83.文化祭方針と課題
授業終了後、俺と憂華は生徒会室へ向かう。
「失礼します」
俺が入り、憂華が入る。
俺は佐藤先輩の隣に座り、鞄を置く。
先輩は、俺の鞄についている猫のキーホルダーを一瞬見て、俺の方に向く。
「お疲れ様です先輩」
「お疲れ様月城くん」
橘会長が全員揃った所で話を始める。
「今日は文化祭についてだが、先に資料を配る」
俺は配られた資料を見る。
『文化祭(仮)草案』
と記載されたものに、今年の文化祭の日程や、概要が書かれている。
「開催時期はまだ先、10月下旬だ。10月上旬から準備開始となるが、我々生徒会は、ある程度先に動く必要がある」
会長は説明と同時に、前回文化祭の課題点が書かれた紙を配布する。
俺は目を通す。
課題点はこうだ。
『奥まった教室、特別棟には人の入りが悪い。不公平を感じる』
『食べ物や飲み物系が少なく、展示やアトラクションメインが似たり寄ったり』
『自由度が低い、すぐに却下されるのでやりたいことができない』
「月城くん、君は課題点についてどう思う」
橘会長に聞かれ、俺は感じた事を話す。
「難しい問題ですね。一朝一夕でどうにかなる問題じゃない気がします。リスクが大きくてやらせられない事とやりたい事のバランス。人の動線についてはなんとかなりそうですけど…」
「そうだね、私も同意見だ」
会長は紙を置いて、全体に話す。
「去年の生徒会はどちらかといえば、規律。という雰囲気だったが、今年は自由にやってもらいたい」
会長は続ける。
「しかし、安全を考慮するとやれる事が少なくなる。これについて、自分なりに考えてみてほしい」
どうすればある程度自由が許されるか、どのくらいの範囲やってもいいのか。
その答えを出せる人は、俺を含めても少ないだろう。
「まぁ、私も悩んでいる所だ。だから、」
会長はさらに続け、
「隣町の第一高校にお願いし、文化祭を見学する事になった。時期は9月下旬開催だ」
「この問題解決の糸口が、そこにあるかはわからないが、みんな頼めるだろうか」
俺は自分なら、どんな事をするだろうか考える。
今の所思いつく解決策はない。
そもそも答えがあるのだろうか。
俺は悩みながら頷く事になった。
生徒会室を出ると、吹奏楽の音が聞こえる。
今まで意識してなかったけど、意識して聴いてみると、結構上手い。
いや、上手いなんて評価する事はできないが、学校を彩る音色なのは間違いなかった。
俺は生徒会室から出てきた佐藤先輩に、声をかける。
「さっきの話どう思いますか?」
「問題点の話?」
「はい」
「難しい問題だよね。とりあえず第一高校見てから考えてもいいと思うよ。去年向こうは結構やってたみたいだし」
「わかりました、そうしましょうか」
俺は佐藤先輩の意見を聞き、帰路に着く。
「…待って」
「はい…?」
俺は、佐藤先輩の方を振り向く。
「1人で抱え込まないで」
「いや、まだ何も…」
「そんな気がしただけ」
俺は考えを走らせていただけだが、そう見えたらしい。
佐藤先輩なりの優しさを受け取る。
「俺には佐藤先輩がついてますから、大丈夫ですよ」
佐藤先輩は少し驚いた表情をした。
「…それ本人に言う事じゃないじゃん」
俺達は笑い合い、今度こそ帰る事にした。




