74. 夏だ!海だ!水着だ!
夏だ!海だ!水着だ!
8月も中旬。
気温も最高潮となってきた時。
俺のテンションも最高潮!
……とはならないように、俺は家のソファでアイスを食べていた。
「お兄、明日海行くんでしょ?」
「ん、おう」
「そんなだらけてていいの?」
「今からソワソワしてたら、マジで楽しみにしてました感出ちゃうじゃん。だから俺はいつも通り」
いつも通りに徹するのだ。
俺は楽しみな気持ちを抑える事にする。
「いや、別に良くない?楽しみなんでしょ?」
「…海は、楽しみだ」
「……なんか、変な事考えてる?」
「いや、なんで今の受け答えでなんでそうなるんだ」
俺は妹の鋭さに毎回ヒヤヒヤする。
確かに、みんなの水着が見られるのは楽しみだ。
でも、向こうは俺に見せるために来るわけじゃない。
そこは勘違いしないようにしよう。
そう思っているだけだ。
明日は電車で、少し離れた海に向かう。
ビーチパラソルなどは借りられるみたいで、持って行く必要は無し。
準備は自分の水着くらいで良い。
「……俺はどこ見れば良いんだろうか」
「やっぱりじゃん、キモ…」
つぶやいた事を聞かれ、キモがられた。
翌日、天気は快晴。
俺達は駅前に集合し、電車で海まで行く事になっている。
俺と、天沢憂華、楠木夕、柳彩葉。
この4人が揃った所で電車に乗る。
不思議な4人だと今でも思う。
俺は高校から仲良くなった。しかも男子だ。
1年の夏、海に行くようになるまでになった。
まだ、4ヶ月、されど4ヶ月。
そんな事を考えて電車に揺られていた。
「彩葉、結構遊んでるじゃん」
「そんなことないよ!夕はどうなのよ」
夏休み、何した、どこ行ったなどを話している。
「ねぇ、相馬くん」
隣の憂華が声をかけてきた。
「ん?」
「相馬くんは、夏休みは何してたの?」
「…ゲームして、漫画読んで、映画を家で見たり?」
「休みを満喫してるね」
まぁ、満喫はしてるが、特に話すイベントは無い。
夕とコラボカフェに行ったのは大イベントだと思ってるが、俺から言っていいのかわからなくて言わなかった。
「憂華は旅行行ったんだよな?」
「北海道!楽しかったよ〜」
旅行か…。羨ましい事この上ない。
家族旅行は幼い頃に行った記憶があるくらいだ。
「それこそ満喫できて良かったな。リフレッシュできたか?」
「…うん!できたよ」
学校見学会では少し疲れた様子だった憂華も、もう快調になっている。
窓の外には海が見えてきた。
もうそろそろ着く。
楽しみだが、浮かれすぎてはいけないぞ。と、自分に念押しをした。
俺達は駅につき、電車を降りる。
少し歩くと波の音が聞こえ、海岸線が見えてくる。
「来たね、海!」
「人多いね〜!」
と彩葉と夕は砂浜に立ち、喜んでる。
「じゃあ、借り物任せるね?相馬くん」
「おう、まかせとけ」
みんなが更衣室へ向かうのを見送る。
俺はというと、中に水着を着ているためどこでも変身可能だ。
変身を完了させ、俺は貸し出し場へ向かう。
ビーチパラソルに、浮き輪なんかも貸してくれるみたいだ。
確かに浮き輪って空気入れるのとかしんどいしな。
俺はビーチパラソルにビーチボール、さらに浮き輪を借りて、更衣室の前に戻る。
俺は両手いっぱいに物を抱えながら歩いていると、前から水着の憂華、夕、彩葉が歩いてきた。
「おまたせー!相馬くん」
「おう」
……落ち着け俺。
「これ、どこに置くよ」
俺は抱えたビーチパラソルを見ながらみんなに聞く。
夕はビーチボールと浮き輪を受け取ってくれた。
「あの辺にしよっか」
と彩葉が指を差し、空いてるスペースに立てる事になった。
俺がパラソルを立てていると、夕が近づいてきた。
「どうよ」
「ん?」
俺は、青色の水着を着た夕を見て答える。
「やっぱ青似合うな」
「…でしょ?」
「戦士みたいでいいね」
「一言余計だね」
と、2人で笑う。
そんなやりとりをしていると、彩葉と憂華も近づいてきた。
「なんかイチャついてるじゃん」
「いや、普通だよ」
彩葉が俺に話しかけ、憂華が少し不思議そうに見てる。
「相馬くんと夕、前より仲良くなった?」
