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普通の高校生の、特別な日常  作者: しゃー
1章 一学期編
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15/106

15.柳 彩葉

その話をした後、優貴はチームに戻って行った。

しばらくすると、重かった空気も少しずつ元に戻っていった。


「でさ、学校どう?」


楠木が葵に話しかけている。


「まだ入ったばっかりなので不安です」


「そっかー。転校生だもんね」


「はい」


天沢も会話に加わる。


「友達とかできた?」


「一応、できました」


「そっか、よかったね!」


妹よ、友達ができててお兄は安心です。


さっきまでの話が嘘だったみたいに、いつもの空気になっていく。

俺も少し離れたところで、荷物をまとめながら会話に耳を傾けていた。


「そういえば、お兄ちゃんって家ではどうなの?」


おい、変なこと聞くなよ。

楠木が葵に聞き、少し考えた後。


「家では普通ですよ」


「そうなんだ」


「たぶん」


「そっかそっか」


天沢が笑う。


「葵ちゃんは、高校どこにするの?」


「お兄と同じところに行くつもりです」


天沢が驚く。


「じゃあ、再来年の後輩?」


「はい。そのつもりです」


俺はそこで初めて妹の進路を聞いた。


……そうなのか


葵が俺をチラリと見た。



そんな会話をしていると、隣から声をかけられた。


「相馬」


「ん?」


柳だった。


少しだけ申し訳なさそうな顔をしている。


「ごめんね」


「何が?」


「今日、誘っちゃって」


俺は少し考えてから笑った。


「いや、楽しかったよ」


「でも……」


「むしろ、変な話したのは俺のほうだし」


「……」


柳は黙って首を振った。

そして、小さな声で聞く。


「思い出したくなかった?」


「……」


俺は少しだけ考えた。


「なかったかって言われれば、嘘になるけど」


正直に答える。


「でも、もう気にしてないよ」


そう言って、グラウンドを見る。

さっきまで優貴たちが練習していた場所。


「まあ、壊れたのが、夏とか秋じゃなくて春だったからな」


俺はなるべく明るい声を出した。


「そこから勉強に切り替えられたし、そのおかげでこの学校にも入れた」


「だから、結果的には良かったんだけどな」


その後、柳は何も言わなかった。

俺はどんな顔をしていたんだろうか。


昔のことを思い出して、少しだけ遠くを見る。


「……そっか」


柳が小さく答えた。



ーーーーーー



私はその横顔を見ながら、よくわからない感情を覚えていた。


さっきまでなら、ただのクラスメイトだった。

図書委員で一緒になる、話しやすい男子。

それくらいだったはずなのに。


今は違う。


何かしてあげたい。


力になってあげたい。


せめて、自分の前ではそんな顔をしなくていいようにしてあげたい。


そんな気持ちが、胸の奥から湧いてくる。


もう一度、相馬の横顔を見た。


胸が、ほんの少しだけ。


きゅっとした。

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