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気まぐれ異世界遊戯  作者: yoshi
第五章 極悪貴族と姉妹の幸せ
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対面


「やっとノルヴェ村の付近までたどり着いたな。長かった〜」


「お疲れさま。少し休んだら?」


リアがそう言って毛布を投げてよこした。カシワがぼやくのも無理ない。カルロスが寝込んでいる間、ほぼ一人だけで、ここまで馬車を運転してきたのだ。”女性陣にこのきつい砂漠の温度差は過酷だろう、馬車の中で休んでてくれ”と見栄をはっていたカシワだが、道中なんど後悔したか、分からない。


せめて、短い時間でいいから、交代するように、頼むべきだった。しかし、変なところで意地を張る傾向のあるカシワは、交代を頼む事を弱音だと思い込み、ついに一度も交代する事無くノルヴェ村のすぐ近くまでやってきた。とりあえず眠い。ここまでずっと不眠不休だ。ノルヴェ村に入る前に少しだけ眠らせてもらおう。カシワはランシアに念話で、村のすぐそばまで来たということだけ告げると、馬車の隅で眠らせてもらう事にした。


しばらくして目が覚めると、既に馬車にランシアの姿があった。何だろう?手元に筒のようなものを持っている。ランシアは俺が目覚めた事に気づくと、振り返って、俺の様子を見る。


「おはよう、カシワ。ふぅん。だいぶ頑張ったみたいね。まだ、目の下に隈が残ってるわよ。顔でも洗ってきたら?・・って、ここにそんな設備ないか。」


「ランシア、もう来てたのか。その手元に持ってるのは何だ?」


俺が問いかけると、ランシアはニッコリ笑って、”お楽しみ”とだけ告げる。なんだよ、別にもったいぶらなくてもいいのに。とりあえず体中のあちこちがきしむ。ストレッチでもするか。俺は馬車の中で軽い柔軟運動をすると、手櫛で寝癖だけ整えて、ついでに近くの茂みで用を足した。


あれ?そういえば、さっきランシアのやつ、やたらレナのことを見ていたような・・まぁ気のせいか。たまたま俺が目を覚ましたときに、ランシアがレナの方を向いてたってだけだよな。


さてと・・それじゃ、いよいよ行くとしますか。と言っても、実際ランシアが加わった程度でタイタンをどうにか出来るのだろうか。そういえば、ランシアからは今のところ、特に何も聞かされていなかったな。何故ランシアがここに来たのかも、これからどうするのかも知らないままだ。まずそこから確認しなくちゃ。俺が馬車に戻って、ランシアに問いただそうとしたとき、村の方から煙が上がっているのが見えた。


何だあれ?村から火が上がって・・火事だ!急いで皆に知らせなくちゃ。俺は皆に村から火の手があがってることを告げる。これにはランシアも驚いたようで、一瞬顔をしかめたが、すぐに冷静になり、空に向かって詠唱を唱える。そういえば、ランシアが本格的に集中して魔法を使う姿を見たのって初めてだ


詠唱の一語一句までは聞き取れなかったが、どうやら天候を操る魔法らしいことは分かった。空を見上げると、かなり広範囲に渡って雲が覆ってる。雨を降らせるのか・・簡単にこんな高度な魔法を使いこなすあたりは、さすがランシアだ。ノルヴェ村のあちこちから見えていた火事は瞬く間にその勢いを弱め、沈下していった。


「さすが、ランシアだな。しかし、まさか村で火事が起こるなんてな。ランシアがいてくれてよかったよ。」


俺がランシアを褒めると、すぐに調子に乗るかもと思ったが、予想に反してランシアは厳しい顔をしていた。


「・・許せない。」


一言つぶやくと、ランシアは自分の持ち物をとりに馬車に戻った。何だ?ランシアがあんなに怒ったのを見たのも初めてだ。だが再び俺の前に顔を見せたときには、いつもの表情に戻っており、俺たちに準備はできてるか尋ねる。


俺はカルロスの様子が気になって、見てみたが、カルロスはいたって平気だと言うように、残っている片方の腕だけで剣を素振りしてみせる。今更止めても無駄だろうな。リアとレナも準備は出来ているようだ。俺たちが各々準備を整え、馬車の脇に集まるとランシアはこれからの作戦を話しはじめた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「結局どうすることも出来なかったな。」


タイタンとその部下の一部の兵達は、ゴクアに逆らうことが出来ず、村に火をつけたことを心の中で嘆いていた。しかし、どういうわけか、いきなり天候が悪化し、周囲一体に激しい雨が降り始める。


