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気まぐれ異世界遊戯  作者: yoshi
第五章 極悪貴族と姉妹の幸せ
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ランダ村到着


「おはよう、よく眠れましたか?」


目が覚めると、同じ倉庫室にいたグエンが話しかけてきた。


「ええ、おかげさまで。」


辺りが眩しい。ここからでも日差しが差し込んできているのがよくわかる。もう昼過ぎぐらいだろう。疲れもほとんどとれたようだ。俺は軽く手足を伸ばしてストレッチをし、深呼吸してみた。なんか倉庫の中だからか、埃っぽいな。深呼吸ならデッキですればよかった・・


「さてと、それじゃそろそろ行きますね。毛布はどこに返せばいいですか?」


「そこの置いといて頂いて結構ですよ。それじゃ良い一日を」


うーん・・海賊でしかもスパイ行為みたいなのやってる人に良い一日をなんて言われてもなぁ・・でも、この人含めて、ここの海賊達は自分たちの独特の信念みたいなの持ってるんだろうな。法律は守らないけど、自分たちで決めた掟や不文律には忠実みたいなさ。


結局、昨日寝る前に正義とはなにかなんて、らしくないこと考えてみたけど、案の定答えなんて出なかった。結局こういう答えの無い問いかけみたいなのって哲学とかの領域になるから、正解って言うのはないんだろう。


デッキに出てみると、すでに太陽が高々とその存在を主張しており、海面が光を反射して眩しい。夜はけっこう冷え込んでたのに、今は半袖でも暑いくらいだ。何日かこういう生活を続ければ、間違いなく日焼けして、かなり別人っぽくなるんだろうな。


「あっカシワ、おはよう。やっと起きたのね。」


「ああ、リア。おはよう。おかげさまでよく眠れたよ。そっちはどう?」


「私もぐっすり。ディアナとライラはまだ眠ってるみたい。あら?カシワ、寝癖ついてるわよ。あはは、可愛い。」


えっ?俺は慌てて自分の頭に手をやる。そういえば、この船乗ってから鏡なんてもの見たこと無かったな。


「私の手鏡でよければ貸してあげようか?」


「あ、ああ、頼むよ。」


俺はリアから手鏡を借りて、手ぐしで寝癖の部分だけ整えた。そういえば、風呂にも入ってないんだよな。まぁ一日二日ぐらいなら入らなくても大丈夫だろうけど、ここは海の上だし、潮風で髪がべとついてるかもしれない。


「ありがとう、リア。返すよ。」


俺はとりあえずリアに手鏡を返し、顔だけでも洗ってくるかと調理場で水を借りる事にした。


「おう、カシワ、やっと起きたか。」


「おはよう、カシワ。」


カルロスとリッチマンも起きたようだな。結局何時間ぐらい寝てたんだろう。時計が無いから分からないけど、もう大分時間が経ってるはずだ。ライアンさんも俺たちの方にやってきた。


「皆さん、お揃いですか?ライラさんとディアナさんはまだみたいですね。朝食・・というか昼食の用意ができてるみたいですよ。船内の広間の方に行ってみてください。」


「あ、どうも。それじゃ、ライラとディアナも起こした方がよさそうだな。」


「じゃあ、私が起こしてくるよ。ちょっとここで待ってて。」


リアがライラとディアナを起こしに行ってる間、俺は昨日のグエンさんの話を皆にしてみた。


「なるほどな。だが、正義がどうのってのは俺たちの問題とは関係ねぇだろ。今はライラの姉貴のリニアを助ける事だけ考えときゃいいんじゃねぇのか?」


「そうだな。それになるべく急いだ方がいい。もうとっくに、リニアさんがライラを逃がした事は、ゴクアたちに知られてるだろうし。もたもたしてると取り返しのつかないことになるかもしれない。カルロスの言う通り、今はリニアさんを助ける事だけに集中するべきだろう。」


カルロスやリッチマンの言う通りだな。リニアさん、まだ生きていてくれよ。もうまもなく船はランダ村につくだろう。次は砂漠超えか・・徒歩じゃ無理そうだから、ラクダか馬車を借りることになっているが、それでも時間はかかるはずだ。内心ではライラが一番焦ってるかもしれないな。俺たちは船を降りる準備を整えつつ、リアたちと合流し、昼食の用意されている広間の方へ向かった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「リニアさん、今のうちに出来れば逃げてほしいが、俺の力じゃどうすることも出来ない。すまん。」


