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気まぐれ異世界遊戯  作者: yoshi
第五章 極悪貴族と姉妹の幸せ
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船内飲み比べバトル

「ふぅ〜、やっとこさ、ついたべや。長かっただ〜」


「カシワ、それどこの方言だよ?」


「さぁなぁ、カルロス、おら知らねぇだぁよ。砂の道に海の道だべ。疲れちまっただ〜よ」


「カシワって時々意味不明な発言するのよねぇ。だからからかわれるのよ。もしかしてカシワってMでしょ?」


「うっ・・リア、俺は何度も言うが、決してからかわれるのが好きなわけじゃないぞ。」


「どうだか。案外、喜びを感じてるんじゃないのか?」


「リッチマンまで何言ってるんだよ!?」


とまぁなんだかんだあったものの、カシワたちを乗せた船は、ようやく港町ハーバーについた。予めミワ姉には念話で連絡しておいたので、皆、桟橋付近で待っているはずだ。ここではリニアとライラ、それとチューギーだけを降ろして、カシワたちは船に残る。


本当はカシワたちもハーバーでの観光を楽しみたかったのだが、ノルヴェ村の他の人々を救出するため、ライラたちをミワ姉の元に送り届けた後、再びUターンしてまたノルヴェ村に戻る予定だ。また、ライアンさんもそろそろ本来の気球の添乗員としての仕事に戻らなくてはならないため、ここで下船することになっている。


皆とも相談し、ここでは、ライラ、リニア、チューギー、ライアンさん、それとリッチマンを降ろすことになった。ミワ姉は一足先に喫茶満腹亭に戻り、グラ爺の手伝いをすることになっている。リッチマンとランシア、ニーナはこれから王都フランに行く。ゴクア達を追い詰めるため、フランの役所相手に一交渉するつもりだ。


フランにはチューギーさんも同行する事になった。ノルヴェ村での惨状を伝える生き証人として、協力してくれるらしい。


カシワとしては、本当はミワ姉とも旅行を楽しみたかったのだが、さすがにこれ以上グラ爺一人に満腹亭の仕事を任せるのはまずいだろう。エルドォワ祭以降、確実に客足も増えてきているので、一人で切り盛りするのは、少々大変だ。


それにグラ爺もそろそろいい年だ。元気ではあるし、料理の腕は申し分ないのだが、やはり体力面を考えると一人で店をやるのは辛いだろう。旅行なら、また今度くればいい。今度はグラ爺も誘って、満腹亭のメンバーで旅行するのもいいかもしれない。俺たちはライアンさんやライラたちに別れを告げる。


「ライアンさん、ここまで俺たちにお付き合いくださり、本当に有り難うございました。もう正直気球なんか乗りたくないとも思ったんですが、ライアンさんが添乗してくださる気球なら、また乗ってもいいと思います。なぁ、リア?」


「うん。ライアンさんなら安心できるよ。また今度旅行に来たときは、添乗員としてライアンさんを指名するね。そのときは宜しくお願いします。」


ライアンさんは嬉しそうな、照れてるような表情を浮かべ、俺たちに最後に握手してきた。


「私の方こそ、カシワさんやリアさんのような方をご案内できて良かったですよ。それにライラさんも。今回、天候の行く末を見誤り、お三方を思わぬ形で危険な目に遭わせてしまい、誠に申し訳ありませんでした。また今度いらしてくださるときは、責任を持って、素晴らしい気球の旅を提供する事をお約束します。それでは皆様、私はこの辺で失礼します。」


俺たちはライアンさんを見送る。そういえば海賊のディアナがライアンさんに惚れてるんだっけ?ライアンさんも相当強いし、もしこの先二人が結婚したら、相当逞しい子供が産まれるんだろうなぁ。

次はライラとリニアさんだ。


「ライラ、リニアさん。ノルヴェ村の人たちのことは、俺たちに任せてください。きっと助けてみせます。」


リニアさんは、俺たちを不思議そうに見つめる。


「何故、そこまでしてくださるんですか?元々私もライラも赤の他人なのに。こうして私やライラを助けて頂いただけでも、いくら感謝しても足りないくらいの恩があるというのに。」


「リニアさん、もう俺たちに取っては、ライラもリニアさんも他人ではありませんよ。旅先で見つけた大事な仲間です。その仲間が困っている。助けるのは当然じゃありませんか?それにリニアさん、このままだとノルヴェ村の人たちを助けるために、また村に戻っちゃうでしょ?」


「そんなこと・・いや、そうかもしれません。でも、危険ですよ?タイタンもゴクアも通常の神経の持ち主ではありません。皆様の身に危険が及んでしまいます。」


「かもしれませんね。でも、ここで何もせず、あなたやライラがまた不安を抱いたまま、生活していことの方がずっと辛いですよ。大丈夫、こう見えても、俺たち意外に、こういうシチュエーション慣れてるんです。リニアさんとライラはこの街で待っていてください。ここまではゴクアたちの私兵団もやってこないでしょうし。」


