↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
気まぐれ異世界遊戯  作者: yoshi
第五章 極悪貴族と姉妹の幸せ
PR
57/82

海賊船にご招待?


「それで結局、あの海賊達、結局どうしますか?」


俺はライアンさんに相談してみた。リッチマンの話によるとマゼランの海賊船は普段は国旗が飾ってあり、外見からは普通の船と区別がつかない。それにも関わらず、双眼鏡で見張っていた船員は、その国旗を見て、即座にマゼランの海賊船であると判断した。つまり、元からあの船がマゼランの海賊船だって知っていたということになる。何故知っていたのか?それは、見張りの船員が内通者であるからに他ならない。


「確実にノルヴェ村に向かう事を優先するなら、この船に乗っている富裕層の方々には悪いが、ここは素通りさせてもらうのもありかもしれないね。他のトラブルに気を取られて、俺たち自身の目的を見失うような事があれば元も子もないからね。但し、リッチマンさんの話から、船員の少なくとも一人が内通者である以上、我々が無関心になったからといって、必ずしも見逃してくれるとは限らないかもしれない。いくら義を重んじる海賊達とは言え、海賊は海賊。そして私達は少なくとも目撃者だ。彼らに取って我々が邪魔者である事には変わりないだろう。」


・・なんて面倒くさい。このまま俺たちが黙っていても、必ずしも見逃してくれるとは限らないということか。しかし、どうしてこうトラブルが続くかなぁ。電車に乗れば爆弾テロ騒ぎ、気球に乗れば台風みたいな風が突然吹き出し、空中に放り出される。んで、船に乗れば海賊かぁ。なんか呪いでもかけられてるんじゃないか?


「下手に関わって、リアたちを危険にさらすくらいなら、おとなしくしてようかとも思ったんですが、向こうが見逃してくれない可能性があるってことですね。やっぱり迎撃に協力した方がいいのかなぁ。」


「俺はどっちでもいいぜ。ライラはともかく、リアはそれなりには強いはずだろ。どっちに転んでも襲われるかもしれねぇってんなら、相手してやってもいいんじゃねぇのか?」


カルロスは迎撃する方を選んでもいいみたいだ。さて、どうしたもんかな?リッチマンの意見も聞いてみるか。


「なぁリッチマンはどう思う?海賊達ほうっておくべきか。それとも迎撃するべきか。」


「そうだな。向こうが見逃してくれるっていうなら、このまま黙認もありかとは思うけど、既に内通者の船員もいることだし、富裕層から金品を略奪して、すぐに引き下がってくれるとは限らない。とりあえずリアとライラには姿隠しをかけておいて、俺たちは様子をみようか。正直言って、海賊が普通の強さなら、俺とカルロスだけでも迎撃できると思うしね。」


そっか、こっちには喧嘩慣れしているカルロスと全属性魔法の使えるリッチマンがいるんだもんな。ライアンさんも昔は名の知れた冒険者だったらしいし。このなかで一番弱いのは俺だろうが、俺も気体になるなんて芸当が出来る。自分のみを守るだけなら、それほど難しくはないだろう。


「じゃあそうしようか。でも姿隠しってさ、相手がある程度以上の実力を持っているか、タイタンみたいなやつだったら、効かないんじゃなかったっけ?」


「まぁね。でもそんな実力者が向こうにいるとも思えないけどな。心配ならリアとライラには姿隠しかけたうえで、さらに隠れてもらえばいいさ。とりあえず準備だけはしておこう。」


リッチマンがリアとライラに姿隠しをかける。一応念のために、彼女達には部屋に閉じこもってもらい、俺とカルロス、リッチマン、ライアンさんでそれとなく船員さん達や他の乗客の様子を伺う事にした。


しかし、船員さん達は本当に落ち着いたものだ。慌てだそうとする乗客をなだめ、いざというときの避難方法や救命ボートの在処など、必要事項を最小限の指示でテキパキと伝えていく。普通、海賊からの襲撃となれば、もっと取り乱すものと思っていたが、慌てたのは海賊がマゼラン一行だったと知ったときだけで、それもすぐに冷静さを取り戻したようだ。逆に今一番慌てているのは、おそらく十中八九、内通者であると思われる見張り兵ぐらいのものだろう。


問題なのは海賊の要求通り、金品を差し出すかどうかだが、乗客の身の安全を第一に考え、金品を差し出す事に決定したようだ。但し、持ち金全部というわけではない。ある程度のまとまった金額を差し出す事で、事を穏便に済ませようというのだろう。


海賊船が俺たちの乗ってる船のすぐ横に位置づけられる。海賊側の交渉人と金品を受け取る係の者がこちらの船に乗り込んできた。どうやら交渉人は女性のようだ。女海賊ってやつか。まぁどうでもいい。こちらの船員さんが要求通りに金品を差し出す。金品の数が少ないと怒りだすかとも思ったが、海賊は思いの外、あっさりと引き上げて行こうとした。


万事解決と思ったそのとき、またしてもトラブルが起こった。海賊側の交渉人役だと思われる女性が、自分の左胸を押さえて、その場にしゃがみこんだのである。連れの金品を受け取る係の男が、舌打ちし、女海賊に手を貸す。しかし、女海賊は手をあげることも、立ち上がる事さえできないようだ。顔色も悪いし、汗も相当かいている。もしかして、何かの持病があるのだろうか?


