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普通の高校生の、特別な日常  作者: しゃー
3章 2学期編
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90.文化祭のヒントを探して

早くも週末、第一高校文化祭見学の日となった。


俺達は、文化祭の開始前に到着。

生徒会室へと招かれた。


「北高のみなさんようこそ」


生徒会室には1人。

生徒会長の梶原(かじわら)と名乗った。

髪を整えていて、清潔感のある好青年。そういう印象だ。


「お招きいただきありがとうございます。北高生徒会長の橘です」


「そんな堅苦しくなくていいですよ」


「他のメンバーは出払っていて、すいません…」と前置きした後、梶原会長は文化祭の説明を始めた。


「今日は一般開放日なので、生徒も親御さんも知り合い達も来ます。内容はーー」


クラスと文化部を中心に出し物がある。

飲食、展示、アトラクションなど様々あるが、被らないように調整しているとの事。


その後、渡されたパンフレットを確認する。

地図がわかりやすく書かれている。

ただ、書かれているのは企画名と場所だけで、具体的な内容まではわからない。


「まぁ、ゆっくり見ていってください」


そう締めくくり、梶原会長は説明を終わらせた。



俺は地図を見ながら考える。


例えば、

『2-A、クレープ屋』や『写真部、写真展示』

人を呼びたいなら、「いちご味やチョコ味もあります」とか、「生徒たちが見つけた日常の風景」とか、宣伝文句を添えるのが普通だと思う。


だけど、ここにはそれがない。

それなのに、どんなものがあるのか気になって、行ってみたくなる。


「とりあえず見て回ろうか」


橘会長の言葉に俺達は頷き、そのまま生徒会室を後にした。



招かれているとはいえ、『生徒会』の腕章をつけた他校の生徒が集まって歩いてるのは、注目を集めた。


「橘会長、バラバラで動きます?その方が効率もいいですし、感じ方も変わるかもしれません」


「そうだな、月城の言う通りだ」


2人1組に分けられ、俺は佐藤先輩と見て回ることになった。


「デートみたいですね、佐藤先輩」


「腕章つけてデートは、度胸がいるね」


「俺飲食系見てみたいんですけど、クレープ屋からでいいですか?」


「いいよ。……猫カフェ無いのかな」


「あるわけないじゃ無いですか…。でもメイド喫茶あるみたいですよ。そっちなら猫耳はいるかも」


「人間には興味ない…。けど、あとで見てみようか」


俺達はクレープ屋に向けて歩き出した。


クレープ屋は2-Aの教室を使用していた。

調理スペースと、飲食スペースが分けられている。


「いらっしゃいませー!」


制服にエプロンをつけた女子が対応してくれた。


「佐藤先輩、せっかくなんで食べましょうか」


「チョコクレープにする。月城くんは?」


「俺はいちごにしようかな」


「かしこまりましたー!」


俺たちは待っている間に観察する。


「クレープってホットプレートでできるんですね」


「ちょっと忙しそうだね」


生地を焼く人、巻く人、トッピングする人。それぞれに役割が分かれているけど、どうしても時間がかかっているみたいだ。


「何枚か作り置きしておけば対応できそうだね」


「たしかに」


普通のクレープ屋みたいに注文してから作る必要はなく、作り置きしておいた方がいいかもしれないな。


「おまたせしましたー!」


俺は女子からクレープを受け取る。


「ありがとうございます。これチョコです佐藤先輩」


「ありがと」


俺達は椅子に座り、2人でクレープを食べる。


「でも、思い出しますね。猫カフェ」


「夏休み挟んだから、すごく前な気がするけど。2ヶ月くらい前だもんね」


「またいきましょうね先輩」


「うん…行きたい」


先輩はチョコクレープを綺麗に食べながら、嬉しそうに微笑んでいた。



俺達は、それから展示系を見に行った。

写真部やクラスの展示、美術部も面白い作品が多くて楽しめた。


人はまばらだったが、どの部屋にも人はしっかりいた。



俺達は、最後の目的地。

メイド喫茶に来たけど、案の定大盛況だった。


メイド服を着た女子生徒、執事の格好をした男子生徒など、様々いた。


「相馬くん達も来たんだ」


