81.初めてのアルバイト
昼休み、みんなにバイトの事を話した。
「え!相馬ロイポでバイトすんの?」
ロイヤリティポスト。略してロイポ。
いつも俺たちが使うファミレスより、ちょっと高いイメージがある。
「おう。面接まだだから、わかんないけどな」
彩葉は目を輝かせて食い付いてきた。
「私たちがよく行くの、駅前の安いとこだかんね。もし、行ったら割引してくれんの?」
「彩葉は割引ダメって聞いたよ」
「なんでだよ!」
そのやりとりを聞きながら、憂華が口を開く。
「でも、いきなりやることになったね」
「まぁ、遊ぶお金は欲しいしな。いい経験になると思って」
「確かにね、じゃあ土日は埋まっちゃう感じだ」
「まぁ…そこまで、シフト入れるかはわかんないけどね」
ここまで聞いていた夕が、心配そうに聞いてきた。
「葵ちゃんは大丈夫なの?親帰り遅いんでしょ?」
「葵に聞いたけど、何も困らないってさ」
俺の発言に、彩葉が即反応してきた。
「いやそれ!多分気を遣ってほしくなかったんでしょ」
「いや、気を遣うっていうか。心配だろ中学2年が家で1人って」
「まぁね、でもそれって相馬くんが気にする事なのかな」
憂華は俺のことを庇ってくれている。それは伝わっている。
だけど、
「たとえ親の都合だとしても、俺は兄だから、気にするべきだと思うけどな」
みんなは俺の話を聞いて黙ってしまった。
「まぁ、そんなに遅くならないつもりだし、ケーキとか持って帰るよ」
彩葉が手を上げた。
「私の分も!!」
「いや、彩葉はダメって言ってたよ」
「なんでだよ!!」
会話を聞いて、みんなが笑ってくれたので、変な空気にならずに済んで良かった。
放課後、面接がある。
昨日玲奈さんにLINEを送った後、すぐに返ってきた。
『店長に聞いたら、明日面接するってー 来れる?』
いや、いきなりだなと思ったし、履歴書なんてすぐ書けるかよ、と思った。
でも、意外とコンビニにも売っていてすぐ書き上げることができた。
ロイポには学校から20分くらい歩く距離にあるが、
まぁ、気にならないくらいだ。
俺は履歴書も持ったし、昨日、母さんに話しておいた。
『あんた、お小遣い足らないなら言ってよ?』
と言われたが、そういう事じゃ無いので、印鑑も貰っておいた。
俺はロイポの前に到着。
とりあえず、正面からでいいのかな…?
入店する事にした。
「いらっしゃいませー!」
店員さんは、若い女性で玲奈さんでは無い人だった。
「あの、面接に来た月城です」
「あ!佐伯さんが紹介してくれた子ね」
その人は、「こっちだよー」とバックヤードに案内してくれた。
「店長ー!面接の子来ました」
「おー来たか。待っててな」
奥から、男の人の声がした。
その後、すぐに姿を見せ、空いてるテーブル席で面接をする事になった。
「月城相馬です。よろしくお願いします」
「店長の斉藤です。こちらこそよろしく」
礼儀正しく、綺麗なお辞儀をしてくれた。
「まず初めに、バイトの理由を聞いてもいいかな」
理由か…。畏まって聞かれても、たいそうな理由は無いんだよな。
俺は素直に答える。
「自分で使うお金を自分で稼ぎたいと思ったのと、社会経験です。あとは…普通に遊ぶお金も欲しいです」
「ははは、正直だね」
店長は笑いながら、履歴書を見る。
「佐伯さんの推薦ってのもあって、あんまり心配はしてないけど、うち結構忙しいよ。大丈夫そう?」
「やってみないとわからないですけど、大丈夫だと思います」
「頼もしいね」
店長は履歴書から目を離した。
「あと、部活とかやってる?週どのくらい入れるか知りたくてね」
「部活はやってないですが、生徒会に入ってますので、週によっては入れない時があると思います。基本は土日と平日の夕方いけます」
「生徒会やってるんだ。1年だよね?」
「そうですね」
「なるほど。わかった。じゃあ採用通知はこちらから連絡するからよろしくね」
「ありがとうございました」
店長は席を立ち上がると同時に、玲奈さんが近づいてきた。
「店長ー、相馬くんいつからですかー?」
「佐伯さん…まだ、採用通知前だよ…」
「その子、私が教えるんでー」
「ん、わかった。いや、まだ採用してないからね?」
玲奈さんと店長は噛み合ってないやりとりをしていた。
「じゃあ気をつけてね、相馬くん。すぐ連絡するから」
「はい、ありがとうございました。玲奈さんもバイト頑張ってください」
「またねー」
玲奈さんは手を振って、俺を見送ってくれた。
家に帰った後、すぐに店長から連絡が来た。
『採用となりました』
玲奈さんの紹介があったことや、店長の口ぶりから落ちることは無いだろうと思っていた。
そうとうヤバいと思われない限り。
それからは制服の発注をするから、届いたらスタートになるとの事で、連絡待ちになった。
その後、バイトが終わった玲奈さんからも連絡が来た。
『よろしくねー 期待してるよ』
簡素な文章だったけど、玲奈さんらしい。
そう思った。
「期待…か」
期待されるのは苦手だ。
正直できないやつだと思ってくれていた方がいい。
その方が安心する。
『バイトお疲れ様です。できるだけ頑張ります』
とだけ返しておいた。
バイトは人生で初めての経験だ。
まぁ、海の家は手伝いみたいなのだったのでノーカウントとして。
楽しみであることは間違いなかった。