「おい、誰でもいい。お前らの中に、医者か薬剤師、もしくは回復魔法が使えるやつはいねぇか?」


男の方の海賊が怒鳴り声をあげる。船員さん達もこのような事態までは想定してなかったようで、治療のできそうな人がいないか声をかけている。だが、返事は芳しくなく、船の中に救急箱くらいはあるようだが、せいぜいが、包帯や腹痛薬くらいだそうだ。


どうする?リッチマンかライアンさんなら回復魔法が使えると思うが、助けに行くべきだろうか?女海賊は見ている間にもどんどん顔色が悪くなっていってるようだ。見かねたライアンさんが飛び出した。


「大丈夫ですか?今、月属性ですが回復魔法をかけましょう。少し力を抜いて頂けますか?」


ライアンさんが何やら唱えると、女海賊の体が黄土色の光に包まれる。包み込んでいた光が、一つ一つの泡となり拡散して行くと、おもむろに女海賊が立ち上がった。


「すごいじゃないか、あんた。どうやら命拾いしたようだ。あんたはあたいの命の恩人さね。あたいはちいっとばかし、心臓を患っていてね。だがもう大丈夫だ。礼を言うよ。どうだ、あたいの船に来るかい?」


えっ?海賊船にご招待ですか?それは謹んで遠慮させて頂き・・


「分かりました。それではお邪魔しましょう。」


ちょっと、ライアンさん!?あんた、なんば言っとるのかね?なんで海賊船なんか行くのさ?しかし、ライアンさんは、さらにとんでもないことを言い出した。


「連れもいるのですが、ご一緒させてもらって宜しいでしょうか?」


待て待て待て。連れって誰だよ?エア友達ってわけじゃないよな?俺は海賊船なんてごめんだぞ。平和主義者なんだ、俺は!ローリスクローリターン、君子危うきに近寄らず。これが俺の座右の銘だ。カルロスもリッチマンも事の成り行きに戸惑っているようだ。いや、それが普通の反応だろう。誰が好き好んで海賊船に乗るんだよ?


「それじゃ皆さん。一緒に行きましょうか?」


ライアンさんは真っすぐに俺たちの方を見据えてきた。ダメだ・・他人の振りが出来ない。っていうか、俺たちが行ったら、リアたちはどうするんだ?さすがにリアとライラまで連れて行く事はないよな?だが、ライアンさんは俺の想像の遥か斜め上を行っていた。


「実は彼らの他に女性も二人いるんですよ。今連れてきますからね。」


・・あんた、もしかして海賊の手先何じゃないだろうな?何故、リアたちのことをばらす?俺は口をパクパクさせて、ライアンさんを見続けていると、ライアンさんが俺の耳元で囁いた。


「安心してください。これも作戦のうちですよ。」


何の作戦だよ?俺たちが海賊船に乗り込むことにどんなメリットがあるっていうんだ?しかし、もう遅い。俺たちはリアやライラまで含めて、全員揃って海賊船にご招待されることになった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ガハハハハハ、おまえが娘を救ってくれた恩人か?俺はマゼラン3世。ここの船の船長をやっておる。ん?なかなかいい男じゃないか。どうだ、ディアナ。お前の好みじゃないのか?」


うわ・・さっきの女海賊って船長の娘だったんだ。見てるといかつい男達が俺たちを囲んでいる。幸い殺気とかはなく、なかなかに友好的に迎えてくれてるんだけど、はっきり言って暑苦しいよ、あんたら。強面で筋肉質のやつらに囲まれてるって、あんまりいい気持ちはしないよな。しかし、そんなことはとても口には出せんが。


「初めまして、マゼラン3世殿。私はライアン。今は気球の添乗員をやっております。こう見えても昔は少しは名の知れた冒険者でしてな。今は縁あって、この者達とともに行動しております。」


マゼラン3世さんはあごについた、それはご立派なお髭をしきりにさすりながら、ライアンの名を呟く。なんどか呟きを繰り返した後、マゼラン3世の目がかっと見開かれる。


「ライアンって、あの狂犬ライアンか?こりゃすげぇ。とんでもないやつが、娘の恩人になったものだ。とすると、見たところ学生風の連れのやつらも只者じゃねぇな。なにせあの英雄オーディーンとタメはれる狂犬ライアン様の連れなんだからよ。」


