21.【番外編】藤堂は見た。
俺は藤堂。
月城の後ろの席。
つまり――
俺はこの1ヶ月、月城と楠木のやり取りをかなりの頻度で見てきた人間だ。
今日も2人で何か話していた。
最近、あの2人はよく一緒にいる。
まあ、俺には関係ないけど。
俺は俺で、帰る。
なぜなら――
俺はゲームセンターが好きだからだ。
UFOキャッチャー。
音ゲー。
格ゲー。
ゲームセンターには、一期一会が詰まっている。
今日は何して遊ぼうかな。
そんなことを考えながら駅前を歩いていると、ふと気づいた。
ゲームセンターの隣。
ガチャガチャショップがある。
「……今日はガチャガチャだな」
急遽予定変更。
俺は店内へ入った。
ずらりと並ぶガチャガチャ。
どれにしようか。
フィギュア系もいい。
変な雑貨系もいい。
動物系も捨てがたい。
そして――
目に入ったものは。
犬のガチャガチャ。
なんか見覚えのあるデザイン。
「これ、なんかのゲームのやつか?」
よく分からない。
だが、なんかいい。
こういうのでいいんだ。
俺は財布を取り出したその瞬間――
「……あれ?」
聞き馴染みのある声がした。
「これにするか」
「私もそれがいいと思ってた」
「……」
振り返る。
月城と楠木がいた。
「…………」
俺は物陰へ、咄嗟に身を隠した。
そして思う。
なぜ隠れた?
別に悪いことはしてない。
俺はただガチャを回しに来ただけだ。
なのに。
2人が仲良さそうにしているのを見た瞬間、
「……邪魔したら悪いか」
という考えが浮かんでしまった。
いや待て。
俺は何を気遣っているんだ。
しかし、そんな俺の葛藤など知らず。
2人は俺が回そうとしていたガチャの前へ。
「白いの出ればいいな」
「私は緑!」
ガチャガチャ。
2人で回しているのを隠れて見る。
「……」
出てきたものを確認し、そして、何やら交換している。
仲良しかよ。
そのまま2人は帰っていった。
「……」
俺はしばらく物陰から出られなかった。
よし、帰ったな。
俺も回そう。
さっきの犬のガチャへ向かう。
そして――
「…………」
売り切れ。
「…………」
「…………あいつら……」
くそ。
俺の楽しみを奪いやがって。
仕方ない。
俺は隣にあったガチャガチャへ向かった。
動物デフォルメキーホルダー。
もうこれでいい。
「何が出てもいい!」
ヤケクソで回す。
ガチャッ。
取り出すと。
「……」
目がぶっ飛んでいる。
紫色の蛇。
「…………」
なんだこれ。
俺はしばらく紫の蛇を見つめた。
そして。
カバンにつけた。
「……」
俺はガチャガチャエリアを後にする。
夕方の駅前。
歩きながら、ふと思う。
月城。
楠木。
あいつら、なんだかんだ楽しそうだったな。
「……あいつら、幸せになれよ」
そう呟いてから、俺は1人で帰った。
カバンには――
目のぶっ飛んだ紫の蛇。
今日、俺が手に入れた唯一の戦利品だった。




