67.遺産相続
今日はコンビニで、飲み物とお菓子を大量に買ってきた。
1日中、部屋に引き篭もる!
そう決めた。
観たかった映画や、漫画。
そして夜はゲームをする。
そういう日が俺には必要だ。
勝手にそう決めて、ゲーム機を起動させ、映画タブを開き物色する。
俺は洋画や海外ドラマなんかもたまに観たりする。
「なんか面白いもんありますかねー」
と呟き、物色する。
「アハハハ!」
隣の部屋から声がする。
俺が部屋に篭った理由。
それは、俺が決めた事じゃない。
妹が友達2人を家に連れてきており、
「絶対部屋から出てこないでね」
と言われたのだ。
いや、トイレとかどうすればいいんだよ…。
でも、男の人はいないみたいだし、妹も転校後友達がいるみたいで安心した。
俺は映画を決めた。これを見よう。
『怪獣王ドジラvsサメ人間』
再生ボタンを押した時、『コンコン』とノックの音がした。
「はい…」
ドアを開けるとお兄がいた。
「ごめん、お兄…ちょっと来てくんない?」
「え、部屋に?」
「そう、なんか友達2人が会いたいってうるさくて…」
「お、おう。いいけど」
俺は怪獣バトル映画を停止し、妹の部屋に向かう。
「お邪魔します…」
「あ!どうもーー!お兄さん!」
「雰囲気似てるね、葵ちゃんに」
気まずい…!JCと話すならもっとまともな格好とかしてから行くんだった…。
完全に部屋着だし… 絶賛後悔中だ。
妹が紹介をしてくれた。
テンションが高めな、
来栖 夢さん
茶色の髪色で長髪。イケイケな印象。
もう1人は、
藤牧 真里さん
髪をサイドテールにしており、来栖さんとは対照的に落ち着いた雰囲気だ。
「いつも、妹がお世話になってます」
「いえいえーー!お兄さんの話いつも葵ちゃんから聞いてまーー」
むぐぐぐ。と葵が口を腕で押さえていた。
「今、何言おうとしたかな?」
「ばんでもだいでず!」
「こちらこそ、葵さんと仲良くさせてもらってます」
と藤牧さんが丁寧に挨拶してくれた。
俺は一体何を話せばいいんだ…。葵の部屋の中で飲み物とお菓子が置いてあり、俺はその場違い感を味わっている。
「質問です!」
と来栖さんが聞いてくる。
「お兄さんは彼女っていますか?」
なんだその質問…。
「いや、いないけど…」
「じゃあ…好きなタイプは?」
次は藤牧さんが聞いてくる。
「ええと……」
と困っていると、葵が割り込んでくる。
「ま、待って!聞きたいことってそういうこと?」
「だって!体育祭の時すごいかっこよかったから!」
「わかる、ナイトだったよね」
俺そんなふうに見られていたのか…。
まぁ、キモいよね。みたいにならなくてよかった。
2人とはそんな感じで、妹の普段の学校生活や、家での雰囲気を軽く話したり、逆に俺の通ってる高校についての話を聞かれたりした。
そんな話をしているうちに、お昼になった。
「みんなお昼は?」
「近くのファミレスに行ってくるね」
と葵が言い、2人がそれなら、と言い俺を誘ってくるが。
「俺は辞めとくよ、3人で行ってきな」
といい俺は午後から予定があってね。と嘘をついた。
「それじゃあ行ってきます!」
と来栖さんが手を振って、みんなでお出かけに向かった。
「ふぅ……大変だった」
俺は、午後から予定があると言ってしまったので、どこで時間を潰そうか考えていた。
ゲームセンター、映画館…。
今から行ってもな。
そういえば、図書館が近くにあったな。
今日はこの後、本でも読もう。
屋外は暑いし、図書館で時間を潰すことにした。
図書館に入ると、エアコンが効いており
とても涼しかった。
受付で、利用証を発行してもらう。
「ありがとうございます」
始めてくる図書館を見渡す。
ずらりと並べられた本の棚。
ジャンルごとに分けられて並べられている。
人はそう多くはない。が、夏休み、そして夏のこの時期は休むために利用している人もいる為か、まばらにいる感じだ。
俺は歩き出して、文庫本のエリアを見る。
普段、図書委員で本を見てるとはいえ、並べ方やジャンル分け。置かれている本の種類が豊富だ。
今日はミステリーにしよう。
俺は一冊の本を手に取る。
内容はこうだ。
『豪邸の遺産相続』
豪邸の主人が突如として死亡。
遺産相続をする事になるが、相続人全員が遺産を狙っており、誰が犯人で相続するのは誰か。
そんなありがちだけど、先が気になる。
そんな内容だった。
決して分厚くはない。数時間あれば読める内容だろう。
ページを捲る音。
書き物をする音。
人の音。
俺は本を読み終えるまで、その物語と空間に没頭した。
「……くぅ!」
俺は本を閉じて、伸びをした。
1番怪しい人は犯人ではなく、1番優しそうな人が犯人だった。主人が帰ってきたところ、部屋で待っていた犯人が鈍器で殺害。
上手く証拠を隠すも、発見されて自供。
ありがちな話だが、王道ミステリを読めた感じがしてよかった。
俺は本を返し、帰路に着く。
俺は午後の予定なんて無かった。
ただ、なんとなく、嫌というほどではないが気まずさがあった。
なんでだろう。
妹の友達はいい子だったし、とても礼儀正しかった。
妹達の空間を邪魔するのが嫌だったのか。
それとも、いきなり心に踏み込まれた感じが嫌だったのか。
答えの出なさそうな事を考えながら家の玄関を開ける。
靴は妹のしかなく、もう友達は家に帰ってるみたいだ。
俺はそのまま、階段を登り自分の部屋に向かう。
扉を開ける。
そのには、
「お兄」
「うぉおお!!!」
鈍器!!…は持っていない、妹がいた。
「なに!?びっくりした」
ミステリを読んだからか、妹が部屋で待ってた状況に驚いてしまった。
「いや、俺の方がびっくりしたわ」
俺の部屋で座椅子に座っている妹を見ながら、ベッドに座る。
「俺の部屋に来るの珍しいな」
妹はちょっと申し訳なさそうに話し出す。
「ごめん、お兄。午後予定無かったんでしょ?」
「……いや、今日は友達に呼ばれてたからな」
妹は俺の買ってきたお菓子を勝手に食べながら、
「こんなお菓子買い込んで、怪獣の映画を途中で止めて、出て行ったのに?」
妹が鋭い探偵みたいになっている。
そりゃ嘘だってバレるよな。
まるで俺が犯人だ。
「まぁ…図書館に行ってた」
妹は少し、拗ねながら答える。
「別に、出て行く事はないんじゃないの…?」
「俺にも事情があったんだよ…」
そう言ってから、自分でも少し変な言葉だと思った。
事情。
そう言えるほど、はっきりした理由があったわけじゃない。
妹たちの邪魔をしたくなかったのかもしれないし、あの2人に踏み込まれるような感じが落ち着かなかったのかもしれない。
ただ、なんとなく居づらかった。
それだけだった。
「これは、葵にあげるよ」
と俺は袋いっぱいのお菓子を渡す。
俺のお菓子の遺産を受け取ったのは、探偵。もとい、妹の葵だった。




