92.見えてきた文化祭の形
月曜日の放課後、生徒会で文化祭の方針を決める。
授業が終わり、俺は立ち上がる。
「いやー終わったー!」
「疲れたー」
「パンケーキ行こー!」
俺はクラスメイトが話している様子を見る。
疲れた人、何も言わず帰ろうとしてる人、友達と遊びに行く人。
2年になればクラス替えがある。
このメンバーとは最初で最後の文化祭になるはずだ。
俺は鞄を持って歩き出す。生徒会室へ。
「まずは、今日の議題だ」
橘会長が、ホワイトボードに記載していく。
・自由度はどうするか、どこまでやるか
・特別棟、奥の教室への動線
・展示内容、企画の重複について
会長はここまで書いて、こちらを振り向く。
「どうすれば生徒がやりたいことを実現できるか」
「これを今日の議題とする。」と言って会長は椅子に座った。
「一高を見てきて、参考になった点も多いだろう」
「ただし、一高をそのまま真似する必要はない。うちの学校に合う形にする」
副会長が口火を切る。
「自由といってもなんでもやっていたわけじゃないと俺は思う。危険なことは許可するわけにはいかない」
俺は反論する。
「そこは一高がやってた方法が参考になると思います」
「やりたいことを聞いて、ダメかどうかを先に決めるんじゃなくて、どうすれば安全にできるかを一緒に考える」
橘会長が頷く。
「それだな」
「山村、書類にその欄を追加し、危険箇所、そしてどのように対策するかを記入する欄を作ってくれ」
「おっけー」
「原則禁止ではなく、安全対策を含めて実現方法を考えさせる」
「その対策に困ったら私たちが相談にのろう。それでもダメなら先生の判断だな」
原則禁止ではなく、安全対策を含めて実現方法を考える
これで決まりだ。
「次に、動線だ」
会長が全員を見渡し、天沢が話し出す。
「えっと…私は運営側、つまり生徒会で配置を決めるってのがいいと思います」
「人気の出そうなものを特別棟に置くとかできると思いますし」
「いい案だ」
佐藤先輩が今の話を聞いて、話す。
「それだと、本来盛り上がるはずのものが、注目されない。とならないか?」
「たしかに、そうですね…」
天沢は少し下を向いた。
俺は付け加える。
「その案、俺もいいと思いますけど、それだけだと弱い気がします」
「パンフレットの地図をわかりやすくする。というのもいいと思いますし、あとはスタンプラリーとかですかね」
濱田先輩が反応する。
「俺の妹もスタンプラリー好きだし、いいかもな」
俺は頷いて、続ける。
「特別棟に人が来ないのなら、来る理由を作ってあげるのがいいと思います」
里中さんも乗っかる。
「スタンプ全部集めたら、お菓子もらえるとかだと嬉しいね!」
確かに、特に小さな子供達は嬉しいだろう。
「よし、その方向でいこう」
橘会長はホワイトボードにメモをしていく。
「次だ。企画や内容が被るのはどうする?」
俺は去年の内容を確認する。
「去年は確かに被ってますよね… そりゃ手前のメイド喫茶に行ったら、奥のメイド喫茶も行こうとはならない気がしますけど」
「まぁ、だよな。いっその事被り無しみたいな感じにします?」
濱田先輩は言うが、本人もそれは無いなと思ってるみたいだった。
憂華が意見を出す。
「例えば上級生と下級生が被ったら、上級生を優先する」
「3年生は最後の文化祭だからな」
冴島先輩がボソッと言う。
「その代わり、下級生の企画を却下するだけにはしない。別の企画に変えるか、内容を変えて実現できないか、生徒会で相談する」
「同級生同士なら、合同にするのもありだと思います」
冴島副会長が反応する。
「たしかにそれいいかもな。俺達が下級生と一緒になっても、下級生が気を使うだろうし」
佐藤先輩が考えを言う。
「生徒会で集計時にカテゴリ分けするのがいいと思う。合同でやるか、別のに変えるか、それとも差別化するか」
「差別化?」
「メイド喫茶が被ったら、片方は猫耳喫茶でもいいなら変更する。とか」
「いや猫耳は佐藤が見たいだけだろ…」
「いや、人は興味ない」
会長がツッコミを入れて、少し場が和んだ。
会長がホワイトボードに最後の項目を書き込むと、ホワイトボードをバンバンと叩いた。
「よし、今年の文化祭の方針はこれでいく」
北高文化祭方針
・やりたいことを最初から否定しない
・安全に実現する方法を考える
・校内全体に人が流れる仕組みを作る
・企画が偏らないよう調整する
「ここから忙しくなるぞ!みんな!」
会長は笑顔だった。
周りを見るとみんなも笑っていた。
一高で見たものが、少しずつ自分たちの文化祭の形になっていく。
まだ何も始まっていない。
それでも、昨日までよりずっと具体的に、文化祭が見えてきた気がした。




