73.今日はゲームの外で
「うおおおファイアーボルト!」
「何!?何?キモいよ普通に」
いや、テンション上げすぎて妹に絡んでしまった。
俺は今日、人生初のコラボカフェデビュー。
俺が遊んでいるMMORPGと期間限定でコラボしているカフェでは、限定メニューやグッズが販売されている。
その中でも俺が狙っているのは、魔導士の紋章ピンバッジ。これはグッズ販売で、在庫が残っていれば購入できる。
それとは別に、コラボメニューを頼むとランダムでコースターがもらえたり、アクリルスタンドが付いてきたりするらしい。
正直、かなり楽しみだった。
今日の服装は魔導士っぽく、黒い印象にしてみた。
まぁ、黒い服を多く持ってるってのは別にして。
「今日、楠木先輩と行くんでしょ?」
「そうだよ」
「まじ、そのテンションで行かないほうがいいよ」
「いや、夕もこのテンションだよ絶対」
「そんな風には見えなかったけど…」
確かにゲームをやっている夕を知らないと、そういう印象にならないよな…。
「じゃあ行ってくるわ」
「ん、いってらー」
俺は玄関のドアを開け、ログインする。
そういう気持ちになっていた。
コラボカフェがあるのは東京。
電車で30分ほど揺られ、駅に到着。
駅前のモニュメントで集合してから行くことになっている。
時間はお昼時。
駅前はかなりの人がいた。
「おーい相馬!」
少し離れた所から、夕が近づいてきた。
「おう!」
「ごめん待たせたね」
「全然、さっき来た所だよ」
夕は青を基調としたファッションをしてきた。
前にショッピングモールで見た時より可愛いに寄っている感じだ。
「いい感じ?」
夕はスカートをちょっとだけ持ち上げて、服を主張してきた。
「いい感じ!戦士と青のイメージが合ってる」
でしょ〜!と言いながら夕はご機嫌だった。
「それじゃ行きましょっか」
「行こう。楽しみだ」
俺達は目的のカフェに向かう。
夕は俺の隣を歩きながら話しかけてくる。
「2人で出かけるのって、学校帰り以外で初だよね」
「そう言われれば、そうだな…」
学校帰り、ラーメン食べて、ガチャ回しに行ったりしたが、休みに2人で出かけるのは初めてだ。
「エスコートは任せたからね?」
「出たよ…。マジで勘弁してくれ…」
夕は笑顔で俺についてくる。
「戦士なんだから、前歩いてくれよ」
「それ今関係なくないー?」
と、冗談を言い合いながら歩いていると、目的のカフェに到着した。
看板には『コラボ実施中!』の文字があり、
見た目はおしゃれなカフェという感じだった。
「じゃあ入るぞ」
「うん!」
中に入ってみると、驚いたことはまず、音だ。
ゲーム内で流れている、ギルドの酒場の曲が流れていた。
「これ、酒場の曲じゃん」
「夕がずっと受付嬢見てたから、覚えてるわ」
そんなやりとりをしていたら、店員さんが気づいてくれた。
「いらっしゃいませ!」
「12時から予約した、月城です」
「月城様ですね。少々お待ちください」
と言われ、すぐ席に案内された。
中には人が多く、女性が多い印象だった。
「女の人多いんだな」
「こういうカフェは女子人気高いからねぇ」
夕はカバンを置き、メニューを見る。
頼むものはすでに決めてきているが、今一度メニューを見て確認する。
「ここで、グッズ系も頼むんだな」
「珍しいね、メニュー頼まないとグッズ貰えない感じなんだ」
俺は、ハンバーグプレートにコーラ。デザートにチーズタルト。
夕は、クリームパスタにレモンティー。デザートにイチゴパフェを頼んだ。
それと、2人は戦士と魔導士のピンバッジを注文した。
在庫があってよかった。
料理が到着し、俺達は驚く。
「ハンバーグ再現度高いな」
「パスタもすごい!ゲームからそのまま出てきたみたいに見えるね」
夕は来た料理に目を輝かせながら、写真を撮っている。
「ねぇ、2人でも撮る?」
「ん?いいよ」
夕はスマホをインカメラにして、料理が映るようにカメラをこちらに向けた。
「相馬くんも寄って」
俺も夕に顔を近づけて、写真を撮る。
画面には、料理と俺達2人が並んで映っていた。
こういうのは慣れないな。
「いい感じに撮れたか?」
「…いいじゃん」
「そう?後で送ってくれ」
「うん。わかった」
今日の記念だね。そう言って、夕は写真を保存した。
さて、料理が冷めてしまう前にいただこう。
俺達は手を合わせる。
「じゃあ、いただきまーす!」
「いただきます」
夕の挨拶に聞き、俺も続く。
2人ともコラボメニューを味わう。
ハンバーグは思ったより肉肉しく、胡椒が効いており美味しい。
食べながら、俺達は話をする。
「いや、でも相馬とはこんな感じの仲になると思ってなかったな」
「まぁそうだな。最初はラーメンだし」
夕は笑う。
「懐かしいことに感じるね」
「まだ、4ヶ月前のことだけどな?」
2人で、楽しくご飯を食べる。
やっている事は学校帰りと変わらない。
でも、休みにお出かけして、おしゃれして、コラボカフェに来る。
そのちょっとだけ特別なイベントに俺は嬉しい気持ちになった。
「よし、じゃあ開けるか…」
「うん…」
俺達は料理を頼んだ時に貰った、ブラインドのコースターを開封する。
夕は先に開け、中身を確認する。
「やった!戦士だ!」
「まじかよ…引き良すぎだろ…」
「これで相馬が魔導士だったら完璧だね」
頼む…。出てくれ…。
俺はブラインドを開け、中身を取り出す。
俺が取り出したのはーー。
俺達は会計を済ませた後、武器を持って写真撮影する。
店員さんが、スマホを持ってくれて撮影してくれる。
俺は長い杖。まだ見たことないがきっと強い武器なんだろう。
それに比べて夕は斧。
見た目は大きいが、かなり軽く作られている。
俺達はポーズを決めて写真を撮る。
「せっかくなら手に入れたコースターも」
「いいね」
夕は戦士のコースター。
俺は魔導士のコースターを手に持ち、写真を撮った。
俺達は店を出て、歩く。
「楽しかったね!」
「いや、思った以上だった。すごいなコラボカフェ」
「見て、さっきの写真」
と言い、俺と夕が武器を持った写真を見せてきた。
「相馬めっちゃ笑顔じゃん」
「いや、夕もニコニコじゃん…!」
と笑いながら、駅に向かう。
カフェにいた時間はそう長くはない。
だけど、物足りなさはなかった。
ゲームで遊んでいる延長線のような感覚。
俺はゲームで遊んでいる時と同じように笑っていた。
俺は不思議だなと思い、夕から送られてきた写真を見る。
2人とも満面の笑顔だった。




