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普通の高校生の、特別な日常  作者: しゃー
1章 一学期編
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4/105

4.2日目は女子と一緒に

2日目。


家で始業式に行く、妹を見送った。

妹は転校初日ということもあって、

頑張ってこい、でも無理はするなよ。とだけ伝える。


俺は昨日と同じ時間に家を出て、昨日と同じ電車に乗る。


まだ通学路には完全には慣れていない。


それでも、昨日よりは少しだけ周りを見る余裕があった。


駅から学校まで歩き、校門を抜ける。

校舎に入ると、まだ嗅ぎ慣れない匂いが廊下からする。


教室に入ると、昨日隣の席になった楠木さんがすでに席に座っていた。


「おはよー」


「おはよう」


昨日より少しだけ自然に挨拶を交わす。


それぞれ席につき、朝のホームルームが始まった。

部活動に入る手続き方法や、授業で使うタブレットの操作方法など、これからの学校生活についての話をしていた。


その後は授業が始まる。


国語、数学、英語。


高校生活2日目は、先生の紹介、授業の進め方、中学の復習のような内容がメインだった。

内容としてはそこまで難しくない。


淡々と授業を受けているうちに、昼休みになった。


俺は持ってきた焼きそばパンを食べ終えると、スマートフォンを取り出した。


昨夜少し進めたRPGの攻略動画を確認する。


まだ序盤だが、次の敵はどのレベルで倒せるか、レベル上げはどこがおすすめかなど、効率が上がることを調べている。


「それ、ゲーム?」


隣から声がした。


「ん?」


顔を上げる。


楠木が席に戻ってきたタイミングで、

俺のスマートフォンが見えたみたいだ。


「うん」


「それって、最近出たやつ?」


「そうそう」


「やってるんだ」


そう言い、椅子をこっちに向けた。

買ってきたのかパックのレモンティーを持ってる。


「この間買ったんだけど、楠木さんやってるの?」


「それ気になってたんだよね」


まだ買えてないんだ、と話す。


「ゲーム好きなんだよこれでも」


楠木は表情が明るし話す。


「戦闘はどんな感じ?」


「コマンド式だけど、スキルとか結構種類ある」


「そうなんだ」


「あと、仲間によって役割が結構違う」


「じゃあ、組み合わせ考えるタイプ?」


「そうそう」


「そういうの好きだよ」


俺はようやく、楠木という人間を観察する。


楠木 夕。

俺の隣の席で、黒髪で肩くらいまで伸ばしてある。

背は俺よりは低いが、女子の中では平均より高いくらい。

ボーイッシュさを感じる雰囲気だが、とても顔が整っており、可愛さもある。


そんな感じか。



「楠木は最近どんなやつやってるの?」


「んー、最近だとそうだな――」


そこから話が続いた。


好きなRPG。

今まで遊んだゲーム。

好きなシリーズ。

ストーリー重視か、戦闘重視か。


気づけば、昨日までほとんど話していなかった相手と、かなり普通に会話をしていた。

楠木の見た目からはゲームとかやるようには見えない。

人は見かけによらないを体現していた。


「月城くんって、結構ゲーム詳しいんだね」


「まあ、それなりに」


「そういうのやらそうな人かと思ってた」


「でも、俺もRPG以外あんまりやらないんだよね」


「そうなんだ、一緒だよ私と」


楠木が笑う。


そのまま話していると――


キーンコーンカーンコーン。


「……あ」


予鈴が鳴った。


「もう終わりか」


「早いね」


俺ははスマートフォンをしまい、楠木は椅子を戻して時計を見る。


楠木が何かを思い出したように口を開いた。


「そういえば、昨日ラーメン屋探してるって言ってたよね」


「ああ」


「おすすめあるよ」


「本当?」


「うん。駅の反対側にあるところ。」


「まじで?」


「豚骨系だけど」


「一番好きだね豚骨」


「一緒一緒」


やたら趣味がかぶる。


「私、そこ以外は詳しくないけど」


「行ってみるよ。ありがとう」


楠木は少し笑う。


「じゃあ、学校終わったら一緒に行こうよ」


「今日?いいのか?」


