42.天沢の出来ないこと
放課後の生徒会。
生徒会室の扉開け、いつも通りの席に座る。
佐藤先輩いないな…と思ってると、生徒会長から声をかけられた。
「月城くん、佐藤は家の事情で今日は来ない」
「そうですか…」
「だから、今日は山村と天沢さんを手伝ってあげて」
「俺がですか?」
「まぁ、今ところ進捗は順調だけど、今後の為にね」
「…いやありがたいですけど、来年生徒会やるかわかんないですよ?」
またそんな事を言って… みたいな感じの反応をされる。
「…とりあえず今日は山村天沢ペアに合流で」
「わかりました」
俺は了承したあと、2人の席の近くへ行く。
「月城くんよろしくね〜」
山村先輩は髪の毛を横で一つに束ねており、3年生だとしてもさらに大人な印象を感じる。
あと、近寄ると香水?柔軟剤?の香りがする。
「よろしくお願いしますね」
俺が挨拶すると、山村先輩は手をひらひらと振った。
「そんなに固くなくていいよ〜 ひよりちゃんって呼んで」
「いや、流石にそれは…」
と俺が困っていると、隣で話を聞いていた天沢が声をかけてきた。
「相馬くんよろしくね。先輩も続きやりましょう」
そうね、と言いながら資料を机に展開。
山村先輩は資料を確認しながら、説明する。
「体育祭全体の枠組みはもうできたから、あとは細かい修正と、放送部用の原稿かな」
「天沢はこれから何するんだ?」
「開会式の原稿だね。といっても去年のがあるから、多少手直しする程度でいいけど」
「なるほど」
俺は資料を受け取り、内容を確認する。
体育祭の全体の種目に、全体の流れ、挨拶や順番などが記載されている。
まだ、本決まりでは無い為、仮ではあるが、わかりやすく出来ている。
「去年の原稿を見ながら今年の内容にしていけばいいからね〜。月城くんはこれをお願い。」
俺は山村先輩から指示された通りの作業を開始する。
ノートPCで原稿を作成しながら、俺は天沢の様子を確認する。
天沢は資料にびっしりとメモをしている。
手書きの字が綺麗だな…。
天沢は勉強もできて、友達も多い。部活はやってないが、運動ができないというわけではないはずだ。
おまけに字も綺麗。
出来ないことはあるのだろうか。
そう考えていた。
「なぁ天沢」
「ん?なに?」
「天沢って出来ないことあるのか?」
天沢はなにそれ?と笑いながら。
「いや、いっぱいあるよ」
「天沢ができないなら、この学校の誰もできないんじゃないか?」
「買い被りすぎだよ」
「そうか?」
俺は天沢にできない事があるのは想像できないな。と思いながら作業を続けた。
俺は山村先輩や天沢に聞きながら、作業を続けた。
天沢はというと黙々と作業を続け、与えられた原稿と資料作成を終わらせていた。
「山村先輩、これでどうですか?」
「ん?確認するね〜」
俺は原稿と資料を山村先輩に確認してもらい、今日の生徒会活動は終わった。
自然な流れで、天沢と一緒に帰る事になった。
「相馬くん今日ありがとね」
「ん?いや、全然問題ないよ」
実際、体育祭の大枠はすでにできてる。
俺が今日の作業に参加しても、しなくてもあまり、進捗に変化はない。
「そういえばね」
天沢少し下を見ながら話す。
表情はよくわからない。
「さっきの話。私は出来ないことだらけだよ」
「あんまり想像できないな」
天沢は少し黙って、声を少しだけ震わせながら話し始める。
「私は完璧じゃないよ」
俺は今日1日を通して思った事を口にする。
「ん…まぁそりゃそうだろ」
「……え?」
「え?完璧だと思ってた?」
「うんん… いや、そうじゃなくて…」
天沢は周りからの期待が高い。だからこそ求められるレベルも高くなる。
天沢はできて当たり前。天沢なら大丈夫。
天沢にまかせれば。と。
ただ、そのプレッシャーは本人にとってみれば、計り知れないものだろう。
「天沢が何を言いたいかはなんとなくわかる。俺は天沢に出来ないことは想像できない。でもだからって、完璧だとは思ってないから」
「間違えたり、わからない事があれば人に聞いたりしてもいいと思うぞ」
天沢だってまだ高1だ。わからないことだらけだろう。
「今日生徒会の資料見た時に思ったよ。あんまり人に聞いたり出来てないだろ?」
「……」
「じゃないと、あんなに資料にメモ書きしないしな」
「……ほんと、よく見てるね」
それから俺たちは何も話さなかった。
気まずいわけじゃない。
でも、話さないままでも、なんとなく良かった。
夕暮れ、2人の影は徐々に伸びていく。




