↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
気まぐれ異世界遊戯  作者: yoshi
第五章 極悪貴族と姉妹の幸せ
PR
65/82

ミス研女子メンバーの午後の優雅な一時


無事、リニアさんを救出したものの、俺たちにはまだ課題が残っていた。リニアさんを本当の意味で安心させるためには、残された村人達も救う必要がある。そのためには結局、領主タイタンと貴族ゴクアを何とかしなければならない。だがまずは、リニアさんとライラをこの村から離れた場所に移す事が、先決だろう。


「ライラ、リニアさん。残された村人達のことは俺たちに任せてください。とりあえず、お二人はここから一番近いランダ村という場所に、連れて行こうかと思います。ランダ村から港町ハーバーまでは船がでていますので、しばらくはハーバーで待っていてもらえますか?俺たちの仲間もハーバーにいるんで、向こうに着いたらリニアさんたちと合流するように連絡しておきますから。」


リニアさんは俺たちの方を見返す。妹との再会、そして一旦は裏切られたと思ったチューギーの真意を知り、泣いたり、笑ったりと、興奮状態が続いていたようだが、やっと少し落ち着いたようだ。


「あの・・あなた方は一体、どういう方なのですか?もしや神様の使いとか?」


リニアさんの言葉を聞いて、俺たちは思わず吹き出してしまった。


「いや、違いますよ。そんな大それたものじゃないです。俺たちはただ、ライラの友人ってだけですよ。ライラがあなたを助けたいって言ったから、協力した。ただそれだけです。」


俺がリニアさんに告げると、カルロスも加わる。


「そうそう、だから気にする事ねぇぜ?俺たちが好きで勝手にやったことなんだからよ。」


「リニアさん。あなたは今まで辛い思いをたくさんされてきたと思います。人生ってね、幸福と不幸の合計量は一緒になるらしいですよ。今まで不幸だった分、これからは幸せが待ってるはずです。リニアさん自身がこれから楽しい人生をめいいっぱい生きていけばいいんですよ。」


「リッチマン、最後においしい台詞さりげなく持ってくよなぁ。」


「なんだよ?俺はただ思った事を口にしただけだろ?からかうなよ。からかわれるのはカシワの役目だろ?」


「ちょっと待て、リッチマン。俺がいつそんな役目を負う事になった?」


「からかわれるのはカシワの専売特許だもんね〜」


「リアまで何言ってるんだよ!?そんな専売特許いらん!」


俺たちが言い合いを始めたのを見て、リニアさんも同じように吹き出した。やっぱ笑うと可愛いな。元が美人なだけに、素敵な笑顔だ。実に心が洗われる。俺がからかわれ続けてるという点を除けば、何の文句も無い。


「皆さん、本当に有り難うございました。ライラ、あなた、こんなに素敵な友人が出来たのね。」


「姉さん、これからはずっと一緒だよ。あ、でもチューギーさんとのお邪魔になっちゃうかな?」


「もう、バカ言ってないで、早く行きましょ。ほら、ライラ、馬車に乗って。」


「あはっ。姉さんでも照れることあるんだ。」


「いいから行きなさい!」


俺たちは全員馬車に乗り込んだのを確認し、再びランダ村に向けて砂漠の旅へと乗り出した。スフィンクスさんとの約束はもう少しだけ、後回しにさせてもらおう。ノルヴェ村の残りの村人達を助けるまで、悪いけど待っててくれ。


帰りの道は、行きと違って、皆もうけっこう砂漠の旅に慣れており、急激な気温差なんかも、ある程度耐性がついてきた。それでも日中の日差しと夜の冷え込みは相当なものだったが、別段魔法など使わなくても、日中は馬車のホロの天井部分に毛布を貼付けて日差しを防いだり、夜は逆に毛布を下に敷いた状態で、上からさらに毛布をかぶるなどして暖がとることで、ある程度対応できた。


想定していた砂嵐や砂漠のモンスターなども、幸い遭遇する事無く、無事ランダ村へと到着した俺たちは馬車を業者に返し、馬車内の清掃料金や備蓄されていた食料のうち消費した分などの追加料金を払い、再び船に乗って港町ハーバーへと向かった。


今度は海賊船などにも出会わず、順調な航路を満喫することが出来そうだ。そうだよな。これが普通の旅行なんだよな。すっかり忘れがちだけど、俺たちは本当はミス研の慰安旅行として、初の海外旅行に来てただけなんだよな。


それが、飛空挺内のカジノ騒動に始まって、電車の爆破テロ騒ぎだの、気球に乗れば、とんでもない強風にあおられて、空に放り出されるだの、船に乗れば海賊船に遭遇するだの、どんな災難続きだよ。


