93.彩葉との電話
俺は家に帰り、学校の復習をしていた。
今日のは少し難しかった。
普段あまり家で勉強しない俺でも、教科書を開いた。
勉強をする時はイヤホンをつけ、環境音や音楽を聞いている。
集中できるし、外の音を遮断できる。
俺は、今日の授業内容を頭に思い浮かべ、タブレットに補足していく。
「なんだっけな…」
「なんだっけじゃないよ!」
「うぉおお!!!」
隣に葵が立っていて、死ぬほどびっくりした。
俺はイヤホンを外し、怒る。
「勝手に入ってくるなよ!」
妹はそれを聞いて、俺より怒る。
「いや!ノックしたし!入っていいか聞いたよ?」
イヤホンから軽快な音楽が漏れている。
全く聞こえなかったな…。
「いや…悪い。イヤホンしてたわ」
俺は謝る。
いや、返事なかったら入ってくるなよ、とは思ったけど。
「柳さんから連絡きてたよ。相馬返事ない!って」
「え?彩葉?」
俺はスマホを確認すると、柳から膨大な量のメッセージが来てた。
「うわぁ、すごい量だ」
「まぁ、私は伝えたからね」
葵は呆れながら、部屋を出て行った。
内容を全部確認するのはめんどうなので、スクロールして見ると、今やってるブルドラ対ファルコンズ戦の試合を見てるらしい。
俺は面倒なので彩葉に電話をかける。
『あ!!やっと気づいた!野球面白い展開だよ!』
「悪い、気づかなかった。見てんのか?」
『うん!相馬も見てよ』
と言われ、俺は一階に降りていく。
テレビでは妹が歌番組を見ながら、スマホを触っていた。
けれど、我が家では兄の方が強い。
俺はリモコンを手にして、野球の番組に変える。
状況は7回で4-2。ブルードラゴンズ2点リードしてる。
しかし、ファルコンズの攻撃で満塁。
大ピンチだった。
『見てる?すごいっしょ?』
「これやべーじゃん…」
ピッチャーが投球動作に入る。
あ、そのコースやばいぞ多分…。
俺は心の中でそう思った。
バッターがバットを振り抜き、球は外野を超え…。
『やった!!ホームランだ!!優貴いぇーい!』
電話の向こうではハイタッチして喜んでいる、柳姉弟。
「いや、まじかよ…」
俺はテレビを歌番組に戻し、妹に片手で「ありがと」とジェスチャー付きで謝っておいた。
俺はそのまま部屋に戻った。
「負けだよ、この流れは」
『最後までわかんないじゃん』
俺はそれを彩葉に言われる日が来ると思ってなかった。
「はは、そうだな」
俺は笑いながら自室の椅子に座る。
電話の奥から、彩葉の母親の声が聞こえてきた。
『彩葉、そろそろお風呂ねー?』と言われていた。
『はーい』
彩葉はそのまま電話を切らず、自室に向かったみたいだ。
『面白かったね!』
「あぁ、俺は面白くはなかったけどな?」
彩葉は楽しそうに笑ってた。
『そういえば何してたの?』
「俺は今日の復習してた。授業難しかったろ」
『うわ、真面目じゃん』
「楽しい話しよ」と言われたので。
俺は目下進めている事について話をした。
「文化祭そろそろ、準備始まるぞ」
『まじ!そういうのそういうの』
彩葉は待ってました。と言わんばかりの食いつきようだった。
「今、枠組みは決まって、先生に確認してもらってる所かな」
『どんな感じかなぁ文化祭って…』
「楽しみだよな」
『わかる!なんか高校生って感じするし』
「体育祭は、中学でもやるからな」
中学では文化祭というより、合唱祭だったりする。
高校の文化祭は、なんとなく『高校生らしいイベント』という感じがする。
『何しようかなぁ!タピオカ屋?クレープ屋?というか、飲食ってやれるの?』
「やる方向で動いている所です」
『やるじゃん!生徒会に君を送り込んだ甲斐があったぜ』
いや、彩葉に送り込まれてないけどな。
「まぁ、頑張ろうな」
『うん!頑張る!』
そんなやりとりをしていると、遠くから彩葉を呼ぶ声が聞こえてきた。
『やば!お風呂忘れてた!』
「行ってこい」
『またね!』
俺は通話を切ろうとした時。
『想像したらだめだからねー!!お風呂!』
と聞こえてきたけど、そのまま通話を切る事にした。
「…なにも聞こえなかったことにしよう」
俺は勉強に戻る事にした。
文化祭が始まろうとしている。
まだ、生徒会の中だけだが。
準備に追われる日々がくるのだろう。
俺は先のことより、目の前の課題に集中する事にした。




