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普通の高校生の、特別な日常  作者: しゃー
1章 一学期編
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21/104

21.【番外編】藤堂は見た。

俺は藤堂。


月城の後ろの席。


つまり――


俺はこの1ヶ月、月城と楠木のやり取りをかなりの頻度で見てきた人間だ。


今日も2人で何か話していた。

最近、あの2人はよく一緒にいる。


まあ、俺には関係ないけど。

俺は俺で、帰る。



なぜなら――


俺はゲームセンターが好きだからだ。

UFOキャッチャー。

音ゲー。

格ゲー。


ゲームセンターには、一期一会が詰まっている。


今日は何して遊ぼうかな。


そんなことを考えながら駅前を歩いていると、ふと気づいた。

ゲームセンターの隣。


ガチャガチャショップがある。


「……今日はガチャガチャだな」


急遽予定変更。


俺は店内へ入った。



ずらりと並ぶガチャガチャ。


どれにしようか。


フィギュア系もいい。

変な雑貨系もいい。

動物系も捨てがたい。


そして――


目に入ったものは。


犬のガチャガチャ。


なんか見覚えのあるデザイン。


「これ、なんかのゲームのやつか?」


よく分からない。

だが、なんかいい。

こういうのでいいんだ。


俺は財布を取り出したその瞬間――


「……あれ?」


聞き馴染みのある声がした。


「これにするか」


「私もそれがいいと思ってた」


「……」


振り返る。


月城と楠木がいた。


「…………」


俺は物陰へ、咄嗟に身を隠した。


そして思う。


なぜ隠れた?

別に悪いことはしてない。

俺はただガチャを回しに来ただけだ。


なのに。


2人が仲良さそうにしているのを見た瞬間、

「……邪魔したら悪いか」

という考えが浮かんでしまった。


いや待て。


俺は何を気遣っているんだ。


しかし、そんな俺の葛藤など知らず。

2人は俺が回そうとしていたガチャの前へ。


「白いの出ればいいな」


「私は緑!」


ガチャガチャ。


2人で回しているのを隠れて見る。


「……」


出てきたものを確認し、そして、何やら交換している。


仲良しかよ。


そのまま2人は帰っていった。


「……」


俺はしばらく物陰から出られなかった。


よし、帰ったな。

俺も回そう。


さっきの犬のガチャへ向かう。


そして――


「…………」


売り切れ。


「…………」


「…………あいつら……」


くそ。


俺の楽しみを奪いやがって。


仕方ない。


俺は隣にあったガチャガチャへ向かった。


動物デフォルメキーホルダー。


もうこれでいい。


「何が出てもいい!」


ヤケクソで回す。


ガチャッ。


取り出すと。


「……」


目がぶっ飛んでいる。


紫色の蛇。


「…………」


なんだこれ。


俺はしばらく紫の蛇を見つめた。


そして。


カバンにつけた。


「……」


俺はガチャガチャエリアを後にする。


夕方の駅前。


歩きながら、ふと思う。


月城。


楠木。


あいつら、なんだかんだ楽しそうだったな。


「……あいつら、幸せになれよ」


そう呟いてから、俺は1人で帰った。


カバンには――


目のぶっ飛んだ紫の蛇。


今日、俺が手に入れた唯一の戦利品だった。

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