94.ホームルーム。
ホームルーム。
青山先生が入ってきて、みんなが静かになる。
青山先生は一枚の紙を持っていた。
「はい、みなさんおはようございます」
青山先生はその紙を見ながら、話を続けた。
「10月の末に、文化祭があります」
「おー!」
クラスメイトは「ついにきた!」と言う反応だ。
「クラスでの出し物を考えないといけませんので、今日の夕方のホームルームで話しましょうか」
生徒会で考える事が多かったので、自分たちが何をやるかということをあまり考えてなかった。
考えておかないといけないな。
「あ、そうだ。体育祭の時みたいに、実行委員を決めます」
すると彩葉が手を挙げた。
「やりまーす!」
「お、柳さんと、他にはいる?」
男子はみんな、顔を見合わせている。
芦屋が俺の方を向いて話しかけてきた。
「月城はどうなんだ?柳と仲良いし、良いんじゃね?」
「いや、俺は生徒会だ。実行委員になれないんだよ」
芦屋は少しむっとした顔をする。
「体制側の犬ってことか」
「いや、なんで反体制側なんだよお前ら」
どこが、面白いかわかんないけどこのやりとりは、クラスにウケたらしい。
「じゃあ俺やりますわー」
と芦屋は手を挙げていた。
「ありがとう。芦屋くん、それじゃあ柳さんと芦屋くんが実行委員でいきましょう」
「みんなで盛り上げていこうね」と付け加えて、先生はホームルームを終えた。
彩葉は俺と憂華の席に近づいてきた。
「わかんないことあったら聞くからね、憂華に相馬」
「うん、もちろんなんでも相談して」
「あぁ、まかせろ」
と2人で答えた。
芦屋は俺に近づいてきて。
「でも、やれる事少ないんだろ?先輩から結構自由度ないって聞いたぞ」
たしかに、去年の文化祭を知ってる先輩ならそう言うだろうな。
「今年は自由度を出して、やりたい事をやれるように頑張ったんだぞ俺たち」
憂華も振り向く。
「そうそう。だから、とりあえずやりたい事を出してね」
芦屋は「まじかよ!途端に楽しみになってきたぜ」とテンションを上げていた。
俺はふと、横の水野さんを見ると冷めた目をしていた。
彩葉と芦屋が実行委員って豊崎さんの事を考えたら嫌だろうな…。
でも、豊崎さんだって実行委員やりたい!ってタイプじゃないだろう。
と俺は心の中で思った。
夕方のホームルーム。
青山先生が概要を説明し始めた。
「今年の文化祭はーー」
やりたいものをやってもらう。その為にどうするかも記載して、提出する。
また、同学年で被れば共同でやる、もしくは変える。3年の優先権の説明なんかもしてくれた。
「3年だけずるいぜー」
そう、誰かが言っていた。
「3年は最後の文化祭だからね。許してあげてよ。あと、3年と合同でやるってちょっと気が引けない?」
「……まぁたしかに、気はすごい使いそう」
先生は出てくる意見を丸く収めてくれた。
その後、彩葉と芦屋は黒板の前に立ち、意見出しを行った。
「はいはい!じゃあやりたい事どんどん上げてってくれ!」
芦屋がクラスを見渡す。
「射的!」
「クレープ屋やりたい!」
「タピオカ屋!」
「お化け屋敷かな」
次々と声が上がっている。
彩葉が出てきた意見を黒板に書いていく。
・射的
・クレープ屋
・タピオカ屋
・お化け屋敷
・喫茶店
・輪投げ
「結構出るね」
憂華が俺の隣で、黒板を眺めながら呟いた。
「ああ、みんなやる気あるな」
きっと去年までなら、この段階で却下されていたものも多いだろう。
生徒会で話し合った甲斐があったのかもな。
「お化け屋敷がいい!」
「いや、準備大変じゃね?」
「でも一番文化祭っぽくない?」
「それならクレープのほうがよくね? 食べられるし」
「お前、文化祭を食べることだけで考えてない?」
「大事だろ、食は」
教室のあちこちから声が飛び交う。
彩葉は苦笑しながら黒板に書き足していった。
「まだ決めないからね。とりあえず候補を出していこう!」
「あと、ステージで何かやるのは?」
誰かがそう言うと、教室が一瞬静かになった。
「それはちょっと恥ずかしくない?」
「でも楽しそうじゃん」
「歌とか?」
「ダンスとか?」
そんな話まで出始める。
俺は黒板を眺めながら、少しだけ不思議な気分になった。
自分たちで決める。
たったそれだけのことなのに、思っていたより楽しい。
「おい、月城!なんか意見あるか?」
芦屋からそう聞かれたが、どれも良く見える。
「んー…やきそば屋とか?」
「お前、いっつも焼きそばじゃん!」
クラスメイトみんなが笑う。
俺と芦屋も笑っている。
こういうのが高校生の特別感なのかもな。
「よし、みんなの意見をまとめるぞ」
・お化け屋敷は大変そう
・クレープ屋、タピオカ屋、喫茶店系は被りそう
というところから、
「射的とかいいんじゃね?」
「輪投げも横でやっても良いかもな」
「縁日みたいな感じか?いいなそれ」
意見が徐々にまとまっていく。
「よし!じゃあ第一希望は射的+輪投げの縁日で決まりね!」
「いえーい」
「頑張ろうぜ」
みんなが拍手している。
俺はそれを嬉しく見ていた。
みんながやりたい事をやれるようになる文化祭。
いい形になったと思う。