チューギーはリニアに頭をさげる。ゴクアに仕える身である騎士チューギーはゴクアから言われた言葉を思い出す。


”一月待ってやる。おまえ、そのリニアとか言う娘を手なずけてみろ。そしてひと月後、リニアが安心しきったときに、皆の見ている前で、おまえのその剣でリニアを刺し殺すのだ。”


チューギーは主君がどのような人物で、課された使命がなんであれ、主君の意思を全うすることを尊しとしていた。だが、ゴクアの命令に従う事は、あきらかに騎士道精神に背くものだ。いっそ、リニアではなく自分自身を刺せと命令された方がまだ楽だったであろう。


リニアにはゴクアの発言をもう伝えてある。せめて安心しきったときに刺すのではなく、予め覚悟を決めてもらった方が、まだましだろうという思いと、今の自分にはリニアのために出来ることはそのくらいしかないという歯がゆい思いに、チューギーは苛まされていた。


「チューギーさん、あなたのせいじゃないわ。私なんかのためにあなたが苦しむ必要なんてないわよ。あなたはゴクアの命令通り、時が来たら私を刺してくれればいい。下手に私を逃がしたりなんかしたら、あなたまで危険に晒される事になる。そっちの方が申し訳ないわよ。」


リニアは驚く程気丈で優しい女性だ。いっそ仕える主君を自由に取り替える事が出来れば、どんなに楽であろう。しかし、チューギーにはそれが出来なかった。チューギーにとって主君に仕えるというのは、善悪や利害などの何よりも優先すべきことなのだ。だが、リニアのような女性を手にかける事もまた、出来そうにない。そうだ。やっぱり自分にはリニアを刺すなんて無理だ。だが、どうすればいい?


「すまんな。俺にもっと力や知恵があれば、リニアさんを助け、ゴクア様の心を改めさせることも出来るのだろうが、残念ながら俺にはどちらも無いようだ。自害する事すら許されていない。俺が自害すれば、さらにノルヴェ村を過酷な惨状にすると言われている。何か今のうちに俺に出来る事があれば何でも言ってくれ。リニアさんを処刑する日までの間、俺はリニアさんのために何が出来る?」


「ありがとう、チューギーさん。なら一つだけお願いしてもいいかな?」


「なんだ?遠慮はいらない。自害は出来ないが、リニアさんが俺を許せないなら、いくらでも俺を殴りつけてくれても構わない。」


「だったら一つお願いするわ。私のために自分を責める事はもうやめて。これだけよ。」


「リニアさん・・」


・・ダメだ。やっぱりリニアさんを処刑するなんて絶対に間違ってる。こんな立派な人を刺したら、俺はもう騎士ではなくなる。ただの外道、いやそれ以下だ。しかしゴクア様の命令は絶対だ。だがその命令になんの意味があるというのだ?いや、騎士とは主君の命令の価値や意図など考えず、忠実に任務を遂行するもの・・


チューギーは悩み続ける。リニアを処刑する日は刻一刻とせまっている。いつかノルヴェ村を覆っている闇を取り払う日はくるのだろうか?チューギーは何度も天を仰いで、神の奇跡を祈り続けていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「見えたぞ、あれがランダ村だ。」


高台から陸の様子を見ていた船員が声を上げる。やっと着いたようだな。俺たちは皆揃って、ディアナやマゼランに別れの挨拶を告げる。


「ありがとうございました。後、宝石の件、どうか宜しくお願いします。」


「ああ、任せておけ。それとな、これを持って行け。」


マゼランがディアナに顎をクイっとさせる。ディアナが俺たち全員にひとつずつ、ブレスレット状になっている水晶の飾りのようなものを手渡した。


「そのアクセサリーは道しるべの雫と言われるものでな。そいつを身につけていれば、どれだけ離れていようとも、お互いの位置を把握出来るっていう優れものだ。おめぇさんらがゴクアとやりあうんなら、役に立つかもしれねぇと思ってよ。」


「でもこれって結構な値段がするんじゃないですか?」


「バーカ、海賊相手に、んな細けぇこと気にしてんじゃねぇよ。おめぇさんらはディアナの命の恩人だし、友人でもある。ディアナのやつ喜んでたぜ。やっと対等に付き合える相手を見つけたってな。」


