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普通の高校生の、特別な日常  作者: しゃー
2章 夏休み編
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75/106

75.【EX】夏の海、その前に

時は少し遡り、私達が海に行く少し前。


みんなで買い物に行っていた。


なぜかというと。


『水着買いに行かない?』


という彩葉の発言から始まった。


「いや、高校生になって初めての海だし、新しい水着買っておきたいよね!」


ショッピングモールの2階。水着売り場に私達は歩いている。


「仮にも相馬は男だし、流石に去年の水着はまずいかなぁ…って思ってさ」


「言い訳に聞こえるよ、彩葉…!実はそっちが本命の理由でしょ?」


夕がニヤニヤしながら聞く。


「違う違う!」


そんな2人のやりとりを聞きながら、私は後ろを歩いていた。



でも、事の発端は私だった。

相馬くんを海に誘ったのは、私。


『海、一緒に来る?』


夏休み前に、そう声をかけた。

あの時は、予定のない相馬くんを可哀想に思ったし、来てほしいとも思った。


でも、水着…。

来てほしいと思うのと、水着姿を見られても平気だと思う事は別問題だ。


何が言いたいかというと、


私は、緊張してる。



彩葉や夕はわからないけど、私は男子と海に行ったことなんてない。


そして、相馬くんはきっと、茶化したり変な目で見たりしない。

それは私もわかってる。


頭ではわかってるのに、水着を見られると思うと、どうしても落ち着かなくなってしまう。



「ーー憂華、聞いてる?」


「あ、ごめん!なんだっけ?」


「だから、憂華はどんな水着にするの?って」


夕から大丈夫?と心配されてしまった。


「ん〜……布面積の大きいやつ?」


「なんだそれ!」


彩葉にツッコミを入れられてしまった。



私達は水着を売っているお店に到着した。


店内には色とりどりの水着が並んでいる。

どれにしようかな。

どれを着たらいいんだろうか。

2人はどのくらいのものを選ぶんだろうか。


それに、


派手な色にしたら、相馬くんはびっくりするんだろうか。



そんなことばかり考えてしまう。


いや、そんな事を考えてばかりじゃダメだ!

私は小さく首を振った。


私は私の着たい水着を着る!


手に取ったのは、真っ赤なビキニ。


「憂華、それにするの?」


「似合うと思うけど、攻めすぎじゃない?」


「ち、違うよ!見ただけ!」


私は慌てて元の場所に戻した。


これは長丁場になりそう。

私は覚悟した。



2人の意見を聞きながら、選ぶことした。

夕は青のフリルのついたビキニ。

彩葉は黒のオフショルタイプにしていた。


私は…黄色と白の柄のものにした。


「結構時間かかったね憂華」


「まぁね…ちょっと悩んじゃった」


「でも、いいの見つけれてよかったじゃん!」


「そうだね。これなら…なんとか」


これなら、海に行ける。


これなら相馬くんに見られてもーー。


私は何を考えてるんだろう。


別に相馬くんにどう思われてもいいはずなのに。

何度も頭に出てくる。


理由はわからない。

私はこれを着て、本当に海に行けるのだろうか。



ーーーー



当日。

ついに来てしまった。


私は何度目かの荷物確認をして、家を出る。


よくよく考えてみれば、相馬くんとは学校見学会でも会ってるし別に緊張するほどでもない。


ちょっと変なところを相馬くんに見られちゃったのはあるけど…。でも、大丈夫なはずだ。


せっかくの海なんだし、楽しまなきゃ勿体無い。


私は気持ちを切り替えて、前を向く。


「よし、楽しむぞ」


小さく呟いて、駅へと向かう。



ーーーー



私達は更衣室で、着替えをしている。


「これ、試着した時よりちょっときついかも」


彩葉は夏休みでご飯の食べすぎを気にしていた。


「まじ?あんま今日食べないようにしないとだね」


「焼きそばは1人1個までだよ」


と私は念押しした。



更衣室から出ると、相馬くんがパラソルを持って歩いてきていた。

私は1番に声をかけた。


「おまたせー!相馬くん」


「おう」


……感想とかないかな?

可愛いとか、似合ってるとか言ってもいいんだよ?



「これ、どこに置くよ」



ビーチパラソルを見ながら相馬くんは話をしてた。


そしてあんまりこっちを見てない。


なんでよ…。


せっかく選んだんだよ?



相馬くんはその後ビーチパラソルを建ててくれていた。

私と彩葉は、他にどんなものが貸し出されているかを見ることにする。


「水鉄砲とかあるじゃん」


「面白そうだけど、無くしそうで怖いね」


「無くしたら怖いね…やめとこ」


そろそろパラソルが建て終わりそうなので、相馬くんの様子を見に行く。



「ーでしょ?」


「ーーみたいでいいね」


「一言余計だね」


相馬くんと夕は2人で仲良さそうに笑いながら話してる。


夏休み前…こんな仲良かったかな。

私は夏休み前の2人との違いに違和感を覚えた。


「相馬くんと夕、前より仲良くなった?」


相馬くんは一瞬驚くような顔をしたが、すぐに元に戻った。


「そうか?あんまり変わってない気がするけど」


私はそう言われると、変わってないような気もしてきてしまった。

この話は終わり。


もう、なんか今日は変だな。

色々考えすぎちゃってる気がする。


思いっきり海で遊ぶ!

それだけを考えよう。


そう決めた。



ーーーー



私は午後、荷物番をしていた。


少し落ち着く時間ができて良かった。

そう思う。


考えても仕方ない事は考えない。


でも、何か心残りみたいなのがずっと残っている。

それが何なのか。私はわからない。


記念。記念みたいなのがほしい。ふと、そう思った。



そんな事を考えていると、相馬くんが近づいて話しかけてきた。


言うしかない…。


「変わるよ」


「…ねぇ、相馬くん。写真撮ろうよ」


「いいよ。2人で?」


「…うん」


私は、自分の体が相馬くんに当たらないように気をつけながら、スマホを構える。


私顔をひきつりすぎ…。


「笑って」


自分自身に言ったつもりだった。


「お、おう」


相馬くんが反応しちゃった。

それが面白くて、私は笑顔になった。



私はシャッターボタンを押す。



「ありがとう相馬くん」


撮ってくれた事への感謝を伝える。


「いいのか?俺と撮って」


いいの。これは記念にする。


「思い出は残しといたほうがいいでしょ?」



思い出として残した写真を、また見返す。


その時の私は、この写真を見て何を思うんだろう。

今はまだ分からない。


でも、きっとこの日のことは覚えている気がした。

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