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普通の高校生の、特別な日常  作者: しゃー
1章 一学期編
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38/105

38.ショッピングモール2

ショッピングモールに入って、1階の店舗から順番に見て回る事になった。


話しながら歩く3人に、たまに会話に入る俺。

そんな感じだった。


柳が足を止め、店舗に近寄っていく。


「ね、雑貨屋行こ!」


「いいね」


「こういうところ見るの楽しいよねー!」


そう言って、柳が先頭に立って店へ入っていく。

天沢と楠木もその後をついていく。

俺も続く。


店内には、文房具や小物、アクセサリー、よく分からない便利グッズまで所狭しと並んでいた。


「わぁ、これ可愛い」


「いいね!これ」


「憂華、それ好きそう」


女子3人があっちへ行ったり、こっちへ行ったり。


俺は少し後ろからその様子を眺める。

こういう店に来ること自体、あまりない。


しばらくして、天沢が俺を呼んだ。


「相馬くん、これ」


「ん?」


天沢が持っているのは猫のキーホルダーだった。


「これ、相馬くんに似合いそう」


「なんで俺が猫?」


「なんとなく?」


「なんとなくかよ!」


「でも可愛くない?」


確かに、悪くない。


俺はキーホルダーを眺める。

別に俺は猫が特別好きというわけではない。


でも――


「相馬そういうのつけてそうじゃん!」


柳が横から言ってくる。


「そうか?」


「なんかストレス感じたら猫吸って、ストレス発散してそうな感じだし」


「いや、俺の印象やばいな…」


「学校のカバンとかにつけなよ」


「……まぁ」


俺は猫のキーホルダーを持ち、よく見る。

いや、パッと見はそうでもないけも、よく見ると可愛さが滲み出てる。


「じゃあ、これにする」


猫のキーホルダーを持ち、レジへ向かう。

自分から欲しくて買ったわけではない。完全に流れだからな。



雑貨屋を出ると、今度は昼飯を食べることになった。


向かったのは、ショッピングモール内のパスタ屋。

4人で席につき、メニューを開く。


「俺、これにする」


「ジェノベーゼ?」


「うん」


「じゃあ私はカルボナーラ」


天沢が決める。


「私はきのこの和風パスタ」


楠木が続く。


「私はミートソース!」


柳も決めた。


注文を終え、料理を待つ。


「相馬くんって、麺ならなんでも好きそう」


天沢がふと口にした。


「まぁ、好きだな」


「ラーメンも?」


「好き」


「パスタも?」


「好き」


「うどんは?」


「好き」


「そばは?」


「好き」


「そういえば昼休みも焼きそばパンだよね?」


楠木が言った。


「確かに」


柳も笑う。


「麺なら何でもいいの?」


「いや、焼きそばパンはちょっと違うだろ」


「でも焼きそばじゃん」


「パンだろ」


そんなやりとりを聞きながら、みんなが笑う。


「……まぁ、確かによく焼きそばパン食べてるけど、俺の家の最寄駅にパン屋があってそこで買ってるんだよね」


「相馬くんの最寄駅のパン屋ってcitrus(シトラス)?」


天沢が食い気味に聞いてきた。


「そうだっけか…?確かそんな名前だったな」


「え!有名なところだよ!というかベーグルとかクロワッサンが人気なはずだけど」


有名だったのか…。知らなかったな。

確かに混んでるとは思ったが、熟練のパートさんが袋詰めと会計をしている為、尋常じゃない速度で客を捌いてるんだよな。


「いや…安くて量多いからな焼きそばパン…」


「絶対ベーグル食べたほうがいいよ!」


天沢が笑う。


「…でも、相馬くんらしいね!」


「そうか?」


そんな話をしているうちに、料理が運ばれてきた。


それぞれのパスタを前にして、


「いただきます」


と4人で食べ始める。


「おいしい!」


柳がミートソースを食べながら笑う。


