14.過去の挫折
「全国大会の決勝――」
「その話は……」
その瞬間だった。
「ま、待って!」
葵が慌てて話に割り込んできた。
「その話は、また今度にしよ!」
俺は今どんな顔をしているんだろうか。
でも、俺が説明しないとな。
「葵、大丈夫。説明する」
「でも」
「大丈夫」
俺は葵にそう言って、優貴へ向き直った。
「俺は中学まで野球部でキャッチャーだったよ」
「やっぱり!」
優貴は目を輝かせ話を聞いてる。
問題は、その先。
「俺は中3の春、あの全国大会で肩を壊したんだ」
「……」
「それから全力で投げられなくなった」
俺は自分の肩を軽く叩いた。
「決勝戦は出られなかった」
優貴の表情が少しずつ変わっていく。
「準決勝の相手のほうが、実は強かったんだ。でも俺は決勝には出られなかった。」
あのときのことを思い出す。
ベンチから見ているしかなかった。
自分がグラウンドにいれば。
そんな考えが、何度も頭をよぎった。
「だから、負けたんだよね… 悔しかったなぁ…」
一度、息を吐く。
「でも、今は吹っ切れてる。あんまり気にしてないよ」
優貴が申し訳なさそうに口を開く。
「そんなことが…あったなんて… すいません。」
俺は首を振った後、答える。
「全然気にするな。今はもう前向きだし!気にしてないよ」
「……はい」
「だから、優貴くんも体に気をつけてね」
俺は笑って、優貴の肩を軽く叩いた。
「それより、いい選手になるぞ」
「え?」
「今日の打撃見てたけど、いい流し打ちだったよ」
「……!」
「4打数2安打だろ? ツーベースも打ってたし」
「見てくれてたんですね…」
「そりゃな」
俺は笑う。
「これからも頑張ってね!」
「……はい!」
優貴の顔が少し明るくなった。
それを見て、俺も笑う。
――大丈夫。
もう終わったことだ。
そう自分に言い聞かせるように。
でも。
風に揺れるグラウンドを眺めながら、胸の奥に残っている何か。