「皆さん・・あの、せめてお身体だけは気をつけてください。もし危険だと思ったら、私達のために無理などしないでください。」


「分かってますよ。リニアさんはライラとこの街で、自由な生活を、思う存分満喫していてください。」


「ボクも礼を言うよ。またこうして姉さんと出会えるなんて思ってもなかった。皆、姉さんの言う通り、無理しないでね。ちゃんと無事で帰ってきてよ。」


「ああ、心得ているよ、ライラ。リニアさん、ノルヴェ村の人たちを助けるまで、もう少しだけ待っていてください。」


俺たちは、ライアンさんやライラ、リニアさんに見送られる中、再びそれぞれの旅路につくことにした。ノルヴェ村に向かうのは俺、リア、カルロスの三人。王都フランにはリッチマン、ランシア、ニーナ、チューギーが行くことになる。ミワ姉は一足先に喫茶満腹亭に戻り、ライアンさんは本来の気球の添乗員としての仕事に戻る。ライラとリニアさんは港町ハーバーで待機だ。


「それじゃあ行ってくる。」


「お互い気をつけてな。」


俺たちは互いに互いを見送った後、再び船室に戻った。船旅にももう大分慣れたもので、今では船室をいつものミス研の部室のように使用している。船にはカウンターバーなども備え付けられており、カルロスはカシワとリアに気をつかって、一人でその船内のバーで飲んでいた。


カルロスの飲みっぷりに惚れた他の客達が、飲み比べ勝負を挑んできたりもしたが、ウイスキーやウォッカですら、水と同じように飲み干すカルロスを見て、途中で勝負を降りた。今ではカルロスがどのくらいまでいけるのかを、見守る観客達がカルロスの周囲を囲んでいる。


カルロス自身も酔いつぶれる心配こそ無いが、懐の金銭事情からそこまで飲む気はなかったのだが、周囲の観客達の”酒代は俺たちが持つから、どこまで飲めるのか見せてくれ”という力強い後押しにより、もはや財布の心配をすることなく、遠慮なく好きなだけ飲んでいられた。


「お客様、そろそろお止めになった方が宜しいのではありませんか?」


バーテンダーでさえも心配する。このままカルロスに飲み続けてもらった方が、店の収益としては有り難いのだが、もはや樽一つ分を丸々空にしてしまいそうな、カルロスの飲みっぷりをみて、さすがにまずいと感じ始めていた。


もっともバーテンダーの心配は一般の乗客を基準にした場合の常識的な判断に基づくものである。カルロスにとっては杞憂に過ぎないだろう。カルロスからしてみれば、これでもまだ押さえている方なのだ。


「心配するな。それよか、もう少しきつめのはねぇのか?こんなんじゃ、いくら口に入れても飲んだ気がしねぇよ。」


「本当に宜しいのですか?一番アルコール度数の高いものでしたら、スピリタスなども用意しておりますが・・さすがに止めておきますか。後は、こちらのマッカランの17年ものなどはいかがでしょう?度数も43度とそれなりにあると思いますが。」


「おう、じゃあそいつを頼むわ。」


カルロスの酒代を約束していた周囲の客の顔が一瞬だけ引きつる。度数もだが、値段もそれなりに高いだろう。だがそれでも、17年ものなら、マッカランの中ではまだ比較的安価な方ということもあり、カルロスが飲み続けるのを止めようとする者はいなかった。


「なかなかいい飲みっぷりじゃないか?どうだい、今度はあたしと勝負しないかい?」


カルロスが振り返ると、黒のブーツに革のジャケット、シルバーのブレスレットを身につけた女がカルロスの方を見ていた。髪はピンクと緑が入り交じっており、ウェーブ状になって、二の腕くらいまでかかっている。


派手な格好とは裏腹に化粧はあまりしていないようだった。口紅が若干濃いめのルージュを使用していて、目の下にラメの装飾が少しだけある程度だ。


「止めとけよ。俺のせいで女が潰れちまったら、酒がまずくなっちまう。」


「言うじゃないか?まぁそれだけ飲めるんなら、自信も出るか。だったらどうだい?もし私があんたに勝ったら、私の頼みを一つ聞くってのは?」


「俺が勝ったら、なんかしてくれんのかよ?」


「もちろんさ。あんたが勝ったら、私を自由にしな。どうだい?」


カルロスは目の前の女を観察する。鼻がつんととがっているが、目や口とのバランスもよく均整のとれた顔立ちだ。胸はあまりないようだが、その分スタイリッシュで、くびれの形もはっきり見える。好みは分かれるところだろうが、美人である事に間違いは無いだろう。


「女が気安く自分を自由にしていいなんて言うもんじゃねぇぜ。だが、勝負は受けてやる。何でもいいぜ、あんたの得意な酒を注文しな。」


「じゃあ、スピリタスをグラスで。」


バーテンダーも周囲の客が一斉にざわつく。これにはカルロスも驚いた。いくら酒の強いカルロスでもアルコール度数が96を超えるような酒をグラスで飲むような事はない。


「おい、本気か?今更引っ込みつかなくなったとか思って無茶してんなら、遠慮はいらねぇ。ここであんたが降りても、別に責めたりしねぇぜ。もちろん、あんたを自由にするようなこともしねぇ。」


「そっちこそ、ビビったのかい?御託はいいから、とっととグラスを用意してもらいな。会話は後だ。飲み比べなんだから、物を言うのは、空になったグラスの量だけだよ。」


カルロスと女性の飲み比べが始まった。スピリタスをグラス単位でどんどん空けて行く様子に、もはや観客は応援というよりは絶句状態になっている。だが、それでもこの場を立ち去ろうとする者はいなかった。それどころか、どんどん周囲の乗客たちの数が増えて行く。


二人とも負けを認める様子は無い。突如として開始された船内のスピリタス飲み比べバトル。一度は絶句していた観客達だったが、時間を追うにつれて再び、熱狂を帯びて盛り上がっていった。

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