…まぁ、そうだろうな。夏休みずっとゲームしてるし。
「そうか?あんまり変わってない気がするけど」
そうかなぁ?と不思議そうに俺達を見ていた。
俺はビーチパラソルを設置し終わり、みんなの荷物をまとめる。
「相馬くん、本当にいいの?遊んでくるけど」
「ん?いいよ。俺荷物番だろ?」
「いや、まぁ、そのつもりだったけど…。また戻ってくるからその時変わろうね?」
と憂華に気を使われた。
みんなを見送り、俺は海、砂浜を見る。
ようやく周りが見れた気がした。
砂浜には人が多く、ビーチバレーしてる人や、走り回ってる子供もいる。
波の音を聞くのは久しぶりだ。
潮の匂いもする。
海に来たんだな。と実感した。
そんな事を思ってると、目の前にものすごくスタイルの良い人が通り過ぎた。
俺は思わず見てしまう。
その人はかき氷を2つ持っていて、友達か彼氏さんに持って行くんだろうと思い、目で追っていた。
「はい、1点減点」
目の前には彩葉がいた。
「うぉお!居たのかよ」
彩葉は水で濡れており、もうすでに楽しんでるみたいだった。
「私達が手を振っても気づかないし。おまけに近づいたら別の女の人見てるって。2点減点だよ今」
「いや、俺はかき氷を見てただけだ。違うぞ」
まったく…。といい、俺の隣に座って持参した飲み物を飲んでいる。
「楽しいか?彩葉」
「…ん?楽しいでしょ!海だよ?海は夏しか入れないんだから」
楽しまなきゃ損だよ!と、最もな事を言ってきた。
「私変わるから、行ってきてよ。憂華達待ってるよ」
「……いいのか?」
「ほら!」
と背中を叩いて俺を送り出した。
浅瀬でビーチバレーをしている憂華と夕。
俺は近づいていく。
「相馬パス!」
俺にボールが飛んできて、俺は憂華の方にパスをする。
「海に入るの小学生ぶりくらいだ」
「そうなんだ!相馬くん中学時代、来てると思ってた」
「そういう機会無かったな」
憂華から、トスが上がった夕は手を振りかぶった。
「おりゃ!」
と夕から強めなアタックがきて、俺は止めきれず頭に当たる。
それを見て、2人が笑う。そんな時間だった。
俺は遊んだ後、パラソルに戻ると彩葉が知らない2人組に声をかけられていた。
「君、可愛いね」
「友達と来てんの?一緒に遊ぼうよ」
おぉ、これがナンパか。
なんて思ってる場合じゃないな。と思い、介入する。
「すいません、その子俺の連れなんです」
ちっ、男いたのかよ…。という雰囲気で去っていった。
「ごめん、遅れた」
「ありがと」
「大丈夫だったか?」
「まぁ、ああいうの慣れてるし、1人でも平気だったよ」
「そっか。でも、大変だな…女の子って」
「?」
「興味ない男に声かけられるの嫌だろ」
「まぁね?でも、嬉しい時もあるよ」
もしかして、俺は邪魔してしまったのか?と考えてしまう。
「相手が私に好意を持ってくれてるなら、興味なくても嬉しいよ」
今みたいなのは、全く嬉しくないけど。と言う。
俺はその顔を見て、
「なんか、いろいろ経験してそうな顔してますね…彩葉さん」
と言ってみた。
「3点目減点だよ?」
「冗談です。すいません!」
と訂正した。
その後みんなが集まってきた。
そろそろ、お昼ご飯の時間か。
海の家から、焼きそばのソースの匂いがずっとしておりお腹が空いてきた。
「俺が買ってくるよ」
ビーチパラソルは決して大きくない。
俺と3人が入ったら、かなりぎゅうぎゅうになり、困るのは俺だ。
俺はみんなから注文を聞き、買いに行く。
焼きそば4つとたこ焼き1つ。あと、イカ焼き1つ。
イカ焼きは俺が食べたい。
店員さんに「青のりどうする?」と聞かれたので、
「無しでお願いします」と答えておいた。
俺は受け取り、みんなの元へ戻る。
「おまたせ」
俺はみんなに焼きそばを渡し、たこ焼き、それとイカ焼きを展開する。
「ありがとー!」
さてと、問題は俺の座る位置…。
ビーチパラソルはそこまで大きくないし、砂浜に敷いたシートは荷物と憂華達が占有している。
俺が悩んでいると、すす…と彩葉がスペースを開けてくれた。
「ここ、どうぞ」
「悪いな」
俺は3人と少しだけ、距離を空けて座る。
