↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
13/40

第13話 模擬戦

「女性?」


「男だよ」


「あ、失礼しました」



 声に出てた。


 いや、でも、出るって。兜の下から出てきたの、どう見てもきれいなお姉さんの顔なんだもん。



「別にいいよ。よく間違えられるし」



 エミリアさんは、気にした様子もなく笑った。


 鎧を脱いだら、思ってたよりずっと細い。この人がさっき、馬車で一人でしゃべり倒してたのか。


 それから、エミリアさんは片刃の剣を抜いた。



「さて、本気で行くよ」



 あ、目つきが変わった。


 さっきまでの、にぎやかな騎士さんはどこ行った。


 皇帝陛下とレコアさん、それに親父殿は、訓練場の端に並んで立っている。


 三人とも腕を組んで見ている。圧がすごい。


 見られてるだけで胃が痛い。


 とりあえず、まずは様子見だ。


 エミリアさんは、剣を下段に構えている。


 切っ先が地面すれすれで止まっていて、どこから来るのか全然読めない。


 試験のときの、あの空中を踏むやつ。


 ……いちいち長いな。仮に【空踏】と名付けよう。


 空踏は、不意打ちで出すのが一番効く。

 たぶん、カウンターで合わせるのがいい。


 ただ、こっちは実力を見せろと言われてる。


 半端な戦いはできない。


 だったら、新技のひとつでも見せるか。


 剣を上段に構えて、一息で間合いを詰める。


 そのまま振り下ろした。


 エミリアさんは、それをあっさりはじいた。


 手首を返して、袈裟懸けに斬り込んでくる。


 速っ。


 体勢を崩しながら、どうにか後ろに跳んでかわす。


 着地と同時に踏み込んで、右に薙ぐ。


 これも、簡単にいなされた。


 で、また斬り込まれる。


 受けて、はじかれて、また下がる。


 何合か打ち合って、わかった。


 この人、隙がない。


 しかも、一太刀ごとにちょっとずつ重くなっていく。


 去年の学生大会の優勝者って、伊達じゃないな。


 新技とか出してる余裕、まったくない。


 なんとかして隙を作らないと。


 ……一個、ジジィに教わったのがある。


 あれ、使ったら速攻で決めないといけなくなるから、あんまり好きじゃないんだけど。


 というか、ここでやったら怒られるかもしれない。


 皇帝陛下の訓練場だし。


 でも、全部使っていいって言ったのは向こうだ。


 エミリアさんが、俺の剣をはじいて後ろに下がった。


 距離が空く。


 今だ。


 全身にかけていた身体強化を、右足に全部集める。


 そして、全力で地面を踏み抜いた。





 ダアアアアアアアアアアアアアアアアアンンンンンンンンン!!!!!!





「うおっ!」


「なに!?」



 轟音といっしょに、地面に大きなひびが走った。


 エミリアさんの足元が、ぐらりと沈む。


 体勢が崩れた。


 その首めがけて、左腰から剣を振り抜く。


 エミリアさんは、ぎりぎりで剣を割り込ませてきた。


 この体勢から間に合うのかよ。


 受けられる。


 でも、それでいい。


 受けてくれれば、こっちの勝ち……



「エミリア、受けるな!」


「!?」



 エミリアさんは、とっさに体をのけぞらせた。


 俺の剣は、エミリアさんの鼻先をかすめて空を切った。


 ……え?


 エミリアさんも、目を丸くしてこっちを見ている。


 たぶん、俺も同じ顔をしてる。



「父上!」


「あ、すまぬ」



 すまぬじゃないよ。


 今、完全に決まってたんだけど。



「ユージーン、許してやってくれ。エミリアはゴネリルの一番弟子なんだ」


「いや、僕は息子なんですが……」



 皇帝陛下が、くくく、と笑う。


 一番弟子と息子だったら、息子の味方してくれよ。



「ところで、なぜ受けるな、と?」


「剣の軌道と鏡写しになる位置に、魔法の刃があった」



 親父殿が、さらっと言った。



「剣を受け止めれば、反対側から魔法の刃に斬られる。そういう寸法だな」


「ほう」


「ただ、問題点もある。消費する魔力が多めなこと。事前のマーキングが必要なこと」



 うっ。



「それと、私のように魔法を見られる者には仕掛けがばれる。避けてしまえば、簡単に対策もできる」



 うぅっ。


 全部バレてる。


 息子の新技を、皇帝陛下の前で一個ずつ丁寧に分解しないでほしい。



「だが、初見にはかなり刺さる」


「……その通りです、父上」



 最後に一応ほめてくれた。


 一応。



「なるほど。受けてたら、私が斬られてたわけか」



 エミリアさんが、自分の首をさすりながら言った。


 ごめんなさい。本気で行くって言われたので。



「面白い小技を見つけるな、ユージーン」



 皇帝陛下は、やけに楽しそうだった。



「さて、続きといこう」



 え、まだやるの?



「ヘクトール様。訓練場がここまでがたがたですと、決闘どころではありません。それに、ユージーンの魔力も切れかけのようですので、ここで終わらせるほうがよろしいかと」



 足元を見る。


 訓練場の地面は、俺が踏んだところを中心に、見事にばっきばきだった。


 これ、弁償とかないよな?



「ふむ、そうか。では、また今度決闘してもらうとしよう。今日のところは帰ってよいぞ」


「は、はい……ありがとうございました」



 また今度って言った。


 今、また今度って言ったよこの人。


 ふぅ。


 とりあえず、なんとかなった。


 魔力はすっからかん。足もがくがくで、もうくたくただ。


 早く帰って寝たい。


 帰りの馬車の中、親父殿はずっと黙っていた。


 怒ってるのか、考えごとをしてるのか。


 やっぱり、顔からは全然わからない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。