「こんな偶然があるとはな。まさか、村に火をつけた後に雨が降るとは。しかし一時的に焼き討ちは延期できたが、結果は変わらん。雨がやめば、同じ事を繰り返すだけだ。」


タイタンは兵達に、一旦部屋で休むように言い渡し、村の外を眺める。本来なら今頃、火事に怯えて家から出てきた村人たちを、兵士達が斬り殺していたはず。村人達はいきなり、あちこちから火の手があがったことに驚いている事だろう。火の元を確認し、原因を探っているかもしれない。これが放火によるものだと気付いた者も何人かいるはずだ。


「しかし、村人達の運命は変わらん。少しの間、寿命が延びただけだ。」


タイタンは最後に村の様子をこの目に焼き付けておこうと思い、雨の中、傘もささずに村を歩き回る。ん?何だ?見慣れぬ人影が見える。まさか、この村に来客か?だとしたらまずい。この村の実体を知られるのもそうだが、このまま村にいれば、焼き討ちの巻き添えをくうことになる。


どうする?今なら気づいてる兵士もいないようだ。俺が直接行って追い返すか。何なら少々手荒な手段をとっても構わない。命を奪うよりはましだ。それにもし客が女性なら、兵士達になぶりものにされる可能性もある。早々にお引き取り願うとするか。


タイタンは何も言わずに人影に近づいて行く。まずい!他の兵士達も来客に気づいたようだ。遅かったか・・兵士に気づかれる前なら、追い返す事が出来たが、仕方ない。運がなかったとあきらめてもらおう。兵士達はすぐには斬り掛からないようだ。ここからだと遠目ではっきりとは見えないが、

どうやら、相当きれいな女性が何人かいるようだ。


兵士達がにやついて客に近づいて行く様子が伺える。可哀想に。この村を知らないできたなら、おそらく観光客の類いだろうか。村を焼き払った後なら、俺たちはここにはいなかった。犠牲になる事もなかったのだろうが、タイミングが悪かったな。タイタンはそのまま去ろうとする。しかし、信じがたい光景が目に入った。取り囲んでいた兵士達が音も立てずに全員その場で倒れたのだ。


何かの魔法か?それも相当強力な効果を持っている魔法。取り囲んでいた兵士は少なくとも十人はいたはず。それが一瞬で全員倒れた。俺も行くべきだろうか。・・いや、やめておこう。俺が行けば、せっかく身を守ることに成功した来客の命がなくなることになる。


もっとも、この村には、他にも三十人以上は兵士がいる。そいつらに見つかる前に帰ってくれればいいがな。だが他の兵士の動向まで引き止めるほどお人好しではない。俺は部屋に戻って、しばらく眠る事にした。


どのくらい寝たのだろうか。目が覚めると、あたりが何やら騒がしい。あれは王都の役人ども?なんでこんなところに?見ると村人が全員連行されている。なんだ?何が起こっている?俺は部下の兵士を呼びつけ、事情を話すように命じる。


「それがどうやら、この村からの産出を偽る偽物の宝石が市場に出回っているとかで、その調査のため、村人を連行して事情聴取を行うようです。どうしましょう、タイタン様。このままだと焼き討ちの計画が台無しになっていまいます。」


「・・放っておけ。事情聴取ならそう何日も拘束されるわけでもなかろう。全員が帰ってきてから、計画を実行すればよいだけだ。ゴクア様は機嫌が悪くなるだろうが、さすがにこれでは仕方あるまい。しかし、偽の宝石だと?一体どこからそんな情報が出回ったのだ?」


「それなんですが、すでに港町ハーバーや王都フランなど主立った街のあらゆる酒場や飲食店で、噂されているようです。それとは別にゴクア様がこの村に来てから、宝石の品質が落ちたなどの噂もある。」


「誰かがゴクア様をはめようとしているというのか?」


「いえ・・それが妙な事に、時を同じくして、ゴクア様を讃える噂も流れているのです。特にゴクア様がこの村にいらっしゃってから、ノルヴェ村は安泰し、村人達は豊かな生活を送っているとか」


「何だと?」


タイタンには噂の出所も、その意図もまるで検討がつかない。いや、出所なら、例えばゴクアに敵対する貴族や、ゴクアの存在を疎ましく思っている政敵がゴクアを貶めるために流したとも考えられる。だが、噂の内容がそぐわない。ゴクアが来てから、宝石の価値が下がったという噂については理解出来る。しかし、ゴクアを讃える目的が分からない。


分からない事はまだある。偽の宝石の情報を流して村人がいきなり逮捕された。もっともそのおかげで村人は焼き討ちを一旦免れたわけだが、誰がこんなことを仕掛けたのだ?先ほどの来客と何か関係があるのだろうか?しばらく考え込んでいると、部屋のドアをノックする音が聞こえてきた。


「失礼します。タイタン様に会わせろという者が現れまして。」


「王都の役人どもか?」


「いえ、それが・・」


扉を開けて入ってきたのは、先ほど遠目に見かけた客人達だった。


「初めまして、領主様。カシワと申します。それとこちらは連れの・・」


「ランシアよ。初めまして、領主様。」


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