「なんか、海の家の焼きそばってザ・普通!って感じなんだけど美味しいよね」
と夕が言う。
「わかる。海を見ながら食べると、なんか美味しくなる気がする」
「たしかにね」
と彩葉と憂華も同調していた。
俺はそれを聞きながら、焼きそばを食べる。
初めて食べる海の家の焼きそばは少ししょっぱい。
でも、今まで食べた焼きそばの中で1番美味しい気がした。
「イカ焼きもらい!」
「私も!」
と彩葉と夕に持っていかれた。
「お、いいぞ。イカ焼き好きなんだよな俺」
「そうなんだ、美味しいよね。夏祭りのイカ焼きとかつい買っちゃうし」
憂華はいただきます、と言ってイカ焼きを食べていた。
俺は食べ終わり、みんなの様子を見る。
憂華は黄色。
夕は青。
彩葉は黒。
3人ともそれぞれのイメージカラーに近い色水着を選んでおり、かなり似合ってる。
みんな交代しながら、海で遊んではいたが、潜ったりとか泳いだりはしていない。
あくまでも腰くらいまで。
そんな感じだった。
彩葉がふと、思い出したように発言した。
「みんなで写真撮ってない!」
憂華や夕は箸を止め、たしかに!と言っていた。
「それ、俺も入る?」
「当たり前でしょ」
と言われながら、彩葉はスマホをインカメラにして、
みんなが映るように、向ける。
「相馬もっと寄って」
「うす」
俺は、距離感に気をつけながら写真を撮ったせいか、うまく笑えなかった気がした。
そんなこんなで、みんなが食べ終わり、休憩している。
「あ、この後日焼け止めとか塗り直そうかな」
「そうだね、待っててくれる?相馬くん」
「全然いいぞ、行ってくれ」
俺は3人が立ち上がるのを見送る。
俺は焼きそばが落ちているのに気づいて掃除しようと、シートに目を向けた。
3人のお尻の形がシートに残っていた。
「……」
心頭滅却。
俺は焼きそばを拾い、心を無にする事にした。
午後からも海に入ることになり、俺は浮き輪を使って、ぷかぷか海に浮いている。
空を見ながら、波に身を任せている。
「相馬泳げないんだよね?」
夕が浮き輪に乗った俺を覗き込んでくる。
「そうだよ。だから変な事しないでくれ」
「フリ?」
「全然違う」
俺は浮き輪からおり、水に入る。
足がつくくらいの位置でやれば問題ない。
「相馬は海でやりたい事ないのか?」
彩葉はビーチフラッグやろうぜ、みたいなテンションで聞いてくる。
「うーん…。砂浜で城作ってみたい」
「そういう感じ?」
「あれ楽しそうじゃね、達成感すごそう」
と言うと、
正直わかるよ。と言う夕。
海関係ないじゃん!と言う彩葉
2人の反応が真逆だったのが面白かった。
俺は海から砂浜を歩き、ビーチパラソルの下にいる憂華に声をかける。
「変わるよ」
「…ねぇ、相馬くん。写真撮ろうよ」
「いいよ。2人で?」
「…うん」
と言いながら、スマホをカバンから取り出した憂華は、海をバックにして構える。
俺はその隣に入り、ピースをする。
「笑って」
「お、おう。」
いや、2人で撮るのも、距離感が難しい。
俺は、自分の笑顔が上手くできているか不安だった。
写真を撮り終わり憂華は満足したみたいだ。
「ありがとう相馬くん」
「いいのか?俺と撮って」
「思い出は残しといたほうがいいでしょ?」
そう言い、駆け出した憂華の表情は見えなかった。
俺達はその後も海で遊び、良い時間になってきた。
「疲れたね…」
「疲れたー」
「結構遊んだね、相馬くんはどう?」
「俺も疲れてきた」
4人とも良い感じの疲労感を感じている。
それと満足感も感じていた。
俺達は、更衣室でシャワーを浴び、ベタついた海水を洗い落とした。
着替えを済ませた俺達は帰路に着く。
俺達は電車に乗って、空いている座席に座る。
夕、俺、彩葉、憂華という配置で座り、
両隣からは寝息が聞こえてくる。
夕と彩葉は寝ていて、俺にもたれかかっている。
俺は微動だにせず、前を向いている。
すると、憂華がこっそり声をかけてきた。
「役得だね」
俺は、困ってるよ?と表情で伝える。
それを見て、憂華は笑う。
「楽しかったね」
「また来ようね相馬くん」
俺は憂華にそう言われ、
「おう、また来よう」
とだけ返した。