だがそのおかげで、少なくともライラやリニアさんを助ける事が出来たし、ついでにチューギーとかいう騎士も、成り行きとは言え村から連れ出す事が出来た。不幸と幸福の合計量は一緒か・・案外、俺たちの旅にも当てはまってるのかもしれないな。


デッキに出て潮風にあたってると、リアが隣に近寄ってくる。リアのやつ、また髪が少し伸びたようだ。今は肩ぐらいまで、髪がかかっている。特に特別な手入れなどはしておらず、ストレートに伸ばしているだけなのだが、元々髪質がいいのか、太陽の光が反射してきらめいていて、すごく美しい。


「リア、こうしてみると潮風ってのも気持ちいいな。」


「うん。でも肌にも髪にも悪いから、女性にとってはあんまり良くないんだけどね。でも、こうしていると、すごく解放された気分になる。」


「リアの髪、触ってもいいかな?」


「・・いいよ。けっこう伸びたでしょ?このままロングヘアになるまで、伸ばすのもありかなって思ってるんだ。カシワはショートとロングどっちが好き?」


「ロングかな。でも、リアならどちらでも綺麗だと思うし、俺はどっちのリアも好きだよ。」


「もうっ、カシワ、また女たらしになってる。でも、嬉しい。えへへ。カシワとこうやって、二人で海を眺めるのも旅行の醍醐味だよね。」


「リア・・」


俺はリアと手をつなぐ。リアが俺の方を向いて目を閉じる。俺はリアに口づけをする。やっぱり、リアの唇はいつも柔らかい。俺はそのままリアを抱きしめ、しばらくの間、太陽が照りつける中、潮風に煽られながら、船のデッキにたたずんでいた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ねぇニーナ、ランシア、さっきカシワから念話があったんだけど、無事、リニアさんを救出できたみたいね。」


ミワは二人に、とりあえず作戦の第一段階が成功した旨を告げた。ニーナもランシアも安堵する。ランシアには、元々リニアを助けるだけなら、カシワが気体になれることを利用すれば、大したことではないという目論みはあったが、魔法が通用しないというタイタンだけは警戒していた。


だがタイタンにも、未知の魔法である無属性魔法については、予備知識がないだろうから、そもそも人が気体になれるという考え自体がないであろう。それに万が一魔法を見破られたとしても、さすがのタイタンも空中には手をだせまい。そう考えての計算だったが、思いの他、イレギュラー要素もなく上手くいったようだ。


今、三人は港町ハーバーのシーサイドカフェで、港から行き交う船を眺めながら、これからのプランや、港町ハーバーの街にある店やこの街での出来事などについて相談している。いや、相談というよりは軽い女子会というべきか。カシワ達の到着は明日になるから、今日はまだハーバーでの旅行を楽しめるはずだ。


本当なら今頃はニーナの立てた旅行プランに従って、海外旅行を満喫していたはずなのだが、それはもう仕方ないだろう。ハーバーでも、それなりにショッピングを楽しめたし、大規模な港町ならではの、様々な食事を堪能する事もできた。


カシワたちが砂漠を横断している間、ミワは喫茶満腹亭で使用できそうな食器類をいくつか購入し、グラ爺へのお土産として、市場で購入した魚介類を満腹亭宛に航空郵送してもらう手続きもとった。飛空挺を使っての特別郵送となるため、通常の郵送料金に比べると少々割高だが、その分、冷凍保存をきっちり行い、新鮮さを保ったまま安全に届ける事が出来る。


ニーナはこの街の交通事情や、物資の運搬方法、商業取引の様子などを細かく観察していた。将来、ハマーンの元で商人として修行するにあたって、こういった港町での貿易の様子などは見ているだけでも学ぶ事は山ほどある。


時間さえあれば、取引に携わる人々に色々話も聞きたいところだが、さすがにこの旅行中にそこまでは無理だろう。それでも市場で仕入れた食品の保存方法から関税、密輸防止の方法など気になったところは、なるべく聞き出すようにしていた。


ハマーンは武器商人ではあるが、武器だけを取り扱っているわけではない。また、ニーナ自身も武器の扱いよりは、他の物資の取り扱いの方に興味を持っており、将来的にも、そちらの方面での商いが出来ればと思っている。


その一方で、ランシアの方は旅行先でもナンパ目的の男達をあしらうのに苦労していた。元々ランシアは性格はともかく、見た目は魔法大学内でも五指に入る美人だ。普通に歩いているだけでも、行き交う男どもが次々に振り返り、ランシアに声をかけてくるものが後を絶たない。


中にはタチの悪い輩もいたが、ランシアはそういった輩を理論的にやりこめ、暴力に出てくる輩には、容赦なく闇属性の魔法などで迎撃する。ランシアは闇と邪の属性の魔法の扱いだけなら、他の誰をも超える紛れもない天才だった。


