↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
普通の高校生の、特別な日常  作者: しゃー
1章 一学期編
PR
50/104

50.次は最後まで

俺はいつもより早く学校に着いた。


自分の教室に向かう前に、少しだけ寄り道をする。


2年生の教室。


普段ならまず来ない場所だ。


目的は1つ。


佐藤先輩の様子を見に来た。


廊下を歩きながら、2年生の教室をそれとなく覗いていると、見覚えのある顔があった。


「……あ」


「おはようございます」


生徒会の濱田先輩だった。


「おはよう、月城。どうした?」


「いや……」


俺が言葉を選んでいると、先輩は少しだけ笑った。


「佐藤なら、多分まだ来てないぞ」


「……え?」


先回りされた。


「そんなに分かりやすかったですか?」


「まぁな」


そんな話をしていると――



廊下の向こうから、佐藤先輩が歩いてきた。


いつもと変わらない歩き方。

いつもと変わらない表情。

まるで、何事もなかったみたいに。


俺は思わず先輩の方へ近づいた。


「おはようございます、先輩」


「ん。おはよう」


「体調はどうですか?」


「2日休んだから、大丈夫」


「……そうですか」


胸を撫で下ろす。


本当に良かった。


そう思ったところで、先輩が俺を見る。


「心配をかけて、ごめんね」


その言葉を聞いた瞬間。


俺は頭を下げた。


「……すみませんでした」


「え?」


頭を上げられない。


「俺が注意するべきでした」


言葉が勝手に出てくる。


「先輩が準備してる姿も見てました。当日もずっと頑張ってるのを見てました」


それなのに。


「何も気づけませんでした」


胸の奥が、また重くなる。


「近くにいた俺が……すみません」


しばらく沈黙があった。


そして、


「なんで、月城くんが謝るの?」


優しい声だった。


「顔、上げて」


ゆっくり顔を上げる。


佐藤先輩は、笑っていた。


「私の体調管理のミスだから。だから、月城くんが気にすることないよ」


先輩は少しだけ視線を落とす。


「でも……確かに、心残り」


体育祭の日を思い出しているのだろう。


「最後まで、やれなかったから」


そして、俺を見る。



「だから――」


少しだけ笑って。


「来年は一緒にやろうよ」


「最後まで」



その言葉を聞いた瞬間。


目の奥が熱くなった。


そして、笑って答えた。


「はい!」


声が少しだけ震えた。


「必ず」


それだけ言って、俺はその場を離れた。


廊下を歩く。


佐藤先輩が来年も生徒会にいるとは限らない。


来年、会長をやるのは佐藤先輩かもしれない。


濱田先輩かもしれない。


きっと、どちらになっても、2人は俺を誘ってくれる。


そしてきっと。


もう1度、俺に機会をくれる。


今年できなかったことを。

最後までやり切る機会を。

それだけで十分だった。


俺は溢れそうになる気持ちを、必死に堪えながら歩く。


体育祭は終わった。


でも、生徒会の1年はまだ終わっていない。


そして俺には、来年がある。


「……必ず」


小さく呟く。


「次は、最後まで」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。