69.夏休み、まだ見ぬ後輩
夏休み、制服を着て久しぶりの登校。
8月も始まったばかりでかなり暑い。
半袖の制服には『生徒会』の腕章。
この腕章をつけると、背筋が少し伸びる感じがする。
中学生達が来る前に、俺たちは集合し、先生から概要を聞く。
「ーーということなので、よろしくお願いします」
先生達と俺たち生徒会。
まとめて、校長先生からの話を聞く。
その後青山先生が近づいてきて話しかけてきた。
「月城くんも天沢さんも久しぶりね、元気?」
「お久しぶりです青山先生」
「青山先生もお元気そうでよかったです」
と2人して反応する。
「来てくれてありがとうね。中学生に聞かれたらバンバン答えちゃって」
できることなら、良い事を言ってね?と後付けされた。
「こういう時、教師だけじゃなくて、生徒もいると中学生達は雰囲気を掴みやすいからさ」
「任せてください、天沢になんでも聞いてもらいます」
「いや、相馬くんも答えてよね?」
と話をして、生徒会はメンバーは職員室を出る。
廊下で歩いている時、隣からボソッと
「憂華」
「わ、わかってるけど、先生の前で天沢って言わないと、変じゃないか?」
「変じゃないよ」
押しが強いな、最近の憂華は。
「そういえば、今日来る中学生達の中には憂華の後輩もいるんだよな?」
「そうだよ。知ってる子達から今日行きます!って連絡来てたし」
「すごいネットワークだな」
見学会は今日と明日。
親御さん同伴で見に来る事もできるし、生徒だけでも可能となっている。
「ちょっと緊張してる?」
憂華が俺の顔をちょっとだけ覗き込む。
「ん、まぁな。聞かれても答えられる自信ないしな」
「普通に答えたら良いと思うよ」
「普通って…。食堂はアジフライ定食が美味しいぞ?とかか?」
憂華は「ふふっ」と笑い、
「そういう方が中学生達にはウケるかもね」
何かを外したような気もしたが、憂華の笑いが取れたならいいか。そう思うことにした。
生徒会室に入ると、全員が各々の椅子に座った。
まだ、時間がある為、夏休みはどこ行ったとか、これからどこ行く。とかの話を始めた。
「佐藤先輩お久しぶりです」
「久しぶりだね。元気だった?」
「元気すぎて、この間図書館行きました」
「元気なのそれ?」
少しだけ笑顔を見せる佐藤先輩。
「少し日焼けした?」
佐藤先輩が俺の顔や腕をチラッと見て、聞いてきた。
たしかに、野球部のコーチをしていた時に、少し日焼けしたかもしれないと思っていた。
「よく気づきましたね」
「…ちょっとだけ違ったから」
そんな違わないと思うんだけどな。
そんな話をしていると、橘生徒会長が立ち上がる。
「よし、そろそろ時間だ。体育館に向かおう。」
「はい」
体育館に近づくと、ザワザワとした声が聞こえてくる。
「結構人いるんですね…」
「まぁ、見に来るだけならタダだからね」
橘生徒会長は語気を強める。
「受験って過酷だよね。友達が友達じゃなくなるくらい危険だと、私は思ってるよ」
受かった子と受からなかった子。
小さな亀裂かもしれないが、徐々にヒビ割れが大きくなっていく可能性もある。
会長も今年受験だ。何か思ってる事があるのかもしれない。俺はその後、何も言わなかった。
学校の説明と、生徒会長の挨拶がある。
俺達は体育館の端で立って、壇上を見る。
「生徒会長の橘です。まず、今日の学校見学会に来ていただいてありがとうございます。この学校はーー」
学校で学んだ事、楽しかった事なんかを話していく。
「来年、私はすでに学校を卒業しているが、君達の入学を楽しみにしている」
と締めて挨拶を終わらせた。
ここから教師と俺たち生徒会が各グループに分かれ、校舎を案内する。
その後、授業見学や、部活動見学、それぞれ自由に別れる流れとなる。
別れた後、俺達生徒会は実際の学生生活について話をしたりするのがメインの仕事だ。
授業は先生達がそれぞれの教室で、行っているので、各教室に誘導する。
「はい、じゃあGグループはこっちです」
俺はプラカードを掲げ、みんなにわかるようにする。
数人の中学生達が俺の元に集まってくる。
「教室から案内します。質問は歩きながらでもいいので、いつでもしてくださいね」
俺は人数を数え、歩き出す。
