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普通の高校生の、特別な日常  作者: しゃー
1章 一学期編
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32/105

32.生徒会の答え

5月31日、放課後。


俺は立ち上がった。


それを見て、天沢も立ち上がる。


俺はもう、答えを出していた。


2人で生徒会室へ向かう。


ノックをする。


「どうぞ」


扉を開け、中には、生徒会役員が全員揃っていた。


俺は一歩前へ出て、生徒会長の目を見据える。


「私、月城相馬は――」


静かな部屋に、俺の声が響いた。


橘会長は笑顔になった。





6月1日。


登校した俺は、学校の掲示板の前に立ち、

新しい生徒会メンバーが貼り出されているのを確認する。


生徒会長――橘 穂乃果(たちばな ほのか)


副会長――冴島 司(さえじま つかさ)


書記――山村(やまむら) ひより


会計――佐藤 澪(さとう みお)


執行委員――濱田 蓮(はまだ れん)


執行委員――里中 朱莉(さとなか あかり)


執行委員――天沢 憂華(あまさわ ういか)。


そして。


執行委員――月城 相馬(つきしろ そうま)。


俺の名前が、そこにあった。



高校生活が始まって、まだ2ヶ月。

まさか、生徒会に入る事になるとは思いもよらなかった。

俺は教室に向かい席に座る。


掲示板なんて、誰が見るんだ。

昨日まで、俺はそう思っていた。


けれど。


ホームルームが始まる前。

学校から配布されているタブレットに通知が届いた。


『生徒会役員のお知らせ』


「あ……」


そうだった。


この学校のお知らせは、基本的に全部タブレットに届くんだった。


俺は画面を眺める。


そこには、名前が並んでいた。


生徒会執行委員。


「……」


教室が少しざわつき始める。


「天沢、すごいじゃん!」


「生徒会ってマジ?」


「頑張れよ、天沢!」


そんな声が飛び交う。


そして。


「月城も生徒会か!」


「頑張れよ」


肩をポンと叩かれたりする。


思っていたより、普通だ。


……ただ。


「なんで月城?」


そんな声も、ちらほら聞こえてくる。


まあ、そうだよな。


俺だってそう思う。


その中でも、一番複雑そうな顔をしていたのが山本だった。


同じクラス委員。


天沢と一緒にクラスをまとめている。

なぜ自分には声がかからず、お前なんだ。そう思ってるかもしれない。


悔しそうな顔。


……悪いな。


俺が悪いわけじゃないんだけど。




チャイムが鳴る。


青山先生が教室へ入ってきた。


「おはようございます」


「おはようございます」


先生は教卓に立つと、タブレットを確認する。


「先ほど発表のあった生徒会について、少し話をします」


クラスが少しざわつく。


「このクラスから2人選ばれましたね」


天沢と俺を見る。


「A組から2人というのは珍しいですが、過去には全員同じクラスから執行委員が選ばれたこともあります」


「へぇ……」


「そのときの生徒会は、かなり盛り上がっていたそうですよ」


先生は少し笑う。


「ただ、公平性を保つために、現在のような形になっています」


つまり。


1つのクラスに偏らないようにする。


今の制度になった理由はそういうことらしい。


「まあ……」


青山先生が苦笑する。


「この学校の生徒会に特権なんてありませんからね」


教室から声が上がる。


「ボランティア、地域交流、学校行事の運営だったり、そういう事をメインとしています」


「……」


俺は昨日、会長から聞いた話を思い出す。


やっぱり同じだ。


「ただし」


先生の声が少しだけ真剣になる。


「学校の代表として活動する以上、その自覚だけは持ってくださいね」


「はい」


天沢が返事をする。


俺も続けて、


「はい」


と答えた。


横を見ると。


山本の表情が、少しだけ緩んでいた。


……まあ、やらなくてよかったかもな。そんな顔をしていた。


さっきまで悔しそうにしていたのに…。溜飲が下がったらしい。


俺としても、気まずいままなのは嫌だからな。


「それじゃあ、もう1つ」


青山先生が黒板を見る。


「生徒会の最初の大きな仕事です」


「体育祭があります」


「おおっ!」


教室が一気に沸く。


「時期は6月後半です」


体育祭。


そう聞くと、やっぱりみんな嬉しそうだ。


楽しいイベントはいい。


こういう学校らしいイベントなら、俺も少し楽しみだった。


「生徒会とは別に、体育祭実行委員も決めないといけませんからね」


そんな話をして、ホームルームは終わった。




先生が教室を出る。


すると、さっそく天沢の周りに人が集まり始めた。


「頑張ってね!」


「生徒会って大変そうだね」


「天沢なら向いてるよ!」


天沢は笑いながら、


「ありがとう!」


と返している。


……相変わらずだ。


俺のところには。


「月城、まぁ頑張ってな」


「応援してるぞ」


くらいなもんだ。


まぁ、別に人気者になる為に生徒会に入るわけじゃないしな。必要とされ、それに応える為だから。

と言い訳のような事を考えていると。


隣から声がした。


「月城くん」


「ん?」


楠木が声をかけてきた。


「生徒会、黙ってたの?」


「…いや、俺から開示できる内容じゃなかったんだ」


「友達でも?」


「……」


返答に困る。


「ごめんな」



少し考えてから、


「正直、結構悩んでたから」


「悩んでた?」


「自分がなっていいのかとか、いろいろ考えてた」


「まぁ、そうよね… 生徒会だもんね」


楠木は納得したように頷いた。


そして。


「でも、生徒会かー…」


「どうした?」


「いや…これから放課後とか忙しくなるのかな?ってさ」


俺も実際活動してるわけじゃないから、忙しさはわからないが。


「そこまでじゃないと思うよ、委員会みたいな感じかな」


「そっか…」


というかさ!と楠木は続けて


「なんか生徒会女子多くない?」


確かに、女子5で男子3で半々ではない。


「会長が女子か男子で同性で固まる事が多いらしいぞ。」


会長に任命権があるなら自分の知り合いが多くなるから必然とそうなるらしい。

俺は昨日聞いた話をそのまま説明する。


「そのなかで月城くんが選ばれるの不思議だね」


「いや、そうだろ?不思議なんだよ」


と言ったあと楠木は意地悪に笑いながら


「会長口説いたとか?」


「いや、口説いてねぇ!」


そんな事できるわけない。


楠木はクスクスと笑う。



今日から生徒会が始まる。日常に変化が訪れるかもしれないし、変化なんてないかもしれない。


俺はとりあえず、与えられた仕事をする。

天沢を支える、なんていうのは少し大げさな気もする。

それでも、俺にやれることがあるなら、応えたい。

そう思った。

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