47.私じゃなくていいんだ
高校に入って初めての体育祭。
私は、正直楽しみだった。
体を動かすのは嫌いじゃないし、年に1回しかないイベントをみんなでやるのは特別な気持ちになる。
朝、職員室で確認が終わったあと、相馬くんの隣で歩く。
月城相馬くん。
入学後、高校の男子で初めて友達になった人。
夕や彩葉から何かと話を聞いて、気になってた人。
不思議と一緒に居ても変じゃないし、恋愛感情で見てこないから安心できる。
そんな感じの人だ。
「頼りにしてるよ」
「まかせろ天沢」
相馬くんは私に笑いかけ、教室に向かっている。
その横顔は、緊張もしているが、わくわくした少年のような印象だった。
佐藤先輩が熱中症になった。
すごく心配だった。
そして、私でカバーできる事はしよう。
そう考えた。
「ねぇ…相ーー」
相馬くんに声をかけようとしたけど、相馬くんは佐藤先輩の仕事を代わりに引き受けていた。
不安そうだったけど、彼ならできる。そう思った。
「橘会長」
「ん?どうした?」
「私にできる事はありますか?佐藤先輩の事で」
「ありがとうね。でも月城くんと冴島でカバーできるから、大丈夫よ」
私は何をすれば、どうすればいいんだろう。
考えたが、見守る事しか出来なかった。
体育祭が終わり、1-Aの打ち上げ。
私は恥ずかしさを覚えながら、夕や彩葉、また別の友達達とカラオケを歌ったり、ポテトを食べたりしてる。
ふと、相馬くんの顔が目に入る。
相馬くんは場を白けさせないように、笑ってる。
けど、すごく落ち込んでる。
佐藤先輩をすごく、心配してる。
そう思うと少しだけ胸がキュッと苦しくなった。
そんな事を考えていると、相馬くんが歌うらしい。
「ねぇ憂華!相馬歌うみたいよ」
「本当だね!どんなの歌うんだろ」
「夕と一緒にラブソング!ウケる」
彩葉は笑いながら手拍子をしてる。
私も同様に手拍子をする。
いいなぁ。
部屋を出て、みんなと話ながら店の外へと出る。
「あれ?彩葉、相馬くんまだ出てきてない?」
「ん?まだ中にいると思うよー」
一声かけてから帰りたいんだけどな。
私は再度、カラオケ店に入り、部屋に近づく。
「一番近くにいた人のことを、見落とした」
相馬くんが誰かと話してる。
「よく頑張ったと思うよ」
私は咄嗟に、通路の陰に隠れてしまった。
「……何してんの」
「慰めてる」
「子供じゃないから」
「今はいいでしょ」
相馬くんと夕が話してるだけ。
話してるだけだから。
きっと、なんでもない。私じゃなくていい。
相馬くんを慰めるのは私じゃなくていいんだ。
私は胸が締め付けられる感覚を覚えて、物陰から店の出口へと向かった。
私は完璧じゃない。
相馬くんがそう認めてくれた。
嬉しかった。
相馬くんは私の出来ない所は想像できないと言った。
ううん、本当に。
私はできない事だらけ。