「ここが、1年の教室です。1クラス40人です。現在はーー」
俺は紙を見ながら、回る順番と時間を確認して、校舎の案内を続けた。
特に質問もなく、ただ説明しながら見て回るだけになった。
憂華だったら和気藹々やってるのかな…。
時間になり、体育館で再集合になり、自由見学時間となった。
俺達生徒会の仕事は一旦終わり。
後は各地に散って、聞かれた事を答えるだけだ。
教師達も、教室に向かう。
「憂華、どうだった?」
「結構質問多くて、大変だったね」
「まじかよ」
やっぱり天沢憂華はすごいぜ…。
中学生達が分散し、それぞれが見に行きたいところに行った所で俺達も分散する。
俺は部活動について聞かれてもわからない事が多いので、校舎を中心に回ることにしよう。
体育館から出ると、資料を眺めて辺りをキョロキョロしている子を見つける。
「何か、探してる?」
「……!」
「周り見てたから」
「あの…!ええと…」
背がかなり小さく、1人でいる女の子。
目が前髪で隠れており、表情はあまり窺う事ができないが、緊張や照れがあるのだろう。
「…すいません」
いきなり謝られてしまった。
俺が、どうしようか悩んでいると。
「……写真部…見たくて」
「おっけー、写真部ね… 部室どこだっけな」
写真部あるのは知ってるけど、場所まで把握してない。俺は紙を見て、場所を確認する。
「視聴覚準備室だ。こっちだね」
「……ありがとう…ございます」
写真部は視聴覚準備室が部室で、視聴覚室に写真が貼ってあるらしい。
俺達は特別教室棟の一角まで来た。
俺は一応、視聴覚準備室のドアをノックして開ける。
誰もいないが、写真が貼ってあったり、機材が置いてあったりする。
「ええと、名前はなんて言うの?」
「………白石 小夜です」
「オッケー白石さん。白石さんはカメラとか好きなの?」
「……はい…見るのが好きで、撮るのも…少々」
「へぇ、いいじゃん。俺もカメラ持ってるけど、綺麗に撮ろうとすると難しいよね」
「難しい…です。でも楽しい……。」
もじもじしてるが、楽しさが滲み出てる。
白石さんは声を出すのは恥ずかしいけど、ちゃんと自分を持ってる。そんな感じがした。
「ここが部室で、隣の視聴覚室でも展示があるみたいだから、見てみてね」
「……はい!」
目的地について一安心だ。
俺は一足先に視聴覚室に入る。
部員達が撮ったであろう、写真が貼られているが、そこには同じく生徒会の1人が立っていた。
「あれ、里中さんじゃん」
「月城くん!後ろの子は…?」
俺の後ろから、恥ずかしそうに入ってくる白石さん。
「この子は白石さん。写真部が見たいってさ」
白石さんは里中さんから視線を切り、貼られている写真に目を向ける。
「里中さんって写真部だっけ?」
「そだよー、って言っても写真撮って持ち寄るくらいだけどね」
俺は貼られている写真を観察することにする。
学校内だけじゃなく、線路や花、建物が撮られているものまである。
「これめっちゃ好きだ」
と俺が指を刺したとは、綺麗な紅葉の写真。
お寺が真ん中にあるが、紅葉とお寺のバランスと色合いがとても気に入った。
「……それ私が撮ったやつ」
「そ、そうなんだ」
いや、100枚くらいあるなかで里中さんが撮ったやつを当ててしまった。
すると、白石さんも口を開いた。
「…わかります。ボケ感と光の陰陽が綺麗」
「え!めっちゃ嬉しいんだけど…」
里中さんが俺に言われた時の100倍くらい喜んでるのは気にしないでおく。
「正直部活動ってより、それぞれが写真撮ったものを印刷したり、機材を借りて使ったりってのがメインだから。みんなで撮りに行くぞー!みたいな部活じゃないよ」
白石さんは小さく頷いて。
「そういうの…の方が…好きです」
いいね、良い感じじゃん。
俺は後の事を里中さんに任せて、部屋を出ようとすると。
「あ、あの……!」
「ん?」
「お名前……聞いてなかったです」
「あぁ、1年の月城 相馬です。来年入学したらよろしくね」
「はい……!よろしくお願いします!」
俺は、新しい出会いをした。
写真部希望の白石さんと、今まで知らなかった写真部里中さん。
今度里中さんにカメラの使い方聞こう……。
体育祭で葵を撮ったときブレブレだったからな…。




