↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
気まぐれ異世界遊戯  作者: yoshi
第五章 極悪貴族と姉妹の幸せ
PR
71/82

保護するために逮捕


王都フランでの面談室。チューギーはリッチマンを伴い、役人にノルヴェ村での実体を洗いざらい打ち明けていた。


「・・と、以上がノルヴェ村で行われている事の実体です。」


チューギーが話し終わると、役人はにわかには信じがたいといった様子でそわそわしている。この時代に未だにそんな非道なことがまかり通るなんて、鵜呑みにはしがたいだろう。だが、チューギーの言ってる事に嘘は無い。ゴクアの私兵団やタイタンによる、日常的な搾取、暴力行為や残虐な行いは、誰が聞いてもにわかには信じられないようなものだった。


「そなたの言う事を裏付ける証拠はあるのか?」


役人が問いただす。仮にチューギーの話が本当であれば、さすがに役所としても動かざるを得ない。しかし、ノルヴェ村を配下としている貴族ゴクアは、地方貴族ではあるものの、その勢力はかなりの広範囲に及ぶ。


さすがに王都フランの内政までに交渉出来る力はないが、戦力的にも、所持している兵隊の数だけで小国の軍隊並みに匹敵するとまで言われている。一人の騎士の証言だけで行動に移すわけにもいかず、ゴクアの領土に干渉するだけの確かな証拠が必要となってくる。


「実際に一度でも村に足を踏み入れて頂ければ、一目瞭然かと。それと港町ハーバーにも先ほどお話ししたノルヴェ村出身の二人の姉妹リニアとライラがおります。後はこの国で気球の添乗員をおこなっているライアン殿。彼もノルヴェ村について、その惨状を証言してくれるかと思います。」


「ふむ・・しかし、証言だけではなく、物的証拠が欲しいのだが。」


「物的証拠ですか・・やはり繰り返しになりますが、実際にノルヴェ村への視察をお願いするわけには行きませぬか?」


「難しいだろうな。公的な視察目的でゴクア殿の領土に足を踏み入れるには、それなりの理由が必要となろう。私が一個人として村に赴くぐらいなら出来るが、仮にそうして私個人が村の惨状を目のあたりにしたとしても、フランの騎士団を動かす事は出来ぬであろう。もっと上の立場の王族や上流貴族の証言でもあれば通用するかもしれぬがな。」


チューギーは腕組みをする。これが普通の犯罪や事件ならば、証言がこれだけ揃っていれば告訴も可能だろうし、フランの騎士団を視察に向かわせる事も出来るだろう。やはりゴクアの領土であるということが重く響いている。


騎士団を視察に向かわせるだけでも、相応の大義名分が必要となってしまう。物的証拠と言われても、村の惨状を一目で記せるような証拠となると、実際に村に赴き目で見てもらうのが一番としか言いようが無い。


さて、どうするか・・チューギーは隣に座るリッチマンを見る。リッチマンは何やら思いついた様子で、おもむろに口を開き始める。


「ところで最近、ノルヴェ村の宝石の偽物が出回っている事はご存知ですか?」


なにっ?そんな話は聞いた事無いぞ。チューギーはいきなりのリッチマンの発言に驚いたが、リッチマンは構わず続ける。


「実はですね、ノルヴェ村の中に宝石と偽って、よく似た加工石を販売している不当な輩がおりまして、私も実は以前にノルヴェ村に行ったときに、その石を騙されて買ってしまいましてね。しかもかなり大規模な犯罪で各国にまで偽の宝石を密輸しているらしいのです。」


「本当なのか、その話は?」


役人が問いただす。チューギーは何の意図があってリッチマンがそんな話をしだしたのか分からなかったが、役人も今のリッチマンの話は疑っているようだ。


「さぁどうでしょう?」


「貴様、役所を愚弄しているのか?」


「いえいえ、そんなつもりは毛頭ありません。ですからね、ぜひ、王都フランの役所の力で、事の是非を確認して頂きたいのです。偽りの宝石を販売しているかもしれない輩はノルヴェ村の住人の誰か。しかし、私には誰がそのようなことをしているのかまでは分かりません。そこで・・」


「本気で言ってるのか!?」


「本気ですか、リッチマン?」


リッチマンの提案に、役人とチューギーはほぼ同時に声を張り上げる。リッチマンは偽りの宝石を売っているのは村人達の誰かであり、それを問いただすため、村人全員を一時的に参考人として取調室に連れてくるように提言したのである。


リッチマン視点ではこうだ。まず偽りの宝石などという話は、当然ながら、はなからデタラメ。そもそもリッチマンはノルヴェ村でも他のどこでも、宝石自体購入した事など一度も無い。だが、問題はそこではない。


