56.何気ない日々の、その先
そうこうしているうちに、テスト期間が訪れた。
やる事は中間テストと変わらない。
テスト範囲の確認をし、練習問題や暗記。
苦手な教科を中心に復習していく。
今回も柳に誘われ、一緒に勉強をしている。
「相馬、なんでこれこうなるの?」
「ん?それはだなーー」
俺は柳の教科書を覗き込み、問題を指差す。
「ここでこの公式を使ってーー」
「……」
「ーーとなるんだ。わかったか?」
「…ん!?」
「いや、聞いてたか?」
「聞いてた!聞いてたけど、もう1回!」
なんか、中間の時よりあまり集中出来ていないみたいだ。
「頼むぜ柳」
「わ、わかってる…」
柳とはそれからも勉強会をした。
いつもは騒がしくしてる印象だが、真面目な時はとても大人しい。
俺も捗った気がした。
期末テストは着々と進んでいった。
中間より当然難易度は上がっているが、そこまで苦戦したわけではない。
ただ、納得いかない事もある。
「おい、楠木。なんで俺より点数高いんだよ」
「ん?…相馬の勉強不足?」
俺は寝る前に少しだけゲームをしているが、楠木は毎日と言っていいほどフレンド欄で煌々とオンライン表示されていたはずだ。
「ゲーム結構やってたじゃん…」
「まぁね」
いや、才能怖い。
結果は採点終了後、タブレット通知される。
俺は学年50位くらいだ。
1クラス40人。4クラスなので、上位の方ではある。
楠木は俺より点数が高いので、もっと上だろう。
天沢はなんと3位だった。
恐るべし…。
俺はそんな人間と一緒に、生徒会をする事になったのか。
「天沢ってやっぱりすごいんだな」
「そんな事ないんだけどね」
天沢本人は本当にそんな事ない。と思っている反応だ。と思っていると天沢さ「そうだ!」と言い出す。
「お昼食堂行こうよ」
「ん、いいけど。何かあったか?」
「ううん、特には。というか、たまにはいいでしょ?」
俺は焼きそばパンを持って食堂に行くと、楠木と柳が既に席に着いていた。
「お、2人も一緒なのか」
そういうと楠木が目を細め。
「お邪魔でした???」
「いや、そういう意味じゃない」
俺は席に座り、みんなが食べ始めるのを見ながら、焼きそばパンを取り出す。
「よくそれで夕方まで持つね」
柳がうどんを食べながら聞いてきた。
「部活とかやってないからな。これ以上食べるとどんどん太るし…」
話をした途端、3人の動きがピタッと止まる。
「どういう意味?相馬くん」
「……つまり、私達も部活やってないから太るって事?」
「失礼だね全く!」
と天沢楠木柳トリオに「本当に失礼だね!」という感じで怒られた。
「ごめんなさい」
いや、自分の話なんだがな…。
俺は空気を入れ替える為に、話題を変える。
「そういえば、夏休み予定とかあるのか?」
「私達は海に行こーって話はしてるよ」
「憂華は家族旅行があるんだっけ?」
「そうそう。今回は国内だけどねーー」
なんて話をしている。
夏休みか…。
自分で話題を出しておいてあれだが、俺の夏休みの予定は生徒会の仕事と、柳から頼まれたコーチだな…。
まだ、受けるかどうかは迷っているが。
そろそろどうするか決めないとな。
「…で?肝心の相馬は?」
と、楠木は教えてよ。という感じで聞いてくる。
「いや、今の所生徒会でやる学校見学の予定しかない」
「それ以外は何するの?」
「未定です。というかそんなもんじゃないか?夏休み」
中学までは野球があったから、ほとんど練習や試合で潰れていたが、高校生で部活をやっていないと何していいかさっぱりわからない。
天沢が少し考えてから口を開く。
「海、一緒に来る?」
それはまずい気がする。
「いや、俺が参加するのはちょっと…」
「いいね、ビーチパラソルとか立ててもらおうよ」
と、柳が追い打ちをかける。
「荷物番頼めるしね」
と、楠木も乗り気だ。
「まぁ、そういうのならいいけど…」
じゃあ決まり!という感じで、参加する事になってしまった。
天沢達とは友達だと思ってるし、普通に出かけるのは全然良いが、海。という事は…水着…なんだろ?多分。いや、見てみたいという気持ちがないわけじゃない。
いや、ここは見ておいた方がいい気すらしてきた。
うん、俺はここで断れば一族の恥。よし!
という気持ちになっていると。
3人からジト目で見られていた。
特に言葉はなかったが、俺は焼きそばパンを食べきった。
1学期最後の生徒会。
生徒会では、学校見学会の詳細。
2日間行われるが、俺は両日とも出る事ができる。
橘生徒会長が説明するなか、俺は今この席に座っていることを不思議に思う。
この学校に入って、友達ができた。
そして、生徒会に入る。
中学の俺は野球一筋の人間だったが、あまりにも変化している自分の生活。
今まで俺ならきっと、
隣の席の楠木と仲良くならなかった。
図書委員で柳と打ち解けられなかった。
天沢と一緒に生徒会をやることはなかった。
そして、佐藤先輩と仲良くなる事はなかった。
かもしれない。
たた、俺が今、この席に座っているのは、偶然じゃないはずだ。
一つ一つは、大したことじゃないし、その時は、ただそうなっただけだと思っていた。
きっと全部の行動が繋がっていたんだろう。
俺は窓の外を見る。
もうすぐ、夏休みだ。
2学期は、どんな毎日になるんだろう。
少しだけ、楽しみだった。




