44.妹の体育祭予定
帰宅して、少し落ち着いたところでリビングへ向かう。
妹はソファに座ってスマホを弄っていた。
俺もその向かいに座る。
「我が妹の体育祭はいつなんだい?」
「……その喋り方何?」
「いつなんだい!?」
「……来週」
「来週?」
「お兄の体育祭の1週間後」
なるほど。
俺たちの体育祭が終わったと思ったら、今度は妹の体育祭か。
「じゃあ、お兄ちゃん見に行くからな」
「……」
「カメラ持って。妹の晴れ姿を」
「マジで来ないで……」
本当に来ないでという顔をしていた。
「いいじゃん! 親父も母さんも行くって言ってるのに、俺はダメなの?」
「…………」
妹が黙る。
そして、
「ぐぅ……」
何かに負けたような声を出した。
「勝手にして」
よし。
許可が下りた。
「まぁ、今は嫌かもしれないけどさ」
俺は笑いながら続ける。
「きっと後から見返したら、いい思い出になるって」
そう言って、妹の頭を撫でようと手を伸ばす。
「……」
妹が俺を見る。
その目は、
触ったら殺す。
そう語っていた。
「…………」
俺は静かに手を引っ込めた。
危ない。
兄妹といえど、越えてはいけない一線があるらしい。
「まぁ……そうかもね」
妹はそう呟いて、またスマホに視線を戻した。
その言葉が妙に嬉しかった。
「よし」
俺は立ち上がる。
俺の体育祭が終わったら、妹の体育祭を見る。
これも大仕事だ。
カメラの準備もしないとな。
……本人には嫌がられそうだけど。
そんなことを考えながら、俺はリビングを後にした。




