41.芦屋との昼休み
とある昼休み。
最近、芦屋と話すことが増えた。
サッカー部の芦屋。
昼休みや休み時間になると、自然と俺の席に来て話をするようになった。
今日の俺達は食堂へ向かい、適当に飯を食べながら話している。
「そういや月城って、中学まで野球やってたんだよな?」
「ああ」
以前、肩を壊して野球を辞めたことを話した。
あまり話したくない事ではあるが、嘘もつきたくないしな。
「サッカーなら肩使わないぞ?」
「そういう問題じゃないんだよ」
「まぁ、そうだよな」
俺は少し考えてから続ける。
「なんていうか……もう熱中する気持ちが湧かないんだよ」
「燃え尽きちまったか」
「多分な」
それ以上、芦屋は聞いてこなかった。
こういうところが、こいつのいいところだと思う。
変に気を遣っている感じもしない。
ただ、聞かない方がいいと思ったら聞かない。
そんな芦屋は、ゲームもスマホでできるライトなものくらいしかやらないらしい。
家では動画を見たり、スマホをいじったり。
どちらかというと外で遊ぶ方が好きらしく、サッカー部の友達と川で遊んだり、バーベキューをしたりしているそうだ。
「川で何するんだ?」
「泳いだり、飛び込んだりだな」
「…すごいなそれ」
俺にはあまり馴染みのない世界だった。
芦屋は損得とか、効率とか、そういうことをあまり考えずに楽しんでいる感じがする。
気に入った相手なら無条件で動けるタイプだ。
俺には、それが羨ましかった。
そんなことを考えていると、
「なぁ月城」
「ん?」
「彼女とか作らないの?」
「……」
急だな。
「芦屋は?」
「俺?」
芦屋は少し考えてから、
「…天沢さんとか、いいなとは思うけどな」
「まじかよ」
「なんだよ」
「いや、結構人気なんだよな天沢って」
「まぁ、倍率は高いよな…」
惚れている。
……とまではいかないだろう。
でも、気になっているのは間違いなさそうだった。
「月城は?」
「俺かぁ…」
「おう」
少し考えた。
もし、誰かと付き合ったら、今の周りとの関係はどうなる?
今までみたいに気軽に話せなくなるかもしれない。
放課後、一緒に帰ることも。
くだらないことで笑うことも。
そういうものが、全部変わってしまうかもしれない。
だから俺は、
「いや、今はいないかな」
正直に答えた。
すると芦屋は呆れたような顔をする。
「いや、おまえ贅沢者かよ」
「何が?」
「いや……まぁいいや」
そして、勝手に話を続ける。
「いや、高校生になったんだから彼女くらいほしいよなやっぱり」
「……まぁ、わからなくはないけどさ」
「この際だから言うけど、お前男子の中では結構羨ましがられてるんだぞ?」
「は?なんでだよ。彼女いないぞ?」
「月城、天沢達と仲良いだろ?」
天沢達というのは、天沢、楠木、柳のことだろう。
「まぁ、成り行き上な。」
「サッカー部の男子とか、なんで月城があの3人と仲良いんだって話題になってたぞ」
俺は思わず芦屋を見る。
「……」
「どうした?」
「いや、俺ってそういう軟派な印象か?」
軟派という言葉に少し笑いながら芦屋は答える。
「いや、お前と話してて思うけど、天沢達は普通に友達なんだろ?」
「おう、そのつもりだ」
「そういう恋愛感がないから、あの3人も警戒みたいなのしないんだろうな。と思ってさ。」
俺は芦屋から視線を外し、食堂をぐるりと見る。
その中に、知っている顔もちらほら見えた。
一緒に居ると楽しい。趣味や話が合う。そんな感覚だったが、周りからはそう見えてないのか…。
俺は高校生になって、周りからの見られ方みたいなものに少し疎いのかもしれない。
そう感じた。
ただ、今の関係を壊してまで、何かを変えたいとは思わない。
それくらいには、今の時間が大切に思う。




