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気まぐれ異世界遊戯  作者: yoshi
第五章 極悪貴族と姉妹の幸せ
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行動開始


「へぇ、あなたがランシア。カシワやカルロスから話は聞いてるわ。ディアナよ。宜しくね。」


「こちらこそ、宜しく。」


ランシアは今、マゼランの海賊船に乗っている。海賊船の場所については、気球添乗員のライアンに聞く事が出来た。海賊船長の娘ディアナは密かにライアンに思いを寄せている。次はどこの港によるから、そこでデートでもしようといった連絡を取り合っていたのだ。


最も、ディアナ自身は秘密ということにしているようだが、他の海賊達にも、またミス研メンバー全員にも知られている公然の秘密であり、むしろディアナとライアンの動向について知らない者の方が、見つけにくいぐらいだ。


ランシアはライアンから、次に海賊船が立ち寄る場所を教えてもらい、ついでにライアンからの紹介状を書いてもらって、海賊船に乗り込む事が出来た。本当は紹介状などなくとも、ライアンやカシワたちの仲間だと告げれば、乗せてもらう事が出来たかもしれないが、一応念を入れた形だ。


「それで、私達に頼みたい事って・・あ、宝石の件なら、上手くいってるわよ。」


宝石の件。以前にライアンが海賊船に乗り込んだとき、ライアンの口からマゼランに対して、こんな提言をしている。


"あなた方が強奪した・・いや取引した宝石のうち、あなたの目で見てこれは価値のあるものだと判断した宝石を、以前のゴクアたちが来る前にノルヴェ村で採掘した宝石として公表してほしいのです。それと反対に、これは粗末だと思える作りの宝石を今のノルヴェ村の宝石として同時に取り扱ってほしい。出来れば、二つの宝石は同時に取り扱ってくれる事が一番でしょう。素人が見ても、価値の差が歴然とするほど、見た目の美しさから、何から何まで異なる二つの宝石を同時に取り扱ってほしいのです。"


要はゴクアたちがやってきてから、ノルヴェ村の宝石の品質が落ちたという事を世間にアピールしていくわけだ。この案自体はランシアが考えたものだが、ランシアからライアンに、ライアンからマゼランにとリレー形式で伝えてられていた。ランシアの頼みは、この案にさらにスパイスをひとつまみ追加しようというものだ。


「あなたたちが港に立ち寄って、酒場に行くたびにね、ゴクアの噂を広めてほしいのよ。」


「なんだ、そんなこと。いいわよ。ゴクアの非道な行いを噂として広めていけばいいのね。」


「いいえ、逆よ。ゴクアを出来るだけ美化した噂を流してほしいの。ノルヴェ村の人たちはゴクアのおかげで、こんなにも素敵な生活を送れてますよってね。」


「何言ってるのよ!? そんなことしたら、ゴクアを得させるだけじゃない?宝石の件とも矛盾してるじゃない。まさか、あなたゴクアのスパイとかじゃないでしょうね?」


「ふふ、それも面白いかもね。でも残念ながら違うわ。私の目的はあくまでライラとリニアを助ける事だけよ。それにね、ゴクアを美化する事は、ゴクアの得には決してならない。必ずゴクアへのダメージになるわ。それじゃ、宜しく〜」


「ゴクアを美化・・何ですって?何を禅問答みたいなこと言ってるのよ?ちょっと、理由ぐらい教えなさいよ!」


「んー、しょうがないわね。一言でいうとね、ノルヴェ村を”名所”にしちゃおうってわけ。じゃ、また後で来るわね。」


「はっ!?どういうこと?」


ディアナはますます意味が分からないといった様子で目を丸くする。だが、ランシアはディアナの問いには答えず、次の転移先である王都フランへと向かう。リッチマンとチューギーの借りてる宿に到着したランシアは、とりあえず回復の可能性を分析するため、カルロスの冷凍された腕をみせてもらった。


