100.インパクト
「文化祭にインパクトが欲しい」
唐突に会長から告げられる。
謎のテーマ。
「インパクト…ですか?」
「そうだ、盛り上がりに欠けたんだ。去年は」
「はあ…」
俺は会長と話をしている。
生徒会室。
面と向かって。
「いや、言いたいことはわかります」
「そうか、それなら」
「待ってください会長。俺はなんでも思いつく便利屋じゃないんですよ」
「そうだな。でも考えてくれ」
まじかよ…。
俺は考えを巡らせる。
インパクト…。アーチを飾る?
校門付近に出店を多くするか…?
「副会長はどう思います?」
「いや、俺も悩んでる。普通でいいと思うが…」
と言い、隣の橘会長をチラッと見た。
「だめだ、インパクトはいるぞ月城。盛り上がるためにだ。決して市長が来るからじゃないぞ」
そっちが本命だろう!
とは言えず、俺は一応引き受けることにした。
「少し考えてみます」
「ありがとう月城くん!頼りになるね」
「悪いな、月城。俺も思いついたら共有する」
冴島副会長が申し訳なさそうに言っているが、これも副会長ならではの悩みかもしれないな。
会長の意思を直で受け止めて、反映させる。
……いや、副会長って会長の無理難題押し付けられてる立場なのでは?と思ってしまった。
俺は校門付近に足を運んだ。
インパクト…ねぇ。
まだ何も飾られていない校門、それから校舎へ続く道を見ながら考える。
校門付近をうろうろしながら、考えていると、後ろから声をかけられた。
「何してんのよ」
「お、水野さん。買い出しか?」
「塗料無くなったらしい」
「…そうか」
俺が使いすぎたか?と思ったが、黙っておくことにした。
「生徒会長に文化祭のインパクトが欲しいって言われてさ」
「何それ、無茶振りじゃん」
「だろ?だからヒントがないか見回ってたんだよ」
水野さんは「そっか」と言い、歩き出そうとして、立ち止まった。
「そういえば豊崎さん、月城くんと話すようになってすごく楽しそう」
「そうだな。芦屋ともそこそこ話せるようになってきたしな」
俺は、少しずつ男子を交えて豊崎さんと話を続けている。ちょっとずつ話せるようになってきたところだ。
「…もういっそのこと、芦屋なんか忘れて、月城くん好きになればいいのにね」
「……それは」
それは、あまりにも酷い感想な気がする。
「水野さんって芦屋となんかあったのか?」
「いや…何もないけど」
「なんか毛嫌いしてないか?当たりが強いというか」
水野さんは諦めたような顔をした。
「あのタイプが嫌いなだけだよ」
「そうか…」
人の好き嫌いはどうしようもないことだと思うけど。だからといって、芦屋は悪いことは何もしていない。
「でも、豊崎さんは芦屋と話せるようになりたいから、苦手な男子との会話を練習してるんだろ?」
水野さんは俺の話を黙って聞いている。
「好きな人がいるから、苦手なことも頑張れる。そういうのって、すごいことだと思うけどな」
水野さんは少し面食らった顔をしたが、小さく呟く。
「…まぁね、でもなんであいつなんか」
「水野さんが芦屋を嫌いなように、豊崎さんは芦屋が好きなんだよ」
「その気持ちは誰に言われても変えられないし、鞍替えしろなんて言われたら豊崎さん傷つくぞ」
「わかってるよ」
「それならいいけど」
俺は少し熱くなってしまったと、反省した。
芦屋を嫌うのも自由だし、水野さんが何を思うのも自由だ。
でも、豊崎さんの気持ちまで否定するようなことは、言ってほしくなかった。
「ごめん、言いすぎたかも。なんて言っていいかわかんないけど」
「いや、私こそごめん。ちょっと自己中心だったかも」
水野さんは歩いて教室に向かう。
俺は強く言いすぎたかもしれないな。少し反省をしていた。
「私たち吹奏楽部はステージで演奏するから」
「協力できることあったら言ってね」
そう言い残して、教室へと歩いて行った。
水野さんの背中が見えなくなるまで俺は見ていた。
「吹奏楽か…」
ありかもしれない。
校門付近に楽器を運ぶ必要があるけど、ここで演奏できれば文化祭開幕のインパクトは大きい。
生徒会長に相談してみるのはいいかもしれないな。