「うん。結構当たりだな」


俺もジェノベーゼを口にする。

香りもいい。味もいい。素晴らしい…。


パスタを味わい、他愛のない話をしながら、昼食を終えた。



次に向かったのは服屋だった。


「ちょっと見たい!」


柳が店内へ入っていく。


俺たちも続く。


女子3人は服を見始めた。


「これどう?」


「可愛いじゃん!」


「こっちは?」


「憂華、それ似合いそう」


「ほんと?」


3人であれこれ話している。


俺は少し離れたところから眺める。


やっぱり、こういうのはよく分からない。


自分の服はマネキン買いをしたり、オーソドックスなものを着回したりしている為、ファッションには疎い方だと思う。

自分が着たい服より、自分に似合う服を選ぶ派だ。


「相馬くん」


「ん?」


天沢が服を一着持ってきた。


「これ、どう?」


「俺に聞くの?」


「うん」


「……いいんじゃないか?」


「それだけ?」


「似合うと思うよ」


「ほんと?」


「うん」


天沢が少し嬉しそうに笑った。


「じゃあ候補に入れようかな」


「俺の意見でいいのか?」


「いいんだよ」


「そうか」


その会話を聞いていた柳が、


「じゃあ私も!」


と服を持ってくる。


「これ!」


「……いいと思うぞ」


「可愛い?」


「可愛いんじゃない?」


「やった!」


柳はやたら可愛いを求めてくるな…。

言い慣れてない言葉は少し気恥ずかしさを感じる。


楠木も服を一着持ってきた。


「じゃあ私も」


「お前までか」


「どう?」


「似合うと思うよ」


「そっか」


3人それぞれに聞かれて、俺はなんとなく分かった。

俺は今日、服屋で3人の買い物に付き合う係らしい。


それからしばらく店内を見て回り、何着か試着したり、買うか悩んだりした。


結局、柳と天沢が服を一着ずつ買った。


楠木は、


「今日は見るだけ!」


と言って何も買わなかった。



そして最後。


「疲れたー」


柳が言う。


「お茶しようよ」


「賛成」


楠木も即答する。


俺たちはショッピングモール内のカフェへ向かった。


席に座る。


俺はコーヒー。

柳はパフェ。

天沢は紅茶。

楠木はケーキセット。


「……なんか俺だけ普通だな」


「相馬くんはそういう感じでしょ」


天沢が笑う。


「どういう感じだよ」


「落ち着いてる感じ?」


「そうかな…」


みんなで、席に深く座り、落ち着く。


「でも今日は楽しかったね」


柳がパフェを食べながら言う。


「うん」


楠木も頷く。


「また来ようよ」


「いいね」


俺も素直に答える。


こうしてみると――

朝は少し不安だった。


男1人、女3人。


俺だけ浮くんじゃないかと思っていた。

けれど、実際に一緒に過ごしてみると、そんなことはなかった。

これも、みんなの気遣いや、何気ない動きに助けられているんだろう。


雑貨屋で騒いで。

パスタを食べて。

服を見て。

カフェで休憩している。


特別なことなんて、何もない。

ただ、それが妙に楽しかった。


「相馬くん」


「ん?」


「今日、誘ってよかった」


楠木がそう言った。


「俺も誘ってもらってよかったよ」


「ほんと?」


「うん」


柳が笑う。


「じゃあ次はどこ行く?」


「気が早いな」


「いいじゃん!」


天沢も、


「次は映画とか?」


「それもいいな」


そんな話をしながら、俺たちはしばらくカフェで時間を過ごした。


気づけば、外は少し夕方の色になっていた。

高校に入って、まだ2ヶ月。

俺の日常は少しずつ変わっている。


交友関係に図書委員、生徒会。


そして――


こうやって休日に一緒に遊ぶ友達。


中学までの俺なら、こんな休日を過ごすなんて想像もしなかった。


かなり楽しかったな。


そんなことを思いながら、俺は残ったコーヒーを飲み干した。

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