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気まぐれ異世界遊戯  作者: yoshi
第五章 極悪貴族と姉妹の幸せ
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ドワーフ小屋でお茶を一杯

「さてと、ライラの村を助けると決めたはいいが、まずはこの森を抜け出さなきゃな。そもそもまだ俺たちがどこにいるかも分かってないんだし。」


「そうよね。この遭難状況をどうにかしなきゃね。」


俺たちは辺りを見回す。しかし、森の中の景色って全部同じに見える。もっとアウトドアに慣れてるような人なら、枝のはりかただとか、土の具合、動物の足跡なんかから、ある程度どちらに向かえばいいか推測できるのかもしれないが、俺たちには無理だ。冒険者の経験を持っているライアンさんもそれは同じらしく、結局、引き続き今まで通りの進行方向をひたすら進んでいく。

ん?しばらくすると遠くから何か甲高い木琴楽器のような音がした。気のせいだろうか?


・・カン、カカン、カン・・・・


いや、確かに聞こえる。俺は皆にもこの音が聞こえるかどうか確かめてみた。


「確かに聞こえるわ。何の音かしら?」


「ボクも聞こえるよ。」


どうやら幻聴などではないらしい。もしかして、近くに誰か人がいるのだろうか?思い切って、大声をあげて助けを呼んでみるか?だが、逆にモンスターや、人は人でも野盗の類いや人さらいなどなら、リアたちを危険にさらすことになる。俺たちは結局慎重に音のする方に近づいてみる事にした。


「ライアンさん、月属性の魔法で明かりを少しだけ照らすなんてことできますか?」


俺はライアンに尋ねてみる。月属性の魔法については実は俺もよく知らないのだが、明かりと回復の魔法があることだけは、前にリッチマンに聞いた事があった。もちろん他にもあるのだろうが、残念ながらそこまで詳しくはない。


「ええ、ありますよ。しかし、下手に明かりをつけた場合、我々の位置も相手から見える事になります。この音が野盗などの敵によるものだったとしたら、かえって危険でしょう。」


確かにその通りだな。しかし、こう暗いと1m先も碌に見えやしない。何かいい方法は無い者だろうか?


「カシワ、もしかして暗いの苦手?だったら私に摑まるといいよ。私、一応サキュバスだからね。このくらいの暗さなら全然見えるんだ。」


あ、そっか。普段あんまり意識してないけど、リアだったら、確かに暗くても平気なんだよな。


「じゃあ、リア、悪いけど先導頼んでもいいかな?もし何か危なそうなモンスターや、人や物を見かけたらすぐに教えてくれる?」


「任せて。えへへ。いつも皆に守られてばっかりだから、なんか役に立てるのって嬉しい。」


「リアはいつでも役に立ってるよ。リアが側にいてくれるだけで俺は幸せだし。」


「カシワ・・・」


俺とリアが話し合ってると、ライラが横槍を入れてきた。


「ん、んん・・オホン、ちょっとボクたち一応遭難してるってこと覚えてる?そういうのは安全が確保されてから、二人のときにやってよね。ライアンさんもあきれてるじゃない。」


「えっ?あ、すみません、ライアンさん。先を急ぎましょう。」


「いえいえ、私の事なら気になさらず。いやぁ、お若いっていいですねぇ。なんか和みますよ。」


「もう、ライアンさん。うざいならうざいって、はっきり言ってやった方がいいですよ。」


ちょっと待て、ライラ。一応俺たちはお前の姉貴を助けてやろうとしてんだぞ。その言い方はちょっと酷くないかね?


「ふふ。ライラさんにもいつか素敵な人が出来れば分かりますよ。さ、カシワさんの言う通り急ぎましょう。ここがどこなのかは分かりませんが、ライラさんのいたノルヴェ村はおそらく相当遠いのでしょうからね。」


俺たちはとりあえず木琴楽器のような音のする方へと向かった。だんだん音が大きくなってるので、近づいてるのは間違いないと思うんだけど、俺には全然何も見えない。っていうか、そもそも周囲がほとんど見えない。日本だったら、よっぽどの田舎とかじゃない限り、夜でも明かりが消える事はないし、月明かりだけでもなんとかなるんだが、ここだと自分の手足すら視界に入らないみたいだ。


