12.妹の疑い
柳に誘われた日の夜。
家に帰って夕食を済ませたあと、俺はリビングで妹に声をかけた。
「そういえばさ」
「ん?」
「今日、友達に誘われたんだけどさ」
「友達?」
「ほら、柳さん」
「ああ」
妹と柳の弟、優貴くんは同じクラスだ。
「優貴くんが野球の試合やるらしいから、見に来ないかって言ってるけど」
「……うーん」
葵はあまり興味なさそうな顔をする。
「見てもなぁ。そんなに優貴くんと仲良いってわけじゃないし」
「まあ、それはそうか」
同じクラスとはいえ、転入してすぐだからな。
「行く気はないね」
「嫌か?」
「嫌ってことはないけど… いつ?」
「今週の土曜」
俺は葵の反応を見ながら続ける。
「天沢と楠木ってやつも来るけど」
「……」
妹が黙った。
「男がいるなら嫌」
「……」
俺はスマホを取り出した。
「これ」
昼間、楠木から送ってもらっていた写真を見せる。
そこには、天沢、楠木、柳の女子3人が写っていた。
そして写真には、
『葵ちゃん来てね?』
と文字が入っている。
葵の視線が、画面に向く。
「……」
目を見開いた。
「……何これ」
「だから、来てねって」
「……」
葵は写真と俺の顔を交互に見る。
そして。
「これ、お兄の友達?」
「そう」
答えた瞬間。
葵から向けられた視線が、なんとも言えないものになった。
……なんだ、その目。
「本当に?」
「本当だよ」
「騙されてない?」
「騙されてない」
「お金払って友達になってもらってるとかじゃなくて?」
「なんでそうなるんだよ」
「だって……」
葵はもう一度、写真を見る。
「こんな可愛い子達と?」
「普通に友達だって」
「……」
まだ納得していない顔。
「本当に友達」
念を押すように言うと、葵は少しだけ目を細めた。
「……ふーん」
完全に信じていない。
たぶん、そんな顔だった。
俺はため息をつく。
高校に入ってから、少しずつ友達が増えた。
それだけのことなのに。
まさか1番身近な妹から、そこまで疑われるとは思わなかった。
「でも…いいの?野球」
葵は俺の顔を見ず、聞いてきた。
「まぁ、見るだけならいいさ」
俺はそう答えた。