偽りでも何でも、まずはノルヴェ村の村人を王都フランの役人によって連行させるという行為が重要なのだ。ノルヴェ村の人々を救出するのに、真っ向からタイタンやゴクアの私兵団を相手にするのは無謀。


それにライラの話では、ノルヴェ村の住人はゴクアにどんな酷い目に遭わされても、村から出ようとしないとのことだった。もちろん、ゴクアの私兵団やタイタンの目が光っているからというのが一番大きな理由だろうが、それだけではない。


ノルヴェ村の住人は先祖代々、ノルヴェ村に住み続けており、そこから外の世界に出る勇気がないらしい。とくに年配の方々はその傾向が顕著で、住み慣れた土地を離れるくらいなら、このままゴクアたちの言いなりになっていた方が幾分ましだと考える者がほとんどとのことだ。


こういった人々を救出しようと思ったら、説得するだけでは無駄だろう。しかしだからと言って何もしなければ、当然何も変わらない。一時的とは言え、強制的に村から連れ出す必要がある。それも公的な機関による強制力が望ましい。ゴクアの私兵団やタイタンが手を出しづらくするためだ。


そこで偽の宝石売買や密輸の罪を偽り、フランの役人が動くための大義名分を与えたのである。もちろん、そもそもが虚偽の申告であるし、仮に本当であったとしても、偽の宝石売買程度で実際に王都フランの役人が動いてくれる保証など無い。しかし、チューギーの話と合わせれば別。


村人達の過酷な現状、そして偽の宝石売買と密輸。フラン側としても最低限、真偽を確かめずにはいられないだろう。そして一度でもノルヴェ村に訪れてみれば、現状は明らかだ。


現にリニア救出の際に、リッチマンがカシワやカルロスたちと一緒にノルヴェ村を訪れたときも、一目見ただけで村人達の異常な様子にはすぐに気づいた。いや、気づく気づかないの問題ではなく、誰がどこから見ても明らかに異常な状態なのだ。


そこで自分やランシアがさらに役所に説得を加えれば、必ず役所の人間に、村人達を保護させるように説き伏せる自信がある。だが、保護という名目ではゴクアたちの心証を悪くし、おそらくは邪魔されてしまうだろう。だから、逮捕という名目で村人達を一時的に隔離してもらい、村人達の安全をまずは確保する。タイタンやゴクアを片付けるのはそれからだ。


問題なのはリッチマンが宝石の件で、偽証罪に問われる可能性だが、それもおそらくは回避可能のはずだ。実際にノルヴェ村の宝石を一つ購入し、それらしい傷をつける。後で偽物だと思ったらやっぱり本物でしたと証言する。もちろんそんなのすぐに見破られるだろうが、それでいい。


全てはノルヴェ村の住人をゴクアたちから解放してからだ。リッチマンは意を新たにし、役人にノルヴェ村への視察団の派遣と、村人の逮捕についての説得を続けた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ようやく砂嵐を抜け出し、ランダ村に戻ってきたカシワたちは、ラクダを返し、馬車をレンタルするべく馴染みの店に向かう。前回はリニアを助けてすぐに村を出たが、今度はタイタンを足止めする期間ノルヴェ村の付近に滞在する事になる。食料もある程度、自前で用意する必要があるだろう。


馬車をレンタルする際に、最低限の備蓄として、保存の効く固めのパンと干し肉が用意されてはいるが、分量も限られている。それと薬なども、あれば購入しておきたい。現時点では回復魔法を使えるのはリアだけなので、こちらも備えがあるにこしたことはない。


タイタンも問題だが、ゴクアの私兵団の数も相当厄介だ。一人一人なら何とでも出来るだろうが、全体で何人いるかも把握出来ていない現状では、常に警戒を怠らず対処して行く必要がある。


もっとも、ゴクアの私兵団の全てがノルヴェ村に集結しているなんてことは、さすがにありえないだろうし、タイタンがいる分、もしかしたら私兵団の数はそれほど多くないかもしれない。だがこちらの味方は現状、俺、リア、カルロス、レナの四人だけだ。


ひとまずノルヴェ村から少し離れた場所まで行き、ランシアたちや、リッチマンたちと相談してから行動する事にしよう。


「じゃあ、ラクダ返したら、とりあえず皆で必要品を買いに行くとするか。」


「だな。それとよ、ここら辺の地図が手に入るんなら、そいつも買っといた方がいいかもな。」


「おお、そうだな、カルロス。たまにはいいこと言うじゃん。」


「たまにはは余計だ。いいからとっとと行くぞ。」


俺たちは準備を整え、馬車をレンタルし、再び砂漠の旅へと繰り出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。