「リア、何か見えるか?けっこう音の近くまで来てるとは思うんだけど。」


「んとね、ああっ分かった。あれ、ドワーフの人だ。鍛冶職人さんだよ。この音、釜とかで何かの武器作ってる音じゃないかな。うん。多分間違いないと思う。」


「ああ、そうだったのか?じゃあ、このカンカンいう音はきっと鎚で剣をたたいてるとか、そういうかんじなのかな。」


「多分そうだと思う。どうする?行ってみる?」


「そうだな、行ってみようか。近くにある村や街の情報なんかも聞けるかもしれないし?ライアンさんもそれでいいですか?」


「ええ、行ってみましょう。ドワーフなら我々に襲いかかってくるようなことはないでしょうから。ある意味、人を見つけるよりも安全かもしれませんね。ただドワーフの方は職人気質の方が多いと聞きますので、あまり機嫌を損ねないようにしなくては。」


「ボクなら、そういうの大丈夫だよ。」


・・ライラよ。このメンバーの中で間違いなく、お前が一番性格的に危ないと思うぞ。


「じゃあ、ライラにはしばらく黙ってもらうとして、冒険者生活で場慣れしているライアンさんの方から話しかけてもらってもいいですか?」


「ええ、構いませんよ。了解しました。」


「ちょっと、カシワ、何でボクが黙らなきゃいけないのさ?」


「気にするな。別に悪気があっての事じゃない。皆の性格を考慮した上で、最善の措置を取ろうとしているだけだ。」


「悪気しかないじゃないか。まったくボクのこと見くびり過ぎだよ。こう見えても、村を出てからというもの、トラブルなんかほとんど起こした事無いんだ。飛空挺のカジノで一回、降りるときに一回、王都フランの列車乗り場で一回、ショッピングで二回しか揉め事なんて経験してないぞ。」


「・・十分すぎだろ。おまえ、俺たちと一緒の飛空挺で王都フランにたどり着いたはずだよな?それから気球にのるまで、そんなに時間もかかってないはずだろ。どうやったら、そんなにトラブルになるんだよ。想像より多くトラブル起こしてるなんて思わなかったよ。」


俺が告げると、ライラはますます不平を募らせたようで、俺の脇をくすぐってきた。何する?だいたい、なんでこの暗闇の中で俺の位置が見えるんだよ。やめろって。俺も仕返しにライラの脇をくすぐる。


「キャー、皆さん、ここに変態がいますよー。リアさん、大丈夫ですか、こんなのと付き合って。」


「おいおい、声がでけぇよ。ドワーフさんの機嫌損ねるぞ。少しは女らしくなったと思ったら、お前やっぱり男だろ?」


「なんだと、このっ、こうしてやる。」


「わっバカ、やめろ。お前の方が変態じゃないか。」


俺とライラがじゃれあってると、ドアがいきなり開く音がした。


「なんじゃ、騒々しい!!誰かおるのか?」


わっ!?すごいでかい声。あんたが一番騒々しいよ。でもお仕事の邪魔しちゃったんなら悪い事したな。


「あっすみません。私はカシワと申します。お騒がせして申し訳ありませんでした。それでつかぬことを伺いたいのですが、実は道に迷っておりまして、ここがどこなのかを教えて頂きたいのです。」


ライアンさんから話しかけてもらう予定だったが、成り行きで俺が話しかける事になってしまった。まぁ仕方ない。騒いで迷惑かけちゃったのは俺なんだから。


「遭難じゃと?お前さんたち、一体どこから来た?」


俺はドワーフのおっさんに気球から落ちた事、土のボールで転がった事などを含め、事情を簡潔に説明した。ただし、俺が無属性魔法で気体になれることなどは、説明が面倒なので、省略しておいた。


「ほぉ、この森の中を歩いてきたのか。サイクロプスやヒグマには出会わんかったようだな。運のいいやつらだ。いや、気球から落ちたのなら、幸運ではないか。まぁいい。とりあえず、中に入りなさい。道中寒かっただろう。今、玄米茶いれてやるから待っておれ。」


おお、玄米茶なんてこの世界にあったのか。なかなか渋いじゃないか。それにドワーフのおっさんも悪い人じゃなさそうだし、とりあえずは一安心ってとこだな。ここら辺くまも出るとはなぁ。それになんかおとろしげなモンスターもいるみたいだし、情報収集したら、早いとこ近くの村か街に行きたいもんだ。