「ディアナ・・」


「そういうこと。それにもしゴクアがあんたたちを手にかけるようなことがあれば、あたいがゴクアをぶっつぶしてやるよ。だから安心して無茶してきな!」


「ありがとう、ディアナ、マゼランさん。そういうことなら有り難く頂きます。それじゃ、色々お世話になりました。」


「おうよ。ゴクアなんかに負けるんじゃねぇぞ。野郎ども、客人を丁重に見送りしろ。」


海賊達が俺たちの左右に列をつくり、一斉に持っている剣を斜め上方に傾ける。剣でアーチが出来上がる。俺たちは剣のアーチの下を通って、船を降りて行った。


すげぇ・・なんか盛大だな。海賊にこんな風に見送られる日がくるなんて思わなかったよ。船を降りた後も、俺たちはディアナやマゼランの姿が見えなくなるまで、海賊船に手をふりつづけた。よし、なんかテンションあがってきたぞ。とっととノルヴェ村行って、リニアさん救出しなきゃな。


ランダ村は、王都フランや港町ハーバーに比べると、それほど住人の数は多くなく、比較的古くて情緒あふれる街だ。娯楽施設などは少ないが、その分静かな生活がおくれる。俺たちはとりあえず、ラクダか馬車を借りるため、店を探す事にした。


「ラクダは銀貨二枚、馬車は銀貨五枚だ。どうするね?」


頭にターバンを巻いた髭面の店主が意味も無くやかましい声をあげる。それにしても銅貨じゃ借りれないのかぁ。結構高いんだな。ニーナがいてくれれば値段交渉してくれたかもしれないが、俺たちの中に商売交渉に長けてるやつは残念ながらいない。リッチマンが少しだけなら、かろうじて出来るくらいだろうか。


「どうする?ラクダの方が安いけど、砂漠の昼夜の温度差は激しいよ。女性陣もいるし、高つくけど、馬車の方がいいんじゃないかな?」


リッチマンが提案する。ここからノルヴェ村まで、慣れた業者でも二日くらいはかかるらしい。素人の俺たちなら、その倍以上は見ておいた方がいいとのことだ。馬車なら夜の冷え込みもホロの中で毛布を被っていれば、ある程度はしのげるだろうし、昼の日差しも、少しは緩和される。

それにラクダなんてちゃんと乗れるかどうか分からないんだよな。もし、道中でラクダが逃げたり倒れたりしたら、それこそ一大事だ。結局俺たちは相談した結果、馬車を借りることに決めた。出費は痛いが仕方ないだろう。


「お金ならボクが払うよ。まだまだカジノで儲けた分が残ってるからね。それにボクの姉さんためにノルヴェ村に行ってくれるんだし。」


本来なら皆で割り勘にするところだが、金欠の俺たちは、情けないがライラに頼る事になった。すまんな、ライラ。いつか少しは返すからな。


「どうする?馬車を用意するのに少し時間がかかるらしいし、今日はこの村で一泊していくか?」


「そうだな。出来ればすぐに出発したいところだが、仕方ないだろう。どこか適当なところで宿を探すとするか。」


馬車の代金を前払いで払った後、俺たちは今夜の宿を探す事にした。馬車の出費が痛かったため、できれば格安の宿にしたいところだが、治安を考えて、中級くらいの値段の宿をとることに決めた。宿は一階が宿屋の受付兼居酒屋になっており、俺たちはとりあえず荷物を二階に置いた後、一階のロビーに集合した。


メニューを見るとなんかヘビの丸焼きとかゲテモノっぽいものも書いてあった。そんなの食いたくないので、無難に白身魚のフライやサラダなんかを注文する。カルロスとリッチマンはランダ村の地酒を注文した。一見ウォッカの用だが塩分が効いているらしい。アルコール度数も相当きついっぽいが、カルロスとリッチマンは構わず飲み続ける。


途中でカルロスとリッチマンの飲みっぷりを見てた、周りの客の中に飲み比べ勝負を挑んできたやつがいたが、あっけなく潰れた。まぁカルロスやリッチマンに飲みの勝負を挑む方が間違ってるよな。


しかもラッキーなことに、ここの飲食代をかけてくれたおかげで、俺たちの食費が浮いた。いやぁ馬車借りたせいで金欠気味になってた俺たちに取っては、助かるよ。しかしカルロスもリッチマンも海賊船での宴のときも相当飲んだはずなんだが、あいつらの胃袋ってどうなってんだろう?


まぁ何にせよ、明日から砂漠旅行だ。今日はゆっくり休んでおいた方がいいだろう。起きるのが遅かったためすぐには眠れなかったが、俺はその日は早めに部屋に戻り、軽くストレッチして休む事にした。

ライラの姉さん、もう少しだけ待っててくれ。必ず助けに行くからな。それまで無事でいてくれよ。それにしてもノルヴェ村ってどんなとこなんだろう・・

考え事をしているうちに、やっと眠気がやってきてくれた。宿のベッドは固かったが、船で寝るときに比べれば、揺れがないので寝やすい。俺はいつの間にか眠りについていた。

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