↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
2/4

第2話 評議会

「よおおおおし! 書けたああああ!」



 砂時計の砂は、まだ半分も落ちていなかった。


 俺は紙の束をつかんで、ドアを開けた。



「ジジィ! できた! 評議会行こうぜ!」


「うるっさいのぉ。次の開催はまだ先じゃ。そこで大人しくまっちょれ」


「え、早く出したら早く転生できるとかないの?」


「言っとらんかったかの。ないぞ」


「マジかよ。めっちゃ頑張ったのに……」


「推敲でもしとくんじゃな」



 ジジィは水色のDS Liteをぱかっと開いた。こっちを見もしない。



「なぁ、これ一個も通らなかったらどうなんの?」


「もう一回考えるか、最悪、能力なしじゃな。おぬしの場合は微妙なとこじゃが」


「微妙ってなんだよ。てか、能力なしとかあんの?」


「転生できる条件はの、魂の体力みたいなもんが、ここにたどり着いて、評議会の結果が出るまで残っとることなんじゃ」


「体力」


「再提出して、もう一回評議会を待つとなったら、そのぶん体力がいる。それまで魂がもたんと判断されたら、能力なしで出発じゃ」


「え、そんなヘロヘロで転生して大丈夫なの? 途中で死んだりしない?」


「送るあいだはこっちで保護するから、途中で死ぬことはないのぉ。問題は生まれるときじゃな。出産は母子ともに命がけじゃから、場合によっては普通に死ぬ」


「こわっ」


「そこさえ越えれば、体力はちょっとずつ回復するから問題ないぞ」


「ちょっとずつ回復ってなんだよ。そもそも魂の体力ってなんなのさ」


「正味の話、わかっとらん」


「わかってねぇのかよ」


「原初の神が生き物を作ったときは、そんな仕様はなかったらしいんじゃがの。気づいたら後から増えとったんじゃと」


「勝手に増えんの?」


「増えたんじゃから、しょうがないじゃろ。ほれ、推しが死んだとき、体は元気なのに働けんことがあるじゃろ。あれに絡んどるんじゃないかと言われとる」


「あー……推しが死んだ回のあと、三日くらいバイト休んだことあるわ」


「それじゃ、それ。わしも三日、メシが喉を通らんかったのぉ。まぁ研究するやつがおらんから、わからんままじゃがの」



 神様も推しが死ぬと寝込むのか。





 ◇





 それから五日。



「しゃあ! 行くぜ評議会!」


「ん? おぬしは行かんよ?」


「え?」


「おぬしはここで留守番じゃ。言っとらんかったか?」


「言ってないな」


「じゃあ、なんで聞かんかったんじゃ」


「聞いたわ! 何回も聞いたのに、ジジィがDSで化石掘るのに夢中で返事しなかったんだろうが!」



 ジジィは何も言わずに、ドアの向こうへすたすた歩いていった。



「おい! 逃げんなジジィ! 戻ってこい!」



 戻ってこなかった。


 都合が悪くなると、すぐこれだ。


 まぁいい。今日の俺は機嫌がいいんだ。結果が出るまでに、書いたスキルを振り返っておくか。



 獄炎の使者(アビス・ブレイズ)

 なんか黒い炎を地獄から呼び出して戦う。

 なんか体にまとうと身体能力が上がる。体を炎に変えて攻撃をよけられる。

 黒い炎を薄く張りめぐらせて感知とかできる。蜃気楼とか炎の分身も作れる。


 一発目にしては完璧だろ。ルビもかっこいい。



 氷天の徒花《コキュートス・ブルーム》

 なんか氷を地獄っぽい場所から呼び出す。氷で装備とか作る。

 相手を氷漬けにして封印する。氷の分身を作る。



 砂塵の防壁(フラガイル)

 なんかオートでガードしてくれる砂を呼び出す。

 ものすごい量の砂で相手を押しつぶす。なんか握りつぶしたりもできる。

 やばくなったら砂の狸が出てくる。


 ここのルビ、俺は最初「デザート・イージス」って書いてた。

 DSを取りに来たジジィが勝手に二重線を引いて、上に「フラガイル」って書いていった。意味は知らん。



 万雷の福音《ジャッジメント・ゴスペル》

 雷を大量に降らせる。自分の体を雷に変えられる。



 黒穴熊

 手から鋼鉄の爪が生えたりする。

 他のもだいたいあんな感じ。


 これはルビなし。漢字だけで十分強そうだからな。



 超人(オレ)

 身体能力十倍。


 シンプル・イズ・ベスト。



 全てを飼いならすもの(ソロモン)

 すべての動物を使役できる。

 条件は相手を倒すこと。倒し方は問わない。相手が「負けた」と感じたら、それがトリガー。



 饕餮(とうてつ)

 相手の肉を食うと、そいつのスキルを奪える。

 食った量で、どこまで再現できるかが変わる。毒とかも効かない。



 いつでも爺にあえる権利

 いつでもジジィにあえる。



 ……最後のはあれだ。


 ジジィがDSを取りに来るたびに「書いた?」「わしのおすすめ書いた?」ってうるさいから、根負けして書いた。


 正直、これは選ばない。メリットがない。


 本命はソロモンと饕餮だな。


 よし、あとは結果を待つだけだ。





 ◇





「結果発表じゃ」



 戻ってきたジジィは、紙の束を持っていた。



「おぉ! ついに来たか! よし、順番に頼む!」


「では一個ずつ、評議会のコメントを読んでから結果を言うぞ」


「コメントとかあんの?」


「あるぞ。まず“獄炎の使者(アビス・ブレイズ)”じゃが」


「うん」


「『設定が雑すぎる』『アビスは奈落。地獄と言いたいならヘルを使え』『名前が雑』『勝手にルビふるな』。以上の理由で却下じゃ」


「えぇ……」



 い、いや、まだ候補はある。一個目で落ちるのは想定内だ。



「次、“氷天の徒花《コキュートス・ブルーム》”。『一個目と設定がかぶりすぎ』『一個目もそうだけど、どうやって分身に色つけるんだよ』『花の要素はどこ行った』『やっぱり名前がダサい』。却下じゃ」


「いや、分身の色はさ、なんか魔法とかで……」


「魔法はそこまで万能じゃないぞい。次、“砂塵の防壁(フラガイル)”。『いくらなんでも我愛羅すぎる』『狸はなんなんだ』」


「狸はいいだろ、狸は」


「『かたい防壁と、もろい砂塵の対比で、フラガイルのルビをふったのはセンスがいい』。以上の理由で却下じゃ」


「そのルビふったの、ジジィだよな」


「そうじゃな。さすがわし、センスがいい」


「ほめられたの、そこだけなのに俺のじゃねぇし」



 ジジィは紙をぺらぺらめくって、途中から束ごとまとめて横にどけた。



「残りもまぁ、全部却下じゃな」


「は?」


「で、最後に“いつでも爺にあえる権利”じゃが……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。