「あったまる〜 エルフの村で飲んだお茶も美味しかったけど、ここの玄米茶もほっとするよね、カシワ。」


「ああ、そうだな、リア。まさかこの世界に玄米茶があるとは思ってなかったから嬉しいよ。気持ちが落ち着く感じだ。」


ライラとライアンさんも一息ついて落ち着いたようだ。思い返してみれば、気球から落ちて、ここまで来る間、鹿肉は食べたけど、水分はとってなかったんだよな。ここでも普段の生活の有り難さが身にしみるよ。


「それで、今いる場所なんじゃがな。ブロージュの森と呼ばれるところじゃ。王都フランから、距離的にはそんなに離れてはおらんがの、徒歩で行くのはちと難しいじゃろて。」


「もし出来れば住所とかって分かります?」


「住所じゃと?そんなもの聞いてどうするつもりじゃ?郵便でも送ってもらうつもりなのか?」


「いえ、住所さえわかれば、念話で皆に連絡とって、迎えの馬車とかをよこしてもらう事も出来るんですよ。」


「念話じゃと?」


「あ、いや、新手の魔法ですよ。新手の通信手段って言い換えればいいかな。遠くにいる人たちどおしで会話が出来るんです。」


俺はキューちゃんのこととか、いちいち説明するのが面倒くさかったので、そういうことにしておいた。ライラやライアンさんには、もう既に話してあるが、出会うひと皆に一から説明する必要も無いだろう。


「ほう、儂の知らぬ間に便利な世の中になったもんじゃな。」


「いえ、まだそんなに広まってないんです。一応特許とかもあるんで、あまり言いふらさないでくださると助かります。」


念話のことが多くの人々に伝わったら、悪用する人とか現れそうだしな。ドワーフのおっさんは信用出来ると思うが、噂ってのはどこでどう広まるかわからない。だから、キューちゃんのことも、絶対の隠し事ってわけじゃないけど、特に必要ない限り、自分からは話さないようにしている。これはミス研メンバー全員同じ事だ。


「構わんよ。どうせ儂には最新技術など理解できんしな。だが残念ながら住所というものは分からんな。近くに港町がある。そこまでの行き方なら教える事は出来るが、それでもいいかな?」


「助かります。十分ですよ。有り難うございます。」


俺たちはドワーフのおっさんに港町までの行き方と簡単な地図を書いてもらった。ここから歩いて約半日程度でいけるそうだ。意外と近いんだな。助かった。俺たちはドワーフのおっさんに礼を言って、早速港町に向かおうとしたのだが、ドワーフのおっさんはそれを制した。


「まぁそう慌てるな。さっきも少し言ったかと思うが、この辺りにはサイクロプスやヒグマがでる。お前さん達見たところ武器など何ももっておらぬようじゃが、最低限の剣くらいは持っておいた方がよいじゃろう。これも何かの縁じゃ。試作品でよければ、この剣と弓をやろう。遠慮せんと持って行くがいい。」


「何から何までありがとうございます。有り難く頂戴いたします。そうだ、よければお名前を教えて頂けますか?お礼に港町まで行ったら、おじさんの武器を武器屋や冒険者ギルドなどで宣伝しますので。」


「ほう意外に義理堅いやつじゃな。別に礼などは構わんのにな。儂はアクス。斧と一緒の名前じゃ。覚えやすかろう?」


「アクスさんですか、確かに覚えやすいですね。それじゃ色々とありがとうございました。あっ食器類は洗っときますので、台所かしていただけますか?」


俺たちは玄米茶の入っていたティーカップを洗い、アクスさんの小屋を後にした。リアが弓なら少し使えるみたいなので、弓はリアに預ける。剣はライアンさんに預けようと思ったのだが、ライアンさんはどうやら素手で闘うのを得意とするタイプらしい。

剣はかえって邪魔になるというので、結局俺が持つ事にした。正直、俺はあんまり剣は得意じゃないんだが、まぁ仕方ない。せっかくのアクスさんの好意だしな。

とりあえず、厄介なモンスターなど遭遇しなければ、それが一番いい。俺たちは少し急いでアクスさんに教えてもらった港町に向かう事にした。

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