「もちろん じゃあ決まりね!」


その時、教室の前の扉が開いた。


「はい、席ついてー」


先生が入ってくる。


二人はそれぞれ前を向いた。


授業が始まる。

俺はは教科書を開きながら、さっきまでの会話を思い返していた。


昨日まで名前しか知らなかった。


それが今日は、ゲームの話をして、ラーメンの話までしている。


たった一日。


楠木は人と距離を詰めるのがうまいのだろう。


隣を見ると楠木は教科書を開いている。


目が合う。


楠木が小さく笑った。

俺も軽く笑い返した。



ーー放課後になり、クラスの空気は一気に緩む。


「夕ー!」


「楠木、一緒に帰ろ!」


後ろから女子生徒が何人か声をかけてきた。


「あ、ごめん。今日は予定あるから!」


楠木は振り返りながら答える。


「そっかー、また明日ね!夕」


「またねー」


とやり取りした後、楠木はこちらを見ていた。


俺は楠木に話しかける


「行くか?」


楠木はカバンを閉じ立ち上がる。


「行きましょ」


俺は楠木と目的地まで一緒に歩く。


「なんていうか、俺でいいのか?」


「ん?どういう意味?」


「いや、なんで誘ってくれたのかな?って」


楠木は何も気にしてなさそうに歩きながら。


「ラーメン屋探してたじゃん。それに…少なくとも一学期は同じ席でしょ?」


楠木は少し笑った。


「隣の席のよしみということで」


まあ仲が悪い人が隣にいるよりはいいよな。


そんな話をしていると店に着いた。

外観はそこまで新しくなく、老舗という雰囲気があるお店だった。


暖簾をくぐり、いらっしゃいませー と言われながら席に着く。

店の中は、人がいないわけではないが、混んでいるというほどでもない。


メニューを楠木に向ける。

「もう決まってたりする?おすすめとかある?」


と聞くと、メニューを突き返してきた。


「豚骨チャーシュー麺、ネギトッピングのチャーハンセットだね」


結構食うんだな…と思ったが、女子の基準が妹と母しかいない悲しい事情の為、何も言えなかった。


「…俺もそれにしよう」


すいません!と店員さんを呼び、二人でラーメンを注文。


ほどなくしてくる結構なボリューム感。


「いただきます」

「いただきます」


と声をそろえて食べ始める。


ほどなくして楠木が口を開く。


「愛知から来たの大変じゃない?ここ最近なんでしょ?」


麺を飲み込んでから答える。


「まぁね… でも知ってる人がいないってのも新鮮というか、悪くないよ」


「へぇ、そうだんだね」


楠木はチャーハンに手を付けている。


「私とか、何人かクラスに中学の同級生がいるからそんなに新鮮感無いんだよね」


「友達とご飯行ったりしなくてよかったのか?」


今日この時間を俺に費やしてよかったのか?と伝える。


「結構気にするんだね、それ。」


楠木はラーメンのスープをレンゲで飲みながら答える。


「同中の子とはいつでもご飯行けるけど、月城君と今日行かなかったら、一回も無かったかもしれないしね」


と恐ろしい事を言う。

まあでも実際そうだよな。と考える。

あと… と楠木が口を開く。


「RPGゲームやってる人に悪い人いないからね!」


と謎のRPG信仰を見せてきた。


「ありがとな」


と俺は楠木の優しさに感謝をする。


その後も映画は何を見ているか、

サブスクか映画館か。

ジャンルは何が好きか。

これからの学校生活のことも話をした。


そんなこんなで食べ終わり2日は店を出た。

一息ついて楠木は口を開く。


「味どうだった?」


俺は味を思い出しながら答える。


「最高でした…。行きつけになりそう」


「また来ようね。月城くん」


「おう、また来よう。楠木さん」


これからもよろしく。と二人で言い合い、

じゃあ、また明日学校で、と行って別れようとした時、楠木が踵を返した。


「連絡先」


「あぁ…」


俺は慣れない手つきでLINEの連絡先を出す。


入学してから2日目。

女子とのご飯。

初めての連絡先。


きっと何かが違えばこの展開にはならなかっただろう。


俺はスマホをポケットにしまい、帰路に就いた。

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