憂華が先に来ていた。

山村先輩は羨ましそうにメイド達を見ていた。


「去年やれなかったからなぁ…メイド喫茶。今年はやりたいなぁ」


「メイド喫茶いいですね…見てみたいです」


俺は横目で佐藤先輩を見る。


「佐藤先輩もメイド服、似合うと思いますよ」


「……褒めてる?」


「褒めてます」


その話を聞いていた憂華が。


「私は?」


「多分似合いすぎて、憂華だけが人気になる未来が見えるからやめておけ」


「…それも褒めてるの?」


「褒めてる」


そんなやりとりをしながら観察していた。

火は使ってないみたいだけど、オムライスなど料理の提供はできている。

卵はすでに焼かれたものを使用しており、ライスに関してもすでに調理済みのものを使用している。


それから、飲み物は冷蔵庫から取り出したジュースだけど、しっかりと形になっている。


「いい感じだな、メイド喫茶も」


俺は感心というか、感動していた。

憂華も同じ気持ちだろう。


「そうだね、すごくしっかりしてる」


高校の文化祭ってこんな感じなんだ。

自分の高校より前に知ってしまい不思議な感覚だ。

それでも、いい経験ができたと思う。


「それより、相馬くんメイド服見過ぎじゃない?」


憂華が俺にジト目で言ってきた。


「いや、観察してるだけだぞ?」


「月城くんも男だねー!」


山村さんは俺の反応に嬉しそうに笑った。



俺達は見終わり、生徒会室に集まった。


「どうでしたか?うちの文化祭」


梶原会長と橘会長が話をしていた。


「すごく良かったです。ここまで幅広くできるんですね」


「生徒全員の希望は叶えられないですが、やりたい事をやってもらった方がモチベーションになるのでね」


俺は話を聞いて質問する。


「すいません。梶原会長、質問いいですか?」


「もちろん!なんでも聞いてください」


「どうして、こんなに自由にできるんですか?」


梶原は少し考えて、


「自由……ですか?」


「はい。メイド喫茶とか、クレープとか。北高だと、危ないからとか、管理が難しいからって理由で却下されそうなものも多いので」


「ああ、その悩み、よくわかります」


梶原会長は笑った。


「うちは、やっていいことを増やしたんじゃなくて、やっていい状態を作った。そんな感じですかね」


例えば、と梶原会長は説明する。


「たこ焼き屋をやりたいクラスがあって、そのクラスは火を使いたい。これだけではダメです」


俺は頷き、続けて話を聞く。


「調理器具は何にするか、食品調理の場所は?消火器はどこに置くか」


「何が危険なのかを考えるだけじゃなく、どうすれば安全にできるか。うちはそこまで考えてもらっているかな」


「なるほど…」


みんなが自由にやってるわけじゃない。

自由にやる為にはどうすればいいかを、みんなで考える。

ここが重要なのか。

俺はなんとなくわかった気がする。


「ありがとうございます。梶原会長」


「はは、助けになったのならなによりだよ」


それからもみんなからの質問は続いていた。



「北高文化祭がどんなものになるか、楽しみにしてるよ」


梶原会長は立ち上がり、みんなを送り出した。


「また、月曜日に。ここで決めるぞ」


橘生徒会長が話し、俺達はそれぞれ、帰宅することになった。


生徒会室を出たところで、俺と憂華は自然と並んで歩いていた。


「なんかすごかったね、文化祭」


「俺達1年は自分の文化祭見るより先に、他校の見ちゃったしな」


外の空気は、秋を感じさせるような冷たさと、太陽の暖かさがある。


俺はその空気を吸って、憂華を見る。


「絶対成功させような」


「うん!もちろん」


そう言って、2人で帰ろうとした時だった。

ふと目の前に、屋台の看板が目に入った。



『焼きそば屋』



「あ!あった!」


「すごい嬉しそうじゃん…」


俺は焼きそば屋の生徒に話しかけ、焼きそばを買う。


「嬉しい…あったわ」


俺は思わず、ほくほく顔になった。


「ふふ、面白いね相馬くんって」


「ん?なにが?」


「なんでもなーい!」


憂華は最近嬉しそうな顔をする事が増えた気がする。なんとなくだけど。


自分達の文化祭の糸口も見えた気がする。

月曜から忙しくなりそうだ。

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