なにっ?ライアンさん、そんな凄腕の冒険者だったのか?ちょっと名の知れたなんてレベルじゃないだろ、それは!?オーディーンと言えば数々の逸話を残し、勇者魔王戦争のときも立役者だった人物だ。今は色々あって、カルロスの師匠でもあり、俺たちミス研メンバーともつながりがある人物なんだが。


「ふふっ、懐かしいですねぇ、そんな呼び名もありましたっけ。でも昔の事ですよ。今はこのとおり年も取ってるし、若い頃のように体は動きませんて。」


オーディーンは年でも十分に体動いてるけどな。まぁ年っていっても、せいぜいが40代前半ってところだろう。しかし、今回海賊以上にライアンさんに驚かされてばっかりだな。つい数分前までもしかしたら、海賊と戦う事になるかも、なんて思ってたのが、まさかこんな展開になるとは・・


「なぁ、そういわずに一度手合わせ願えねぇか?なぁに、あんたは娘の恩人だ。致命傷になるような傷は与えねぇ。だがよ、一戦を退いたとは言え、あの狂犬ライアンとあっちゃあ、このまま会話だけで終わらせるってのはあまりにも、もったいねぇからよ。」


マゼラン3世はライアンさんに壁にかけられている武器から好きなものを選ぶように言った。しかし、ライアンさんはそれを拒む。そうだよな。海賊と喧嘩したって別にいいことないしな。


「私はこのままで結構ですよ。さぁ、どこからでもかかってきてください。」


・・もう、だめだ。この人には俺の常識なんて何一つ通用しないんだ。そういえばライアンさんは素手の戦いを得意としてるんだっけ?でもだからといって、なんでわざわざ海賊の船長と喧嘩しなきゃならないんだよ?おうおう、マゼラン3世のあの嬉しそうな表情。

ありゃ、今は死語になっているバトルジャンキーってやつだな。ライアンさんも同じくいい表情してるし。きっと、この人たちにとっては、喧嘩って言うのは、サラリーマンの名刺交換みたいなものなんだろう。

ライアンさんはもっと温厚な人かと思ってたが、羊の皮かぶってただけみたいだな。いや、そんなこともないか。温厚なライアンさんも、今のライアンさんも同じライアンさんなんだ。

皆の見守る中、ライアンさんとマゼラン3世のバトルが始まった。


キュイーン、ヒィーン、キーン・・


凄いな・・人って速さを極めると、こんな音がするんだ。空気との摩擦熱で、周囲の熱があがるような、とんでもない速さだ。マゼラン3世は変わった形の刀をもっている。刃が前方に向かって反り返っている刀だ。湾曲刀・・カットラスってやつだろうか。マゼラン3世もそりゃすごい勢いと速さで動いていて、目で追っかけるのがやっとなんだけど、ライアンさんの方は、もう見えない。残像すら見えない。肉眼で捉えられない動きなんて初めてだ。

マゼラン3世のカットラスが縦横無尽に辺りを斬りつける。おいおい、致命傷になるような傷は与えないんじゃなかったのかよ?だが、ライアンさんの方は、どうやらさらに速度をあげているようだ。カルロスやリッチマンでさえ、目で追いかけるのがせいぜいらしい。俺の目じゃ、何か透明なものが行ったり来たりしてるぐらいの認識しか持てない。


「次の一撃で決まる・・」


カルロスがつぶやいた。と思ったら、ライアンさんの蹴りがマゼラン3世の頭を吹っ飛ばしていた。勝負あったようだ。海賊の親分をやられて、他の海賊は大丈夫かと心配になったが、どうやら、他の海賊達も何が起こったのか把握出来ていないらしい。だが次の瞬間、あたりから割れんばかりの拍手が巻き起こる。


「すげぇ、すげぇよ、こんな戦い始めてみた。」


「俺もだ。目の前で見てて何が起こったのか全然分からねぇなんて、とんでもねぇぜ。」


どうやら、二人の戦いについていけなかったのは俺だけじゃなかったらしい。ライアンさんが倒れたマゼラン3世に腕を差し出す。マゼラン3世がその手をしっかり握って立ち上がる。互いに抱き合い、健闘を称え合っていた。俺も皆につられて、いつのまにか二人に拍手をおくっていた。相手が海賊であるとか、関係無しに、目の前で信じられないような凄い戦いを見せてくれた二人に、感激していたのだろう。


マゼラン3世とライアンさんは、しばらくの間ずっと、皆の声援に手を振って笑っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。