49.【閑話】月城相馬の独白
俺は幼い頃からテレビで野球を見ていた。
テレビの前で応援して、好きな選手ができて、球場に野球を見に行って。
野球が好きになっていった。
そんな俺が小学生の頃、友達が野球クラブがあるから入らない?と言ってくれた。多分みんなにチラシを配っていたんだろうけど、俺にはまたとない誘いだった。
俺は野球クラブを見学し、そのまま入る事になった。
最初はキャッチボールさえままならなかったし、バットにボールが当たることの方が少なかった。
ポジションはキャッチャーをやる事になったが、ボールがまともに取れない情けないものだった。
それから野球を続けていくうちに、
楽しそう、面白そうと思っていたものは一変した。
練習、練習、練習。
監督やコーチに怒られ、辞めようと思ったことだってあった。俺がテレビで見ていた輝いてる世界。プロ野球は遠く、遠くのおとぎ話のような感覚になった。
そんな俺にも楽しくなってきた時期があった。
それは中学生からだ。
中学では自分もプレーに慣れてきた。
野球のルールも覚え、自分で考えて行動できるようになった。
もちろん、ミスをしたり、間違った采配をすれば怒られる事はあった。
でも、わけもわからず怒られているのではなく、自分の選択ミスや、間違ったプレーをして怒られているのがわかるのでいくらかマシだった。
その時の経験が俺の中に活きている。
野球は勝ったらピッチャーのおかげ、負けたらキャッチャーのせい。
最初はふざけんなと思っていた。
けど、次第に俺に根付いた。根付いてしまった考え方だ。
ピッチャーが怒っても、お前は怒るな。冷静でいろ。
お前は不貞腐れるな。最後まで状況を見ろ。
お前が負けだと思ったら、試合は負ける。
雰囲気に飲まれるな。最後まで勝つ気でいろ。
なんて理不尽なんだと、今でも思う。
でも、それは間違ってはいない。
要のポジションは常に損をする。
誰からも褒められることはない。
試合に勝っても完封したピッチャー。ホームランを打ったバッターが褒められる。
それでいい。
俺は試合に勝てればそれでいい。
俺が褒められなくても、自分が上手くできたと思えればそれでいい。
それが今の俺にも残っている。