当然、街のチンピラ風情がどうこうできるわけはなく、ランシアを弄ぼうとした下衆どもは、逆にランシアに弄ばれ、二度と街を自由に歩けなくぐらいに、公衆の前で、面子をボロボロにされていった。おかげで港町ハーバーの治安向上にまで、貢献したのだが、それはまた別のお話。


「まったく・・リッチマンも彼らの十分の一でいいから、私にアタックしてくれればいいのに・・」


ランシアは誰も見ていないところで、そっと呟く。だがリッチマンは頭脳は明晰で、容姿も端麗、戦いのとき以外は性格も温厚だが、類い稀なる鈍感の持ち主だ。日常生活でも普段から相当もてているのだが、リッチマン自身はそういった感情には全く気づかない。


ほぼ毎日のようにリッチマンに勉強を教えてもらいにくる女生徒が現れるが、リッチマンは勉強の内容のみを丁寧に教える事に務め、それ以上の事は決してしようとはしなかった。というより、女生徒の意図などまるで気づかず、純粋に勉強が分からないから教えてもらいにきているのだと、思い込んでいる。


もてない男からは、ひがみややっかみもくるが、リッチマン自身はカルロスとも互角に戦えるほどの強者であるため、手を出すやつはいない。また、ランシアの研究の内容についていける数少ない理解者でもある。


元々ラテラルシンキングを得意とするランシアは、リッチマンの論理的な考え方に感心する事もあり、魔法理論体系や数学、物理学などの理論を談義しているうちに、いつの間にか、リッチマンのことが好きになっていた。


なんどか、さりげなく含みを持たせた言葉を投げかけてみたのだが、当然のごとくリッチマンは全く気づかない。そんな鈍感なリッチマンに時々不快感を覚える事もあったが、やはりリッチマンと一緒にいる時間は楽しかった。ランシアがそんな考え事を一人で悶々としながらシーサイドカフェでカプチーノを飲んでいると、いつもの聞き慣れた声がかけられる。


「あ、またぼぉーっとしてる。ランシア。もう今度はどんな妄想世界に行ってたのよ?また、ナンパされてた時のことでも思い出してたの?ねぇ一人でいいから、声かけてくる男の中によさそうなのがいたら、こっちにまわしてよ。」


「ニーナ、言っとくけどね。こんなところで声かけてくる男なんて大概碌なのいないわよ。だいたいニーナは自分を低く見すぎよ。ニーナなら、もっといくらでもレベルの高い男をゲットできるって。」


「それが出来ないから苦労してるんじゃない。あーあ、いいなぁランシアは。美人だし、頭もいいし。しかもお金持ちだもんね。私もランシアになりたいなぁ。」


「なにバカなこと言ってるのよ?ニーナは私なんかよりずっと魅力的よ。しっかりしてるし、度胸もある。結婚したら、間違いなく良妻賢母になれると思うわ。」


「度胸はあんまり関係なくない?」


「そうだっけ?」


ニーナとランシアは互いに顔を見合わせて笑い合う。二人が話している間、ミワはシーサイドカフェの通りの向かいにある店に飾ってあるインテリアを、カフェの窓ごしに見て、見とれていた。


「ミワ、何かいいのあった?」


ランシアが尋ねると、ミワは首を縦にも横にもふる。


「どっちなのよ?」


「あそこのステンドグラスなんか素敵だと思うんだけどね。値札を見てよ。」


ランシアとニーナが窓越しに向かいの店のインテリアに貼ってある値札を見る。そこには金貨三枚とかかれている。


「なによ、私達全員分の旅費よりも高いじゃない。ぼったくりよ、こんなの。」


「でも、見て。あのデザイン、クォリティーは相当高いわよ。細部の色彩まで、しっかり描き込まれてるわ。」


「もう、そんな気になるなら、こんなところから見てないで、直接行ってみればいいじゃない。」


「そこまではいいわ。ここのシナモンティーすごく美味しいし。後二杯くらい飲みたいもの。」


「確かにここは料理のレベル高いわよね。とりたての海の幸も豊富だし、貿易の拠点だから、世界中から色んな物資や食材が集まってくるしね。」


「また、今度こようよ。次こそは本当の観光旅行として楽しみたいものだわ。」


「まったくよね。でも、これはこれでいいんじゃないかしら?もうしばらく女だけで楽しみましょうよ。」


ミワたちの女子会はまだ少しの間続く。カシワらがノルヴェ村でリニアを救出したり、砂漠の旅を苦労している間、リアを除いたミス研女子メンバーは港町での休日の午後を優雅にお茶を飲んで過ごしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。