17.小テストと喧騒
土曜日に野球の試合を見てから、週が明けた月曜日。
俺はすっかりいつもの調子に戻っていた。
授業を受けて、休み時間になれば楠木達と話す程度。
ただ、クラスの雰囲気はいつもと少し違っていた。
原因は――小テスト。
「やばい……」
「終わった……」
「あれ平均何点なんだよ……」
数学の小テストを受け、その時間に採点。
あちこちから悲鳴が聞こえてくる。
とはいえ、今回は入学して初めての小テスト。
まだ範囲もそこまで広くないし、内容もそれほど難しくなかった為、平均点自体は高かったようだ。
それでも、点数を見て絶望する奴はいる。
そんな教室の中で、柳が俺のところへやってきた。
土曜日以来、初めて話す。
「よう!相馬!」
「ん?」
「点数どうだったんだよ」
「……」
俺は少しだけ躊躇してから、答案を見せた。
「……これ」
「どれどれ」
柳が覗き込む。
そして。
「まじかよ!」
思ったより大きな声で驚かれた。
「案外、頭よかったんだな!」
「案外ってなんだよ」
「いや、だって相馬って勉強できるイメージなかったし」
「失礼だな」
「ごめんごめん」
柳は笑いながら答案を返してくる。
「次、勉強教えてよ!」
「俺、人に教えられるほどじゃないぞ」
「えー、いいじゃん」
「自分が分かるのと、人に教えるのは別だろ」
「じゃあ、分かるところだけでいいから!」
「うーん……」
俺は勉強が得意というわけじゃない。中学で挫折してから、勉強に重きを置いたが好きでやってるわけじゃない。乾きのような熱量を勉強に持ってきただけ、そう思っている。
「天沢は?」
「憂華は人気だから…」
「楠木は?」
「いつもファミレスで山盛りポテトを報酬にされる」
「柳… ドンマイ…!」
「憐れむな!」
柳が俺の肩を軽く叩く。
俺は思わず笑った。
少し前までは、柳とは図書委員で一緒になるクラスメイトというだけだった。
それが今では、こうやってくだらないことで言い合える。
図書室で話す時間も増えたし、LINEで意味のないメッセージを送り合うことも増えた。
そして学校でも、自然と話すことが増えた。
「ほんとに今度教えてよ」
「まあ、分かる範囲ならいいよ」
「やった!」
柳が嬉しそうに笑う。
「よろしくな、相馬先生!」
「やめてくれ…」
「先生!」
「山盛りポテト要求するぞ」
「ごめんなさい!」
そんなやり取りをしながら、俺達は笑った。
いつの間にか。
柳とは、かなり気楽に話せるようになっていた。




