85.【閑話】譲れぬ闘い
ついにこの日が来た。
いや、前からこの日が来ることを俺は予感していた。
彩葉と俺は、教室の中で向かい合っていた。
お互い腕を組み、譲る気はない。
「今年はファルコンズだよ!」
「いや、ドラゴンズが勝つ」
俺達には譲れないものがある。
…それは。
昼休み、俺達は最近応援してるもの。
つまり、推し活についての話をしていた時の事だ
事の発端は、憂華の何気ない一言から始まる。
「彩葉と相馬くんは、プロ野球どのチームのファンなの?」
俺はこの質問を避けていた。
ここは神奈川だし、なんとなく違うとは思っていたからだ。
「ん?神奈川ファルコンズだよ」
憂華は俺の方を見た。
彩葉は当然、同じチームだと思っているみたいだったが、忘れているだろう。
俺が愛知から来たということを。
「愛知ブルードラゴンズだよ俺」
「え!?そうなの!!?」
下を向いていた彩葉が、俺の方を急に見てきた。
「なんで言わなかったの!?」
「彩葉好きそうだったから、ファルコンズ」
「…そうか…。元々愛知だったね…相馬は。つまり…」
彩葉は立ち上がり、腕を組む。
「これは避けては通れない戦いみたいだね…!」
憂華は何か感じるものがあったらしく、
「まずいこと言った?」となっていた。
俺達のやりとりを、夕は面白そうに見ている。
「2人の推しは、相容れない。そういうことだね?」
そういうことだ。
「といっても、こっちのテレビ、ブルドラ戦あんまりやらないから見ないけどね」
憂華は俺たちを見て、気を利かせようと発言してきた。
「じゃあ2人でドームで野球見に行ったら?」
俺達は2人で笑う。
「いや、俺達2人で見に行ったら、席が…」
「そうそう、一塁側と三塁側で別々になっちゃうよ」
「そうなの?」
「考えてもみてくれ、俺がブルードラゴンズのユニフォームを着て、ファルコンズの中で応援してたらどうよ」
「それは…やばいね…」
彩葉はそれを聞いて身震いする。
「私なら怖くてできないよそんなこと」
夕は、疑問を浮かべて聞いてくる。
「じゃあ私達4人で行ったらどうなるの?」
彩葉は少し考えて答える。
「それなら2階席とか、ボックス席とか…確かにそういうのがあるわ」
「え、私普通にそれ行きたいんだけど」
夕に続いて憂華も乗り気になってきた。
「私も!プロ野球生で見たことないから、行きたい」
「だって、2人からそれぞれのチームの解説が入るんでしょ?めっちゃ面白そう」
いや、なんで俺達より楽しそうなんだよ…。
「面白そうだな確かに。チケット取って行ってみるか」
「そうだね、相馬。とりあえずその日まで休戦としよう」
休戦協定が結ばれた。
「いや、その日に喧嘩とか乱闘するとかやめてね…」
憂華が、ちょっとだけ心配そうに俺たちを見ていた。




