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普通の高校生の、特別な日常  作者: しゃー
2章 夏休み編
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64/105

64.見えてきたもの

俺が練習を見始めてから数日。


今日も葵と、彩葉は来てくれていた。


岩本先生にノックを任されるようになり、俺はバットを握り久しぶりに球を打つ。

いろんな方向に打ち分け、選手達の動きを見る。


俺はこの数日で、なんとなく課題が見えてきた。


守備位置、サインプレー、打撃。

この辺りは悪くない。

というよりかなり良い感じだ。


でも。


俺はみんなを集め、また話をする。


「みんなに一個聞いていい?」


相馬がみんなを見る。


「9回裏。ノーアウト、ランナー2塁。1点取られたら負け。バッターは3番。みんなならどうする?」


「長打狙います」


「うん。ありだね」


「俺はバント」


「それもあり」


「じゃあ逆に、守備はどうする?」


少し考えてから、相沢が答える。


「……俺なら、バント警戒します。外野も前に出します」


「その理由は?」


「どのみち外野に飛んだら負けだから。だったら、1点を絶対に取らせない方を優先します」


「なるほど」


俺はみんなを見る。


「じゃあ、それでいこうか」


「え?いいんですか?」


「相沢がそう判断したなら、それを全員でやる。途中で『やっぱ違うかも』って思っても、自分たちで決めたことをやってみる」


「でも、間違ってたら……」


「間違ってるかもしれないな」


俺は笑う。


「だから野球は面白くて、怖いんだと思う」


「大事なのは、考えずに誰かの言ったことをやるんじゃなくて、自分たちで考えて決めること」


「練習も同じ。試合でどうするかを考えながらやってみて」


俺はもう一度みんなを見て、確認する。


「この判断に異論ある人いる?」


と周りを確認する。

全員が首を振り、同じ気持ちなのを確認する。


「相沢くん。厳しい事をいうみたいだけど、その判断をした君に責任がある」


「外れてもいい。でも、自分で決めたならその判断と、チームメイトを信じて最後までやってみて」


「はい!」


俺はグラウンドに戻っていくみんなを目で追う。

2週間しかいない俺から、1個でも何か得ようとしている。そんな感じがする。


岩本先生から声をかけられる。


「なかなか、手厳しいんだね相馬くんは」


「…まずかったですか?」


俺は少し申し訳なく思う。


「いやいや、そうじゃなくて。年々教師というのは思ってる事が言えなくなるもんなんだよ」


しがらみってやつだよ。と補足する。


「だから、君の意見は眩しい。自分までチームの一員だった事を思い出すよ」


と、岩本先生は帽子を被り直していた。



練習が終わり、岩本先生の周りにみんなが集まる。


「来週の練習試合だがーー」


約束の2週間。その最終日に練習試合をするとの事だった。

相手は俺が始めて優貴くんと出会った日に負けたチーム。印象はザ強豪校という雰囲気だった。



「お疲れー!」


「お疲れっしたー!」


とみんなに見送られ、俺は葵と一緒に帰る。


「なぁ、葵。本当に練習見て面白いか?」


試合じゃなく練習見ても、そんなに面白くないだろ…。と、俺は思っている。


「お兄は、今日言ってた事みたいなのを考えながら野球してたの?ずっと」


今日って…相手が何するかってやつか。


「そりゃ、考えてたな」


「毎回?」


「まぁ、毎回…というか、全員?」


葵はそのまま黙って歩いていた。


なんか変な事言ったかな…。葵はなんとなく言葉が少ない感じがして、俺でも真意が掴めない時がある。


「…ちゃんと、葵の事も考えてるぞ?」


「いや、そういうのじゃないから」


違ったらしい。


「マジで…すごいじゃん」


「え?」


「お兄は色々考えて、責任抱えて、いつも監督に怒られてて。ずっと頑張ってたのに……」


その先を葵は言わなかった。

流石の俺でもわかる。気を遣われた。中学で肩を壊さなければ今も続けていただろうな。

でもこれだけは葵に言いたい。


「俺は野球を辞めた事をもう気にしてないよ。そりゃ今も続けてたらとかさ、過去の話をするのはすごい嫌だったりするよ」


「いい経験だったよ。俺にとっての野球は」


だから、葵も気にしないでほしい。


「俺はもう、落ち込んでない」


むしろ、


「今、コーチができて楽しいぞ」


それだけを伝え、2人で一緒に家に帰った。

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