11.男1女3の誘い
次の日の、とある休み時間。
俺は昨日のことを柳に話した。
「柳、そういえばさ」
「ん?」
「俺の妹と、柳の弟。同じクラスらしいぞ」
「……え?」
柳が一瞬固まった。
「まじで?」
「まじ」
「え!? すごいじゃん!」
思った以上に大きな声が出た。
「奇跡じゃん!」
「そこまでか?」
「だってさ!」
柳が身を乗り出してくる。
「同じ学年で、しかも両方同じクラスって、そんなことある!?」
「確かにな」
言われてみれば、かなり珍しい。
中学2年生だって何クラスもあるだろう。
それなのに、俺の妹と柳の弟が同じクラス。
そして俺たちも同じ1年生で、同じクラス。
確かに、ちょっとした奇跡かもしれない。
「妹ちゃんが写ってる写真とか1枚もないの?」
「写真…?」
「うん! 妹ちゃん見たい!」
「いや、ないな…」
「なんで!?」
「そもそも妹と写真なんか撮らなくないか?」
家族写真なら昔撮ったものがある。
でも、兄妹2人で写真なんて、わざわざ撮らないだろ。
少なくとも俺は撮らない。
「うちの弟は嫌がってたけど無理矢理撮るよ!」
「なんでだよ」
「だって弟じゃん!」
「まじかよ」
「まじ!」
柳は当然のように言い切った。
俺はそれをしようとして、昨日蹴りを入れられたんだけどな…。
そのやり取りを聞いていた天沢が、くすくすと笑う。
「ふふっ」
「憂華、何笑ってんの!」
「いや、なんか……」
天沢は楽しそうに俺たちを見る。
「彩葉ちゃん、お姉ちゃんしてるなーって」
「でしょ?」
「褒めてないよ、それ」
「えー?」
そんなやり取りをしていると、天沢がふと俺を見る。
「月城くん、お兄ちゃんだったんだね」
「そうだよ」
俺は少し胸を張って、
「頼り甲斐ありそうだろ?」
冗談めかして言った。
すると。
「それは前から思ってたよ」
天沢は、何でもないことのように言った。
「……」
本人は特に意識していないらしい。
本当に、ただ思ったことを口にしただけですよという雰囲気。
「……だろー?」
俺は笑って返す。
そんな真っ直ぐ返されたら、反応に少し困る。
「それでさ!」
柳が話を戻す。
「今週末、試合あるんだけど」
「試合?」
「うん。優貴の野球の練習試合」
「ああ……」
そういえば野球部だったな。
「一緒に観に行こうよ!」
野球も、観戦も嫌いではないが…
「いや、俺野球は…」
「えー、野球嫌い?」
「いや、まあ……」
俺が渋っていると、
「私も見たい!」
天沢が手を挙げた。
「え?」
「野球の試合って、ちゃんと見たことないんだよね」
すると楠木も声をかけてきた。
「私も行ってみたい」
と続いた。
「……」
気づけば。
柳、天沢、楠木。
女子3人とも乗り気になっている。
「じゃあ決まり!」
「いや、俺はまだ――」
「相馬も行くよね?」
柳が笑顔で言う。
……逃げ道がないな。
「……はい」
こうして、なぜか野球観戦に行くことになった。
しかも。
「妹ちゃんもよかったら連れてきてね?」
「……妹も?」
「うん! 昨日写真見せてもらえなかったし!」
「来るかな…」
「絶対連れてきて!」
「いや、無理だと思うけど…」
「大丈夫だって!」
何が大丈夫なのか分からない。
俺、女子3人、そして妹。
……なんだ、この組み合わせ。
そもそも妹は来るのか?




