36.男友達と楠木柳コンビ
とある昼休み。
俺は教室で、高校に入って初めてできたかもしれない男友達――芦屋と飯を食っていた。
まぁ、俺はいつも通り焼きそばパンだが。
「なぁ、月城」
「ん?」
「佐藤先輩……綺麗だよなぁ」
芦屋が弁当を食べながら、しみじみと言う。
「まぁ……ビジュアルは強いよな」
「いいなぁ。あんな先輩と一緒に仕事できて」
「いや、結構地雷多そうで、俺はいつもヒヤヒヤしながら話してるけどな」
「そうなのか?」
「そうだよ」
俺がそう答えると、芦屋は少し考えるように箸を止めた。
芦屋は、相手のことを考えて行動するタイプだ。
ただ、考えてから動くというより――
とりあえず行ってみようぜ!
みたいな感じで、先に動く。
考える力と行動力を両方持っている。
いわゆるハイブリッド型の、いいやつだ。
そんな芦屋は、体育倉庫で俺と佐藤先輩が作業しているところを見て、俺のことを「思ったよりちゃんとしてるじゃん」と判断したらしい。
そして最近話しかけられるようになり、昼ご飯を食べるようにまでなった。
いや。
俺は普段からちゃんとしてるんだけどな。
そんなことを考えていると、芦屋がまた口を開いた。
「でもさ」
「ん?」
「普通の時の佐藤先輩と月城って、月とすっぽんなんだけど」
「月とすっぽん……?」
「でも、生徒会で動いてる二人を見るとさ」
芦屋は少し考えてから言った。
「犯人を追ってるホームズとワトソンみたいなんだよな」
「ホームズとワトソン……」
俺たち、そんな風に見えてたのか。
確かに佐藤先輩は頭の回転が速いし、俺は言われたことをやりながら補佐している。
そう考えると、なんとなく分からなくもない。
「まぁ、仕事はやりやすいよ」
「へぇ」
そんな話をしながら飯を食べていると――
俺たちの机の周りに、いつの間にか人が立っていた。
「……なんだ?」
顔を上げる。
柳と楠木だった。
「なんだ?じゃないよ!」
柳が声を上げる。
「え?」
「最近、相馬生徒会ばっかりじゃん!」
「そうか?」
「そうだよ!」
すると楠木が、顔に手を当てて悲しそうな顔を作った。
「私たちって……遊びだったの?」
「いや!」
思わず声が大きくなる。
「人聞きが悪すぎる! もう少しボリュームと内容を落としてくれ!」
「だってー」
楠木は自分の席の椅子を引き、こちらを向いて座る。
柳も俺の机に腰を掛けた。
そして二人が、俺を見る。
嫌な予感しかしない。
「……あのね、相馬」
柳が顔を近づけてくる。
「佐藤先輩にうつつを抜かしているところ悪いんだけど」
「うつつを抜かしてない」
「私たち、おざなりにしてない?」
「してない」
「ほんとに?」
「ほんとに」
楠木も隣から、
「うんうん。そーだそーだ」
と援護射撃を入れてくる。
「いや、生徒会が忙しいのは分かるけどさ…」
俺は待て待てという感じで割り込む
「いや俺達、別に遊んでないわけじゃないよな!
クラスのみんなでカラオケ行ったりするし、たまに一緒に帰ったりもするじゃん」
「まぁ…ね…」
柳が少し考える。
その横から楠木が入ってきた。
「でも、生徒会が忙しいのは分かるけど、私たち友達だよね?」
「うん」
「ね?」
「うん」
「ね? ね?」
「なんで詰めてくるんだよ」
楠木は満足そうに頷いた。
「憂華と放課後会ってるかもしれないけど、私たちは置いてきぼりだよ!」
「だからそういうのじゃないって」
そこへ、少し遅れて天沢もやってきた。
「何の話してるの?」
「相馬くんが私たちを放置してるって話」
天沢が苦笑する。
「生徒会は一緒だけど、相馬くんと私もやってることは別だから。帰る時間も結構違うし」
「それはそうなんだけど……」
柳が納得しきれない顔をする。
楠木も、
「うーん……」
と唸っていた。
そして2人は顔を見合わせる。
「じゃあ」
「土曜!」
「どこか!」
「行こう!」
思わず笑ってしまう。
「いや、急だな」
けれど――
女子2人から遊びに誘われて、嬉しくないわけがない。
もちろん、恋愛的な意味じゃない。
友達として。
そう分かっているからこそ、余計に嬉しかった。
「行こう!」
俺が答える。
「よし!」
柳が嬉しそうに笑う。
楠木が天沢を見る。
「え、私?」
「憂華は強制だよ?」
「えぇ……」
「強制参加です」
「そ、そうだよね……!」
天沢も諦めたように笑った。
結局、細かい予定は連絡を取り合って決めることになった。
三人がそのまま離れていく。
俺は何気なく芦屋を見る。
芦屋は――
ものすごく微妙な顔をしていた。
「……なんだよ」
「いや」
芦屋が俺を見る。
「すごいよな……おまえ」
「何が?」
「天沢も、楠木も、柳も。どうやって仲良くなったんだよ」
「どうやってって……」
少し考える。
「楠木は隣の席だったからで」
「うん」
「柳は図書委員が一緒で」
「おう」
「天沢は、その2人の友達だから繋がりで」
俺が答える。
芦屋はしばらく黙っていた。
そして、
「……いや、そういうことじゃねぇ!」
「いや、なんでだよ」
思わずツッコんだ。
俺は何が問題なのか分からなかった。




