄関に置いてたやつだよなァ?」


「たぶん、そうですね。なんで降ってきたんだ、こいつ」



 うちの玄関って。


 盗賊のアジトに、ゴーレムの置物があるのか。番犬みたいなもんか?


 で、その番犬がなんで空から降ってくるんだよ。


 ゴーレムは、のっそりと体を起こした。


 周りをゆっくりと見回して、グレンゴルドのところで止まる。


 ひとつしかない目の光が、ぐっと強くなった。



「なんだァ? おい、タークィン。こいつ、多分ぶッ壊れてるよなァ?」


「そうですね。多分、落ちた衝撃で諸々吹っ飛んでますね」


「おい、坊主。ちょいと待ッてろ」


「あ、はい」


「壊れてるもんはァ、叩いて直すに限るよなァ!」


「がんばれー!」



 思わず応援してしまった。


 どっちを、とは言わない。


 グレンゴルドがゴーレムに向かって走る。


 上段からの振り下ろし。


 ゴーレムは片腕を上げて受けた。衝撃で、ゴーレムの足が地面にめり込む。


 でも、ゴーレムは気にもしない。


 剣を弾き返して、そのまま体当たり。


 グレンゴルドは剣から左手を離して、片手で体当たりを受け止めた。片手で。


 少し押し込まれながら、右手の剣を逆手に持ち替える。


 狙いは、ゴーレムの単眼。


 ゴーレムは後ろに下がって突きを避けた。


 そこへ、グレンゴルドが間髪入れずに詰める。


 三度、四度と斬り込む。


 ゴーレムは反応できなかったのか、しなかったのか。


 どの斬撃も、ボディに浅い傷をつけるだけだった。



「ちッ、ちいと固く作りすぎたかァ?」



 作った?


 今、作ったって言った?


 ゴーレムは傷なんかお構いなしに、距離を取ったグレンゴルドへ突進していく。


 グレンゴルドは、弓を引き絞るように右手を引いた。


 突進に合わせて、目にも留まらない突き。


 突きはゴーレムの右肩に当たって、肩ごと右腕を粉々にした。



「まァずは一本!」



 ゴーレムは突進の勢いのまま距離を取って、グレンゴルドを正面にとらえた。


 単眼の光が、さらに強くなる。



「ほう、面白れぇッ!」



 グレンゴルドは剣を地面に突き立てて、詠唱を始めた。


 数秒後。


 単眼の光がふっと消えて、青白い極太のビームが放たれた。


 ヴゥゥン、ゴオオオォォッ!!


 同時に、グレンゴルドの詠唱も終わる。


 剣が、赤く光り始めた。



「エクスキューティーテッ!!」



 赤く光る剣が、迫ってくるビームを斬り払っていく。


 斬った隙間はすぐ埋まる。でも、グレンゴルドの剣は止まらない。


 ビームが止んだとき、そこには無傷のグレンゴルドが立っていた。


 攻撃なんか受けてませんけど、みたいな顔で、堂々と。


 ……腹立つけど、様になってる。


 しかも、あのビームを斬りながら、次の詠唱までやっていたらしい。


 今度は剣が、黒い光を放ち始めた。



「ダエモニスグラディウス!」



 ビームを撃ち終わって固まっているゴーレムに、一息で詰める。


 胴体から、真っ二つにした。



「さすがは俺の精霊式自律型装甲兵器。なかなか強かッたな」


「……」


「改善点は、魔力砲のあとの硬直ッてとこかな」


「ボス、なんかまた新技作りましたね」


「これいいだろう? 気に入ッてんだよなァ」



 ……こいつ、やばすぎる。


 剣術はもちろん、身体能力もアホみたいに高い。そのうえ魔法まで高レベルで使える。


 果ては、ゴーレムを作っただの、魔法を開発しただの言ってたな。


 ふざけてるだろ、これ。


 なんで盗賊なんかやってるんだ、こいつ。


 守りに徹したって、こいつの気分次第で簡単に死ねるぞ、俺。



「さァて、坊主。十分休めただろう。存分に楽しもうか?」


「あんなのを見せられたあとで、まだ闘志があると思ってるんですか?」


「坊主は、そういうタイプだと思ッたがなァ。思い違いだったか?」


「……」


「それとも何か? 騎士の息子でありながら、命乞いでもするかァ?」


「なかなか嫌なこと言ってくれますね」



 こいつ、性格が悪すぎる。


 さすが盗賊。性格わるい。


 ここまで言われて、いもを引くやつは男じゃねえよな。


 まぁ、最初から戦うつもりだったけど。


 俺は、剣を構え直した。


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