「・・見事に切断されてるわね。カルロスを元の姿にしてあげるには、先は長そうね。」


「ああ、カルロスは辛いだろうな。自慢の剣が思うように、ふるえなくなる。戦えない剣士なんて、具の無い味噌汁以下だろ。内心では相当落ち込んでると思うよ。」


「カルロスの腕を元通りにする方法については、ちゃんと調査してみるつもりよ。あなたもでしょ、リッチマン?」


「当然だ。このまま見捨るような真似は絶対にしないさ。それより、ランシア。おまえがわざわざ、ここに来たのって、カルロスの腕を見るためなのか?」


「それも大事な理由の一つだけどね。実はリッチマンに頼みたい事があるのよ。チューギー、あなたも手伝って。人手は多い方がいいわ。」


「何をするんだ?」


「何をするんです?」


リッチマンとチューギーが同時に疑問を投げかける。ランシアは二枚の紙とペンを用意し、それぞれの紙に、片方は王宮宛、片方はゴクア宛に手紙を書いていく。但し、ゴクア宛の手紙の差出人の欄にはタイタンの名前を入れておく。王宮宛の手紙の差出人は空欄にしてある。


「この手紙を届け終わったら、二人にはポスターを貼ってもらいたいの。もちろん、役所の了解を得てからね。無断で貼ると怒られちゃうだろうし。」


ランシアが唐突にとった行動の意味が分からない二人は、互いに顔を見合わせた後、ランシアに質問する。


「ちょっと待て。整理させてくれ。別におまえがポスター貼れって言うなら、そりゃ手伝うけどさ。せめて目的くらい教えてくれ。いや、その前にだ。そもそも何のポスターを貼るんだ?」


ランシアは子供のように質問をしてくる二人に対して、とびっきりの魅力あふれる笑顔で答える。


「タイタンの立候補ポスターよ」


「はっ!?」


二人はまたしても、同時に声がでた。それも、普通の言葉にならないような、拍子抜けした声だ。


「あなたたち、ハモるの上手いわね・・気が合うんじゃない?いっそ、付き合っちゃえば?」


ランシアの言葉を軽くいなして、リッチマンが問いかける。


「いや、冗談はいいからさ。頼むから分かるように説明してくれ。悪いが、話に全然ついていけん・・ツッコミどころがありすぎるんだが、えっと・・タイタンが何するって?」


「立候補よ。」


「聞き違いじゃなかったのか・・今度は一体何考えてるんだよ?」


「最終的には手間のかかる姉妹ライラとリニアを安心させる事。そのためにゴクアを潰す。そのためのポスターよ。」


「・・ゴクアを潰すまでは分かる。非常に分かりやすい。だが、そのためのポスターのくだりはさっぱり分からん。」


「後でちゃんと説明するわ。それより、私もそろそろカシワたちと合流しなくちゃ。あっでもニーナの準備を確認する方が先ね。それにライラとリニアにも話しとかなくちゃ。ああ、忙しい。それじゃ、ポスターの件、任せたわよ。」


そのまま部屋を出て行こうとするランシアをリッチマンが慌てて引き止める。


「いや、待て。任されても困る。分かった。説明は後でもいい。だから頼む。おまえの言う通りポスター貼るから、せめて原盤となるポスターは作ってくれ。正直全然、話についていけてない。何を作って、何をすればいいのか、さっぱり分からん。」


「あら、リッチマンがそんなこと言うなんて珍しいわね。」


「俺だって、分からないときはあるさ。っていうか、いきなり今のお前の発言聞かされて理解出来るやつなんているのか?」


「しょうがないわね・・後でと思ったけど、やっぱり今説明してあげるわ。貴重な私の時間を使ってあげるんだから、感謝しなさいよね。」


「わかった、わかった。感謝してるって、ランシア。」


「本当?」


「ああ、もちろん。」


「それじゃ、この件が終わったら、私とデートしてくれる?」


「えっ?」


リッチマンが不意をつかれて、一時停止状態になる。それを見て、ため息をついたランシアだが、もういいわと一言つぶやくと、リッチマンを軽くこづいて再生させ、これからの考えを伝えた。リッチマンとチューギーの反応は別々だった。なるほど、そりゃ見物かもなと唸るリッチマンに対して、ただ呆然とするだけのチューギー。


ランシアはそんな二人に見送られながら、今度こそ部屋を後にし、再びニーナの元へと向かった。

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